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『ブラック・クランズマン』まずは素直に「面白かった!」と言いたくなる

2019年03月22日 16時00分更新

文● 上代瑠偉

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「映画界の巨匠が再び声をあげた!」と大絶賛

 この作品は「ブラック・ムービー」の代表格と言うべきスパイク・リーが監督と脚本を務めている。彼は『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『マルコムX』などでアフリカ系本来の姿を描き、映画界の第一線に躍り出た人物だ。

 実際のアメリカ社会がそうであるように、映画のなかでも人種的マイノリティーは歴史的・社会的にさまざまな課題がある。リー監督が2016年の第88回アカデミー賞の俳優部門候補者が2年連続で20人全員白人だと批判し、辞退したことは記憶に新しい(注1)。

(※1)当時スパイク・リー監督以外にも、ウィル・スミスの妻である俳優ジェイダ・ピンケット=スミスや、司会を務めたコメディアンで俳優のクリス・ロックも否定的なスタンスをとっていた。

 本作が脚色賞を受賞した第91回アカデミー賞でも、アメリカ国内では作品賞に輝いた『グリーンブック』が白人が有色人種に偉そうに説教する「ホワイトプレイニング」ではないかと非難された。アメリカの『ハリウッド・リポーター』によると、リー監督は作品賞の結果を知り、怒りのあまり席を立ったという。このような一貫した姿勢は彼らしいと言えるだろう。

 しかし、近年ではこのような言動は話題になるものの、肝心の彼自身の活動はイマイチ注目されていなかったと言わざるを得ない。Wikipediaで調べても、2010年代の彼の監督作は「日本未公開」という表記ばかりである。

 その点、アカデミー賞の脚色賞だけではなく、カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリにも選出された本作を彼の完全復活だと讃える声も多い。アメリカ国内では『ローリング・ストーン』は「本年度最高傑作。映画界の巨匠が再び声をあげた!」、『シカゴ・サンタイムズ』は「スパイク・リー監督史上、最高傑作!」とそれぞれこの作品を絶賛している。

(次ページでは「主役はデンゼル・ワシントンの実の息子?」)

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