高音質で聴けるラジカセが必要
カセットテープを使っている人たちからは、カセットテープの音には迫力がない、こもった感じがする、臨場感がないなど、約6割の人から不満があがっているという。
ここに、東芝エルイートレーディングは攻め込んだ。
「いまは、2000~3000円のラジカセが量販店で販売されているが、それらのラジカセでは、やはりそれなりの音しか出ない。カセットテープの音源をハイレゾ相当の高音質で再生できれば、こうした不満も解決できる」と、同社ではカセットテープの音を、高音質で聴くためのハードウェアが必要であることを訴える。
同社が発売するハイレゾ対応ラジカセ「TY-AK1」は、コンパクトサイズのボディーに、40kHz以上の高域が再生可能な新型ソフトドームツィーターと、高性能64ミリウーファーによる左右独立型バスレフ型スピーカーを搭載。また最適にチュニーングされた実用最大出力40W(20W×20W)のデジタルアンプを採用する。ハイレゾ音源の音楽であれば、低域から高域まで忠実に再現し、スタジオ原曲に近い高音質を実現できる。
さらに、CD、MP3などの圧縮音源でも、圧縮過程で失われたデータを補完し、ハイレゾ音源相当に変換するアップコンバード機能を搭載。カセットテープの音源も、ボタンを押すだけで、すぐに、ハイレゾ相当の音質に変換できる。
松本社長は「昔聞いていたカセットテープの音楽も、最新の音質でよみがえらせることができる」という。そして松崎氏も「TY-AK1によって、カセットテープでここまでの音質を再現できたことには驚いた。現代のラジカセである今回の商品を通じて、新たなカセットテープ文化が作られていくことを期待したい」とした。
新モデルはAurexブランドから発売
同社が目指したのは「手軽に高音質を」をコンセプトに、「アナログ音源を含めて、あらゆる音源をハイレゾ音質にすること」だという。
そうした意味でも、カセットテープを所有しているユーザーにとっては、待望の1台ともいえるラジカセだといえよう。
ちなみにカセットテープの楽曲を、SDカードやUSBメモリーに録音しなおすこともできるため、古いカセットテープの劣化が気になる場合は、最新のデジタルメディアに移せる。
今回の製品ではカセットテープを持つ古くからのオーディオユーザーにとって、うれしい2つのエピソードがある。とくに東芝のオーディオを使用していたユーザーにはたまらない仕掛けだといえるだろう。
ひとつは、今回の製品に、「Aurex(オーレックス)」のブランドをつけている点だ。
Aurexは東芝のかつてのオーディオ製品のブランド。東芝は1992年にオーディオ事業から撤退していたが、2003年にポータブルオーディオに特化する形で事業を再開。2016年3月に発売した世界初のハイレゾ対応CDラジオ「TY-AH1000」でブランドを復活させた。今回の製品は、復活したAurexシリーズの第2弾となるものだ。
もうひとつは、当時のAurexのイメージキャラクターには女優の原田知世さんを起用していたが、量販店店頭などでデモストレーションのために用意したカセットテープには、原田知世さんの「時をかける少女」と「天国に一番近い島」の2曲のセルフカバー版が収録されており、試聴できる。
これも、高音質ラジカセに賭ける同社のこだわりだといえよう。
目指すは月1500台販売
東芝エルイートレーディングは、中国マイディアグループ傘下の東芝ライフスタイルの子会社であり、国内のCDラジオおよびCDラジカセ市場では50%のシェアを持つという。海外では、音質を追求したTrue Wireless EarPhonesのほか、ゲームで利用する際に最適化したイヤフォン、大容量を実現するパーテイースピーカーなども展開しており、これらの製品は日本への展開も検討していくという。
松本社長は「今後もポータブルに徹底的にこだわり、ポータブルオーディオ専業メーカーとして戦っていく」と意気込む。
今回の製品は「ポータブルオーディオ専業メーカー」を象徴する製品のひとつになる。月1500台の販売を目指すというが、そのうち、8割を40代以上のミドル層が占めると予想している。
ラジカセにビジネスチャンスを見いだした同社の挑戦に注目しておきたい。
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