3月22日にTOHOシネマズ シャンテほかで全国公開された『ブラック・クランズマン』は豆知識や裏話を語るよりも、まずは素直に「面白かった!」と言いたくなる映画だ。
アフリカ系のロン・ストールワース刑事が、白人至上主義の秘密組織KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入する。大雑把なストーリーだけで、観る前から面白いことはほぼ確定していた。しかし、だれもが素直に楽しめるようなエンターテインメント性は特筆されるべきだろう。
この作品の製作に関わった『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督などは、本作の監督にスパイク・リー監督を指定した。脚本家のひとりケヴィン・ウィルモット氏によると、彼からの注文は「笑える作品にしろ」だけだったという。
この型破りな物語は驚いたことに実話をもとにしている。原作は2014年に出版された『ブラック・クランズマン』。1978年にアメリカの西部にあるコロラド州のコロラドスプリングス市で、初のアフリカ系で警官になったストールワース刑事の潜入捜査をもとにしたノンフィクション小説である。日本では2019年にパルコから刊行された。
ストールワースさん本人によると、実際の捜査は新聞広告に載ったKKKの私書箱に、白人至上主義者を装ったメモを送るところから始まったという。劇中ではメモではなく電話でKKKのメンバーに取り入る設定に変えられている。とはいえ、アフリカ系である自分の本名をうっかり名乗ってしまう、という笑える場面は事実のようだ。
著者がとくに面白いと思ったのは、相棒がユダヤ系のフリップ・ジマーマン刑事という設定だった。ストールワース刑事が電話でKKKのメンバーに取り入り、ジマーマン刑事が実際に組織に潜入する。
もちろん、KKKは白人至上主義なので、ユダヤ系にも差別的だ。主人公がアフリカ系だと勘づかれたら捜査は即終了。相棒がユダヤ系だとバレたら殺されるかもしれない。このコンビには思わずハラハラさせられた。
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