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オープンデータを活用して高校生が本格的なアプリを制作

ビジネス現場で活きるIT演習を行なう島田商業高校情報ビジネス科

2019年04月23日 11時00分更新

文● 重森大 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

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筆者イチオシのチーム「ゆめかさご」を勝手に紹介!

 アプリ制作、プレゼンテーションは9つのチームで行われた。それぞれのチームが日本各地の地域課題に注目し、アプリで解決する方法を考案、それらを取り込んだアプリを制作していた。その中で筆者がもっとも惹きつけられたのは、チーム「ゆめかさご」が作成した深海魚を紹介する「Sea Fish Picture」というアプリだった。

チーム名の「ゆめかさご」は実在する深海魚から

 筆者は不勉強にして知らなかったが、駿河湾は深海魚が多く水揚げされる数少ない漁場なのだそうだ。チーム名になっているゆめかさごも、沼津市の戸田港(へだこう)で水揚げされる深海魚の一種。こうした深海魚たちが、沼津の食にも独特の彩りを添えているとのこと。グルメは観光資源のひとつでもあり、この特徴を活かしたいとチームゆめかさごの2人は考えた。

 しかし深海魚をどのようにアピールするのか。そのヒントを探るために彼女たちは沼津の観光に関するデータを検証した。沼津を訪れる人の多くは近接地域に住んでおり、そのリピート率は80%を超える。年齢層は10代、20代の若年層が多くを占めていた。つまり、近距離に住んでいる若年層がメインターゲットであるとわかる。しかし一方で、県内からの観光客は約35%に留まっていることもわかった。PRはターゲットを絞った方が効率がいい。しかも、県内にはまだ沼津に来てもらえるポテンシャルがある。これらの検証を踏まえて、未来の観光客予備軍である県内の子どもたちへとターゲットを絞り込んでいった。

観光客の傾向のほか、小学生にスマートフォンが広まっていることにも注目

 これは全チームに共通して言えることだが、エビデンスを探し、課題の傾向を検証し、それに基づいてターゲットや解決策の仮説を構築している。もちろん、飽くまで高校生のレベルではあるが、エビデンスを重視する姿勢や理由付けのある仮説構築の力は、ビジネスの現場においても課題解決力を支えてくれるはずだ。

 さて、筆者がチームゆめかさごを推したいのは、ここから先だ。ゆめかさごが作ったのは、戸田港で水揚げされる深海魚の図鑑アプリ。イラストとともに魚の紹介が掲載されているだけではなく、それらを料理として提供している沼津市内の飲食店を検索できるのだ。「沼津にうまい魚を食いに行こうぜ」って話は聞いたことがあるが、「沼津に深海魚を食いに行こうぜ」って話は聞いたことがない。そして、言われたらきっと興味を惹かれてしまう。実際、次に静岡県に行くときには沼津に寄れないかと考えている。

深海魚を食べることができるお店とその位置情報を閲覧できる

 深海魚について知ってもらうために図鑑というアプローチは一見安易に思えるが、近年ニッチな図鑑にはヒットが多い。深海魚だけに絞り込んだ図鑑というのも、ハマる子どもにはハマるに違いない。筆者宅には男子がふたりいるが、彼らが小学生の自分にこんなアプリに出会ったら面白がっただろうと思う。しかも、そのアプリを見ながら親に言うのだ。

 「このさかなの顔、おもしろーい! 食べられるんだって。食べてみたいね!」

 子どもにこんなこと言われたら、パパはがんばって沼津までクルマを走らせちゃう。

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