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市場評価は本物か? 暗号通貨12種の強みと弱み

2018年06月26日 13時55分更新

文● Mike Orcutt

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ブロックチェーンを使った新しい暗号通貨が次々と生まれている。市場評価額における上位12種類について、MITテクノロジーレビューがそれぞれの強みと弱みをまとめた。

ビットコイン(BTC)

公開:2009年、市場価格:1630億ドル

強み:暗号通貨の元祖。ビットコイン(Bitcoin)は最大かつ最も人気の高いブロックチェーン・ネットワークであり、攻撃者との戦いを最も多く経験してきた暗号通貨でもある。

弱み:需要の伸びがビットコインのネットワークを圧迫しており、トランザクション・コストが高騰している。合意プロトコルであるプルーフ・オブ・ワークは採掘(マイニング)が労働集約型になるよう設計されており、大量の電力を消費するにもかかわらず1秒間に7件のトランザクションしか処理できない。

イーサリアム(ETH)

公開:2015年、市場価格:700億ドル

強み:イーサリアム(Ethereum)に組み込まれたプログラミング言語を使うと、開発者はスマート・コントラクトと呼ばれるブロックチェーン上で動作するコンピューター・プログラムを書ける。多くの新規暗号通貨公開(ICO)は、イーサリアムのスマート・コントラクトを基礎としている。

弱み:イーサリアムの合意プロトコルはプルーフ・オブ・ワークを使っており、トランザクション処理速度が比較的遅く、大量の電力を消費する。初期のスマート・コントラクトの多くはハッキングに対して脆弱であり、スマート・コントラクト分野のセキュリティはまだ未熟である。

リップル(XRP)

公開:2012年、市場価格:320億ドル

強み:リップル(Ripple)によれば、XRPと呼ばれる自社の暗号トークンは、国際間取引を現在よりも高速かつ安価にするために金融機関が使用する「ブリッジ通貨」になり得るという。XRPはビットコインやイーサリアムよりも格段に高速な取引を可能にする、革新的な合意プロトコルを使用している。

弱み:非公開会社のリップルは、システムを主導的にコントロールできる立場にある。暗号通貨原理主義者は、誰もが採掘できるビットコインとは対照的であり、完全な非中央集権的とは言えないという。

ビットコイン・キャッシュ(BCH)

公開:2017年、市場価格:190億ドル

強み:ビットコインのハードフォーク(強制分裂)で生まれた通貨であるビットコイン・キャッシュ(Bitcoin Cash)は、ビットコインより大量のトランザクションを扱えるようにソフトウェアがきめ細かく調整されている。

弱み:評論家によると、ビットコイン・キャッシュは一握りの採掘者(マイナー)が大部分のコインを採掘しており、あまりに中央集権的だという。

ライトコイン(LTC)

公開:2011年、市場価格:100億ドル

強み:ライトコイン(Litecoin)はビットコインのコピーのようなアルト・コイン(alt-coin)の一種だが、いくつか変更点がある。ライトコインはビットコインの4倍速くトランザクションを処理でき、採掘プロセスは趣味で採掘している人たちにも開放された状態を維持できるように設計されている。この点がプロの採掘者が高価なハードウェアを使っているビットコインのケースと異なる。

弱み:ビットコインより高速と処理ができるとはいえ、ライトコインが理想的な支払い方法となるためにはあまりに遅く、大量の電力を消費する。そのうえ、ビットコインよりもはるかに知名度が低いというハンディキャップがある。

カルダノ(ADA)

公開:2017年、市場価格:59億ドル

強み:カルダノ(Cardano)の考案者によれば、システムはまだトークンの取引と転送のプラットフォームにすぎないが、プライバシーと規制の順守に重点を置いているという。いずれスマート・コントラクトに対応すると話しており、そうすればイーサリアムのようになるが、プルーフ・オブ・ステークの合意プロトコルを使用しているため、電力消費量はより低くなる。

弱み: 開発者が広く主張を展開しているにもかかわらず、カルダノに関する情報はまだほとんどない。

ネオ(NEO)

