さて、すべてのハードウェアの取り付けが無事終われば、今度は管理するスマホ側のアプリのダウンロードだ。QrioはiOSとAndroidの両方がサポートされている。筆者はまず、Android版アプリ「Qrio Lock」を筆者のメインスマホである「HUAWEI P20 Pro」に導入して設定した。
基本的に、利用にはアカウント登録することが前提となる。他のスマホで使用する場合も、予めアカウント登録したアカウント名、パスワードでログインすることで同様に活用可能だ。現在、筆者は2番目のスマホとして「iPhone SE」も使用している。
アプリをスマホに導入し、起動後はアプリのガイダンス通りに質問に答え、Qrioの操作を行うことで自然と設定処理は終了してしまう。基本的にQrio Lockアプリの操作画面は全部で4つ。実際のQrioで簡単にカギの開閉を行う“ロック”、開閉のログを見る“履歴”、一時的なゲストキーやファミリーキーを複製する“合カギ管理”、Qrioカギのさまざまな設定できる“ロック設定”だ。
ロック設定ではQrioカギを使用してハンズフリー解錠やオートロック、リモート操作の設定が行える。ハンズフリー解錠はスマホの位置情報と連携し、オーナーが自宅近くに帰ってくると、自動解錠するサービスだ。
オートロックは前述したドア枠に取り付けたマグネット機能の開閉センサーとQrio本体との距離を管理し、ドアが閉まると自動ロックする仕組みだ。そして最後のリモート操作を遠隔から行うには、前述したQrio Hubというオプション製品が必要となる。
Qrio Hubは宅内のWi-Fiルーターと連携し、WAN回線を経由してゲストや家族によるQrioカギ開閉のお知らせを遠隔地のオーナーにリアルタイムで送ってくれる。もちろん、オーナーは遠隔地から自宅のQrioカギをリモート環境で開閉でき、開閉ログのサマリーもどこからでもチェックできるのだ。
リモート操作の実行はログにも反映されるが、開閉を実際に見ていない場合、いまひとつ実際に玄関ドアのカギが開いたのか、閉じたのか、自信をもって確証は得にくいものだ。誰か家族が自宅に残っていれば証言できるが、それもそれほどおもしろくはない。ということで、筆者は家族の留守中も基本的には自宅にいるワンコ「ボビー」に証言犬になってもらおうと、彼がいつも居るリビングの専用ベッドの見える場所にネットワークカメラをセットして出かけた。
家族といっしょにいても、一匹で留守番をしていても、基本的に室内で飼ってるワンコは玄関ドアのカギの開閉音には極めてセンシティブだ。ましてや、家族が出かけている場合は家族の帰りを待っているので、ふだん以上に耳は玄関のカギの開閉音に集中している。
このようなシチュエーションで、出先から玄関のカギを開閉してその時のボビーの反応を撮影してみた。カメラには11時38分時点でリビングの自分のベッドでスヤスヤと寝てるボビーが映っている。11時40分にQrio Lockアプリでボタンをタップして玄関カギを解錠。11時41分のネットワークカメラには、寝ていたボビーが突然起きて明らかに玄関の方向に注目しているのがわかる。そして同じ11時41分には解錠したが、ドアに開閉のアクションが無かったので、Qrioがオートロック機能を起動して再度ドアがロックされたことがわかる。
このように、Qrioは単体でもなかなかおもしろい商品だが、実際には、ネットワークカメラやそのほかのIoT製品と並行して使用すると、より楽しく夢のある使い方ができそうだ。
スマホで管理運用できるQrioカギを、共同住宅である我が家の玄関に取り付けてほぼ1ヵ月経ったが、便利になった点や疑問点、不便な点などが色々と見えてきた。便利になった点は、昨今のホテルと同様のオートロックだ。朝夕にワンコを散歩に連れ出す際もスマホさえ持っていれば、一旦外に出てからめんどうなキーロックの必要性がないので、すぐに散歩に行くことができる。ただし、スマホを携帯しないでゴミ出しで外に出ると、締め出しを食らってしまう危険性もある。自宅でそういう習慣になれていない時期は要注意だ。
今回のQrioは個人的には極めて気に入ったアイテムなのだが、残念ながら筆者宅ではQrioは完璧ではない大きな理由がある。実はわかり切ったことだったのだが、そんなことも考え及ばず「おもしろそう」というだけで衝動買いに走ってしまったが、実は、我が家はマンション1階にオートロックのある集合住宅なのだ。
いくら自室だけをスマホで解錠できるスマートロックに替えようが、1階玄関扉を通過するには自室と同じ物理キーが絶対に必要になる。回避する手段は、別の住人の後をテイルゲートするか、例外的に見知った管理人さんに一時的に玄関ロックを開けてもらうという反則手段を使わない限り、物理キーは必ず持ち歩かなければ、家族が留守の時は自室に入れないことになってしまう。
そして、最後になるが残念ながら筆者宅の環境でうまく動作しなかったのは、Qrioの最大のウリにもなっている「カギの解錠は、ドアに近づくだけ。ハンズフリー解錠」という機能だ。ほかのユーザーの間でも動作しないというトラブルが多いのか、Qrio専用ウェブサイトにも「ハンズフリー解錠がうまく動かないとき」という項目がある。
内容を読むと「正確に動作しなことがあるのであらかじめ了承ください」とのコメントと、動作推奨機種が列挙されている。残念ながら、筆者のHUAWEI P20 Proは動作対象外ではあったが、なんとか“ハンズフリー解錠”が機能した。しかし、残念ながら100%ではないという感じだ。その後、もうひとつの常用スマホであるiPhone SEでも同様のハンズフリー解錠にトライしてみた。
こちらは自宅を出て5分ほどすると「ハンズフリー解錠が有効になった」とのお知らせが来て、外での用事を済ませて再度自宅付近に到着すると、今度は「ハンズフリー解錠を始めます」。それに続いて「ハンズフリー解除しました」と順調に動作した。いずれにせよ、成功確率100%ではなさそうなので、Qrio導入を検討されているユーザーでハンズフリー解錠機能が絶対条件の方は事前調査か注意が必要だろう。特にウェブページの動作推奨機種は必見だ。
とはいえ、たとえハンズフリー解錠ができたとしても、ドアの取っ手を握って引っ張るか押すかしてのドアを開く動作は必要なので、自動ドアでもない限り両手荷物の場合は第一印象ほど大した機能ではないのかもしれない。それよりも、億ションではなく都会のウサギ小屋マンション程度の共同住宅で、一階オートロックも、スマートキーに統一される日はいったいいつのことになるだろうか……。
今回の衝動買い
アイテム:Qrio「Qrio Lock(Q-SL2)」
・価格 2万2580円
アイテム:Qrio「Qrio Hub」
・価格 7853円
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるKOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
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