ソフトウェア会社を次々と買収し
製品ポートフォリオを急速に転換
実のところ、買収はこれだけではない。Gerstner氏がCEOに就任する以前の1993年までで、IBMが買収したのは(最初のCTR形成の時を別にすると)わずか13社である。1921年から1993年まで72年間で13社だから、平均6年で1社程度である。ところが1994~1998年まででの5年間で、20社も買収している。
ほとんどがソフトウェアないしサービスを提供する会社であり、これまでIBMが提供してこれなかったものを提供できる企業ばかりだ。こうした買収により、IBMは製品ポートフォリオを急速に転換していく。
1994年には早くも黒字転換を果たしているし、そこからGerstner氏が退任する2002年まで、毎年の利益率は10%には届かないものの、7~8%を安定して確保しているあたりはさすがと言うべきであろうか。
そしてこの期間中にIBMの売上ポートフォリオも当然変化した。IBMの過去の年次報告から1993~2000年にかけての部門別売上金額と、ハードウェア部門の売上比率をまとめたのが下表である。
部門別売上金額と売上比率 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | ハードウェア | サービス | ソフトウェア | レンタル/ ファイナンス |
合計 | ハードウェア部門の比率 |
2000年 | 377億7700万ドル | 331億5200万ドル | 125億9800万ドル | 34億6500万ドル | 869億9200万ドル | 43.4% |
1999年 | 370億4100万ドル | 321億7200万ドル | 126億6200万ドル | 31億3700万ドル | 850億1200万ドル | 43.6% |
1998年 | 354億1900万ドル | 289億1600万ドル | 118億6300万ドル | 28億7700万ドル | 790億7600万ドル | 44.8% |
1997年 | 362億2900万ドル | 193億200万ドル | 128億4400万ドル | 37億3100万ドル | 721億600万ドル | 50.2% |
1996年 | 363億1600万ドル | 158億7300万ドル | 130億5200万ドル | 37億2500万ドル | 689億6600万ドル | 52.7% |
1995年 | 356億ドル | 127億1400万ドル | 126億5700万ドル | 35億6000万ドル | 645億3100万ドル | 55.2% |
1994年 | 323億4400万ドル | 97億1500万ドル | 113億4600万ドル | 34億2500万ドル | 568億3000万ドル | 56.9% |
1993年 | 305億9100万ドル | 97億1100万ドル | 109億5300万ドル | 41億6600万ドル | 554億2100万ドル | 55.2% |
1993年の時点では売上の半分以上をハードウェアそのものが占めていたのに対し、2000年にはその比率が4割程度まで落ち、ほぼサービス(1996年以降はGlobal Serviceという名称になっている)が同程度の売上を占めるまで増えてきたのがわかる。
こうした売上ポートフォリオの転換は主に買収によるもので、Gerstner氏の在任中にほぼ完了した感がある。もちろん買収が全部当たったというわけではなく、Sequentの買収みたいな失敗(なのかどうかも微妙だが、少なくとも成功とは言い難い)なケースもあるにせよ、とりあえずAkers氏の時代の行き詰まり感は無事に脱した形だ。
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