金融庁研究会で欠けている論点:
「仮想通貨ダメ、ブロックチェーンOK」でいいのか
2018年07月17日 09時00分更新
■仮想通貨のリスクを重く見る有識者
今年5月22日に開かれた金融庁の有識者会議「仮想通貨交換業に関する研究会」では、この問題が議論された。事務局を務める金融庁が、有識者に示した「討議いただきたい事項」のひとつに、次のような議題が含まれていた。
「仮想通貨とブロックチェーン技術とを峻別(しゅんべつ)し、前者についてはリスク、後者についてはプラスの面を指摘する声がある一方、両者は密接不可分であり、仮想通貨を離れてブロックチェーン技術の発展は見込まれないとの声もあることについて、どう考えるか」
事務局側の問いかけは、整理するとこうなるだろう。
・仮想通貨=リスクを指摘、ブロックチェーン=プラスの面を指摘 ・仮想通貨がないと、ブロックチェーン技術の発展は見込まれない
『アフター・ビットコイン』の著者として知られる、麗澤大学の中島真志教授も、研究会のメンバーのひとりだ。複数回お話をうかがったが、中島氏は、ブロックチェーン技術にはポジティブな一方で、仮想通貨には厳しい。5月の研究会は欠席だったが、文書で意見を提出している。
「現在は、むしろ『ブロックチェーンが主役』となっており、この技術をどの分野に応用していくかが中心的な課題となっている。ビットコインは、あくまでもブロックチェーンの最初の実用例にすぎず、また特殊な適用例の1つにすぎないとの見方が主流である」
中島氏は、ブロックチェーン技術の進展を次のように定義する。
ブロックチェーン1.0=仮想通貨 ブロックチェーン2.0=国際送金、証券決裁など金融分野への応用 ブロックチェーン3.0=土地登記、資産管理、商流管理、食の安全性管理など非金融分野への応用
そのうえで、現在は仮想通貨よりも2.0、3.0の動きが「活発になっている」と指摘している。
研究会のメンバーで弁護士の坂勇一郎氏も、同会合で「仮想通貨以外の分野において、ブロックチェーン技術の開発・改善の努力というものがそれなりに広がってきているようです。個人的な意見としては、こういった動きを強めていくといいますか、促進することが望まれるのではないかと感じております」と発言している。
金融庁が研究会の立ち上げを発表したのは、3月8日のことだ。この日は、巨額の仮想通貨流出が起きたコインチェックを含む取引所7社に対して、行政処分を出している。研究会の成り立ちから、有識者たちが、仮想通貨のリスクを重くみるのは当然だろう。
ただ、議論で抜け落ちているのはブロックチェーンの自律性に関する検討だ。
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