10月22日~24日に米国ラスベガスで開催されたネットアップの年次イベント「NetApp Insight 2018」。最終日の基調講演では、創業者のデイブ・ヒッツ(Dave Hitz)氏も含めたエグゼクティブが次々と登壇し、Data Fabric戦略を支える「INSPIRE」「BUILD」「MODERNIZE」の3つの柱を軸に、製品戦略や新サービスを紹介した。
全力でクラウド連携を進めてきた「INSPIRE」
クラウド、オンプレミスをシームレスに統合した「Data Fabric」戦略を実現すべく、現在ネットアップはビジネスグループをクラウドサービス、次世代データデンター、モダナイズの3つに再編しており、顧客向けのメッセージもそれぞれ「INSPIRE」「BUILD」「MODERNIZE」を前面に押し出している。24日の基調講演も、この3つのピラー(柱)を中心に据え、各部門の担当者が製品戦略や新サービスを紹介した。
「Innovation with the Cloud」を謳うINSPIREの領域について説明したのが、Cloud Data Services部門を統括するアンソニー・ライ(Anthony Lye)氏だ。
Cloud Data Servicesは、本来ユーザーがやるべきパブリッククラウド上での作業をネットアップが代替するマネージドサービス。この部門では、Data Fabricの戦略が生まれて以降、一貫してパブリッククラウドとの連携を進めており、今日ではAWS、Azure、GCPとの連携を実現している。
具体的にはクラウドネイティブのファイルストレージ「Cloud Volumes Servives」のほか、ONTAPをクラウド上で利用できる「Cloud Volume ONTAP」、クラウドとのデータ同期を行なう「Cloud Sync」、Office 365などのアプリケーションをバックアップできる「SaaS Backup」などを提供しており、すべてはポータルサイトである「Cloud Central」から利用できる。また、今回はインフラレイヤーのモニタリングサービスである「Cloud Insights」がサーバー版の「OnCommand Cloud Insight」のSaaS版として発表された。これらのサービスの一部は有償だが、基本的には各クラウドプロバイダーのマーケットプレイスから購入できるほか、ネットアップのライセンス持ち込み(BYOL)にも対応する。
オンプレより速いAzure NetApp Files、Kubenetesクラスターを作れるNKS
このうちマイクロソフトは昨年のInsightでネットアップとの提携強化を発表しており、AWSやGCPと連携するCloud VolumesのAzure版である「Azure NetApp Files」は、AzureネイティブのNFSサービスとして提供されている。NAS中心の時代から実績の高いネットアップのNFSサービスを拡張性に優れたAzure上で使うことができるのがメリットで、性能面でもSAP HANAのベンチマークで10万IOPSを実現。また、DB・ERP用のブロックストレージとして使った場合は他のサービスに比べて4倍高速だったほか、ファイルサービスも他に比べて30倍近く速くなっているという。
ユーザーとして登壇した大手ヘルスケア企業のMcKESSON ブラッド・クラーク氏も、「テストケースで使ってみたが、遅延が低く、オンプレミスより速かった。スループットも素晴らしく、しかも予測可能なので、安心してスケールアップやスケールバックが行なえる」と絶賛した。また、使い勝手の評価も高く、「久しくストレージの作成や設定を行ってなかったが、60分以内にボリュームを作成し、ホストをマウントし、スナップショットを作って、データを動かすというところまで実現できた」と語った。
また、可搬性の高いコンテナの利用を促進すべく、新たに「NetApp Kubenetes Service(NKS)」を発表。こちらはKubernetesのクラスターを構築し、パブリッククラウドに展開できるコントローラー。GUIから展開先のプロバイダーを選択し、設定を行なえば、クラスターの作成が可能になる。機会学習用にNVIDIAのGPUを搭載したノードも利用でき、パブリッククラウドだけでなく、NetApp HCIにも展開できる。