前回に引き続き、今回もIBMの業績と歴史について説明していく。
画像の出典は 、Wikipedia
社名をIBMに変更
マシンのリースでシェアを独占する
1920年代に入ってもWatoson Sr.氏は引き続きIBMを精力的に牽引していった。1910年代後半からCTR(Computing-Tabulating-Recording Company)は米国以外にも積極的に展開しており、1917年にはまずブラジルに、1923年にはドイツに現地オフィスを構えている。
1920年初頭にはちょっとした問題も生じたらしい。詳細は不明で、文献には“minor crisis in the early 1920s”とだけあるが、こうしたものを克服してさらに成長を遂げていく。
この1920年代というのは狂騒の20年代(Roaring Twenties)とも呼ばれる時期である。第一次世界大戦が終わり、戦時手当を含めてたっぷり給料をもらって復員した兵士が米国に戻ってきたことに加え、自動車業界が「普通の家庭で手が届く」自家用車の大量生産を始めた時期でもある。
あるいはラジオ放送のスタートなど、大量消費時代の幕開けとなったのが1920年であり、これは世界恐慌に突入する1929年まで続くことになった。要するにバブルの幕開けである。当然CTRもこの波に乗り、再び売上を伸ばしていく。
CTRの特徴は、高い利益率であった。例えば1928年、同社は1970万ドルを売り上げ、530万ドルの利益を確保したが、この利益は(当時はIBMより遥かに巨大だった)Remington Randとほぼ同等だった。
ちなみにRemington Randの売上そのものはIBMの3倍に達している。これはTabulating Machineに注力したWatson Sr.氏の方向性の正しさを示しているともいえるだろう。なお、CTRは1924年2月に、その名称をInternational Business Machines Corporationに変更、ここからIBMとなった形だ。
またWatson Sr.氏は翌1925年に同社初のCEO兼COOというポジションに就くことになった(CTRの時代にはそもそもCEOやCOOという職種がなく、単にPresidentとされていた模様)。その1925年には従業員は3700人ほど。それが5年後の1930年には6300人を超えており、会社が急成長を遂げているのが良くわかる。
IBMの強みは、キャッシュレジスターのようなフロントオフィス向けというよりは、会計部門などのバックオフィス向け製品を充実させ、かつマシンをリースで提供したことだろう。この方式なら顧客が付くまでの金銭的負荷は高いが、一度顧客が付くとその後は安定した収入が得られることになる。
また顧客にとって、仮に買い取り契約だったりすると最初に結構な資金が必要になるが、リース方式ならここの障壁が低いことになる。かくして1936年には、全米で販売されたTabulating Machineや集計装置の85%がIBMという事態に至る。
ちなみにこの時点でも同社の最大の競合はRemington Randであったが、両者はパンチカードに関して1910年中にクロスライセンスを結び、過当競争に陥ることを防いだ。このクロスライセンスの下、IBMとRemington Randのパンチカードはお互いに互換性がなく、IBMの顧客が(データ入力のために)打ちぬいたパンチカードはRemington Randのマシンでは読めない(逆も同じである)ことになっており、これで顧客の流出を防ぐことになった。
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