公開:2014年、市場価格:58億ドル

強み:中国最大の暗号通貨ネオ(NEO)は、イーサリアムに似た目標を掲げているスマート・コントラクト・プラットホームだ。ネオは「デリゲーテッド・ビザンチン・フォールト・トレランス(dBFT:delegated Byzantine Fault Tolerance=委任されたビザンチン耐性)」 と呼ばれる合意プロトコルを使用しており、イーサリアムが1秒間に15件のトランザクションを処理するのに対し、ネオでは1万件が可能だとという。

弱み:NEOはきわめて中央集権的であり、それが変わるかどうかは明らかにされていない。創設者は「いつかは」より非中央集権的にする計画だと話している。

ステラ/ルーメン(XLM)

公開:2014年、市場価格:56億ドル

強み:ステラ(Stellar)プラットホーム(ステラの台帳)は、リップルからハードフォークしたもので、その通貨であるルーメン(Lumens)もリップルと同様に国際間取引のブリッジ通貨になることを目指している。しかも、ステラは営利企業ではなく非営利団体が運営している。新規暗号通貨公開(ICO)のプラットホームとして、イーサリアムに対抗する計画もある。

弱み:ステラはリップルと、従来型の銀行システムデ支配力があるプラットホームのSWIFT(国際銀行間通信協会)の両方と多くの面で競合している。SWIFTはブロックチェーンのような分散台帳テクノロジーを試験中だ。

イオス(EOS)

公開:2017年、市場価格:43億ドル

強み:現在、イオス(EOS)トークンは、イーサリアム上で取引されている。ルーメンとは別のイーサリアム・キラーと宣伝されているイオスのスマート・コントラクト・プラットホームはまだ公開されていない。しかし、カルダノのように、プルーフ・オブ・ワークの代わりに理論上はより高速で効率的であるプルーフ・オブ・ステーク・プロトコルを採用する予定だ。

弱み:ICOによって10億ドル以上を調達しているが、ネットワークが公開されるよりも前にこのプロジェクトを判断するのはほぼ不可能である。

モネロ(XMR)

公開:2014年、市場価格:43億ドル

強み:モネロ(Monero)はデジタル署名の一種であるリング署名を使っている。リング署名はグループのメンバーの誰が署名をしたのかを秘密にしたまま取引ができる。これによりユーザーは仲介なしで取引できるようになり、採掘プロセスは「平等主義」になるように設計されている。

弱み:モネロはその特徴のせいでサイバー犯罪者に好かれている。ハッカーが他人のコンピューターを暗号通貨の採掘に悪用するマルウェアを使う「クリプトジャッキング」の増加を助長してしまった。

ダッシュ(DASH)

公開:2014年(旧称はXCoin、Darkcoin)、市場価格:43億ドル

強み:モネロのような、いわゆるプライバシー・コインの1つのダッシュ(Dash)は、ビットコインの影響を受けているが、支払いプロセスが高速化されているという特徴がある。

弱み:他の数種類の暗号通貨と同様に、ダッシュも中央集権的であるという問題を抱えている。不幸なことに初公開時にあまりにも多くのコインを発行しすぎたために富の集中が起き、通貨の将来に対する意思決定において小規模のグループに不釣り合いな権限を与えてしまった。

アイオタまたはアイオタ(MIOTA)

公開:2016年、市場価格:38億ドル

強み:アイオタ(IOTA)のシステムはブロックチェーンを使用しておらず、代わりに有向非巡回グラフ(DAG:Directed Acyclic Graph)と呼ばれる数学的構造をベースにした共有台帳を使用している。アイオタは、トランザクションがモノ、もしくはテック企業のような顧客であるかに関係なく、IoTデバイスによってデータの購入、販売、取引ができる通貨を目指している。

弱み:評論家はアイオタはあまりに中央集権的であると話している。多くの暗号通貨研究者が、システム全体のセキュリティについて疑問を呈している。

※記載した市場価格はすべて2018年3月12日現在のもの。市場価格データのソース:https://onchainfx.com(「Current Marketcap」でソート)。()は通貨単位名である。


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