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最大40個のデバイスと最大300mの長距離通信が可能、工場や病院、学校などですでに活用中

BLE IoTデバイスの課題を解消、BluetoothルーターのカシアCEOに聞く

2018年07月23日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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すでにスマートファクトリーやスマートキャンパスの導入事例

 IoTソリューションは、各業種のニーズに沿ったデバイスとアプリケーションを組み合わせなければならない。そこでカシアではさまざまな業界のパートナーとコラボレーションしていると、ツァオ氏は説明した。たとえば製造業向けならば、GEデジタル、ボッシュ、デンソー、フィリップス、東芝、シーメンスといったパートナーがいるという。

 またツァオ氏は、いくつかの代表的な導入事例を紹介してくれた。

 ひとつは中国の小中高一貫校で実施している「スマートキャンパス」プロジェクトだ。キャンパス全域に2000台以上のCassia Bluetoothルーターを設置し、生徒/学生に4000個のBLEリストバンドを着けさせることで「授業の出席管理」「キャンパスへの出入り」などを管理する。さらに、このリストバンドには心拍センサーも付いており「運動中のリアルタイムな健康管理」を実現しているほか、キャンパスの出入りを検知して保護者や教師のSMSに「登下校通知」メッセージも送信できるという。

 ツァオ氏は、今後さらに照度/温度/騒音/大気汚染などのBLEセンサーデバイスを設置することで、キャンパスをよりスマートに制御するアプリケーションを開発できるだろうと語った。

学校でのBLE IoTソリューション。すでにキャンパス全域がカバーされているため、今後はさらにセンサーの種類を増やして用途を拡大していく方針だという

 2つめは、スイスの重電/産業機器メーカーであるABBのソリューションだ。同社が提供する製造装置には、従来からBLEの振動センサーが内蔵されている。同社ではそのセンサーデータをBluetooth経由で収集し、ビッグデータ分析することで故障発生を予知、事前にメンテナンスを行う「マシンヘルスモニタリングサービス」を提供している。こうした予測メンテナンスのサービスは、現在の産業機器業界では一般的になりつつあるものだ。

 しかし大規模な顧客になると工場が広く、導入している製造装置も数も多い。従来はタブレットを持って工場内を歩き回り、装置に近づいて1台ずつデータを収集するほかなく、時間と手間がかかっていた。「大規模な工場では全装置のデータ収集に1カ月ほどかかり、しかもリアルタイムなデータ取得ができなかった」(ツァオ氏)。

 ここにカシアのBluetoothルーターやコントローラーを導入することで、すべての製造装置に対するリアルタイムなデータ取得と一元管理が可能になる。「生産性は向上し、製造装置のダウンタイム削減とコストセーブにつながる」と、ツァオ氏は説明した。こちらでも、工場内のBLEセンサー群をさらに増やしていくことで、「スマートファクトリー」の実現が容易になる。

スイスABBのソリューション。工場内にある各機器の内蔵センサーデータをリアルタイムに取得可能で、ダウンタイム削減とコスト改善につながる

 そのほかにも、すでにBLE対応機器が多く導入されている病院/介護施設における統合的なデータ収集やアセット管理、また空港や港湾における手荷物やコンテナの物流管理などにも利用されていると、ツァオ氏は説明した。

* * *

 TEDでは、Cassia BluetoothルーターとIoTアクセスコントローラー、SDKをキットで提供するとしている。税抜価格(初年度)は4万円から。また「Microsoft Azure」や市販BLE IoTセンサーなどと組み合わせたキットも販売予定。

 IoT設計構築支援サービスの「TED REAL IoT」、パートナーとの「IoTビジネス共創ラボ」など、各産業におけるIoT活用拡大とソリューション支援の取り組みを進めてきたTEDとして、今回の販売契約は大きな商機と見ているようだ。

 同社 クラウドIoTカンパニー VPの西脇章彦氏は、カシア製品によって「Bluetoothの利用シーンが大きく広がる。デバイスパートナー、アプリケーションパートナーとうまく連携しながら、マーケットに展開していきたい」と語った。発表のなかでは「3年間で5億円」の販売目標を掲げているが、さらに大きな売上も期待しているという。

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