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著者に聞く・レンタルなんもしない人:

話題の「レンタルなんもしない人」が生まれた理由

2019年04月19日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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レンタルなんもしない人のなんもしなかった話
レンタルなんもしない人(著)
晶文社

 レンタルなんもしない人さんの活動が「レンタルなんもしない人のなんもしなかった話」(4月17日発売)として書籍化されました。

 呼べば来てくれるものの、とくに何をしてくれるわけでもないのがレンタルなんもしない人。しかし依頼は殺到し、今では毎日のように2~4件の依頼をこなしています。内容は「引っ越しの見送りをしてほしい」「推しのDVDを見てほしい」など様々。ツイッターでの依頼レポートは他人の人生を垣間見ているような面白さがあり、11万人のフォロワーを抱える人気アカウントになっています。

 レンタル料金は無料。経費などは依頼者負担ですが、基本的に収入はゼロ。本業もありません。本人は結婚していて2歳になる男の子もいますが、家計に対してはまさに「なんもしていない」状況です。どうしてなんもしない人になったのか、一年近く「なんもしない人」を続けて何が見えたのか。本人に聞きました。

レンタルなんもしない人さん

●何をしても長続きしなかった

──経歴から伺います。理系の大学院に進んでいますね。

 中学校のとき塾の先生がアインシュタインの相対性理論について説明してくれて、めちゃくちゃおもしろいなと思って物理の道に進みました。ですが、学部のときに理論物理の世界には自分よりはるかに賢い人がいると挫折して。それならと、地震の予知に関わるシミュレーションの分野をやろうと思いました。予知できないものが予知できるかもしれないということに興味があって。

──地震の予知はできましたか。

 修士2年まで行って「何も予知なんてできない」と思いました。なのでそこから「いつ死んでもいいように生きていこう」と思うようになりましたね。

──大学院を出てからはどんな仕事に就きましたか。

 編集者として通信教育用の理系向け教材を作っていました。

──なぜ編集者の仕事はやめてしまったんですか。

 要因が多すぎて単純に「居心地の悪さ」と説明しているんですが、普通に仕事が面白くなかったというのが1つありました。毎年同じサイクルで同じような仕事をして、問題もありものの流用。「いろんな面白い問題を作りたい」という気持ちでしたが、それをやっていたら仕事が回らないとわかってきて。

──毎回同じことをするのがいやだったんですか。

 でも仕事をしていると「流用でうまくいけばそれに越したことはない」という気持ちになってくるんですよね。創造的なことをしたいと思っていたのに「新作なんて作らないといけないの?」という気持ちになることへの嫌悪感もありました。あとは、固定的な人間関係の中でうまく立ち回ることに向いていなくて。

──毎日同じ人に会うのがいやだったんですか。

 毎日同じように顔を合わせてあいさつするじゃないですか。あれがわからなくて。なんで「お疲れさまです」って言うのかなって。社内での話題が内向きになって「誰がどこに異動した」みたいな話ばかりになるのもつまらなかったし。自分も他人からみればつまらないやつだと思われていたと思います。

──会社をやめて何をしましたか。

 お笑いに興味があったのでNSC(吉本総合芸能学院)に行こうかと思っていたんですが、コピーライターにも興味があって。どっちにしようかなと思った結果、堅いほうでコピーライター養成講座に行くことにしました。

──なぜその2つだったんですか。

 学生のときネット大喜利をやっていて、かなりの地位を占めていて、それが成功体験になっていたんですよね。お笑いは大喜利に近いし、短い言葉でうまいことを言うという意味では、コピーライターにも近いものがあるのかなと。

──コピーライターの仕事はどうでしたか。

 講座では優秀な成績をおさめたんですが、仕事になったらうまくいかなかった。いいコピーを作ることとは別の能力が必要だったんです。クライアントのウケを考えて、100点ではなく60点のほうを通すという考えがどうしても合わなくて。

──やっぱり仕事がいやだったんですか。

 広告業界に求められる人材ではなかったんです。能力を伸ばそうというモチベーションはあったんですが、伸ばしても認められないかもしれないという残念な気持ちがわいてきて。そのあと、編集プロダクションに行ってみたりもしました。そこなら黙々と作業に専念できるかなと思ったんですが、そこもやっぱり会社であることに変わりはなかった。そこで会社勤めはあきらめた。そのあとブログを始めたりもしましたが、長続きはしませんでした。

──そして「レンタルなんもない人」を始めたわけですね。

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