高速性とデータ保護を両立するアーキテクチャ、HCIが対応できない領域をカバー
デイトリウムが日本法人設立、“新世代”CI製品の本格展開開始
2018年02月23日 07時00分更新
米国デイトリウム(Datrium)が2018年2月14日、日本法人であるデイトリウムジャパンの設立記者発表会を開催した。日本法人社長には、2012年から6年間ティントリジャパン社長を務めた河野通明氏が就任している。
同社が“新世代のコンバージドインフラ”と呼ぶ「Datrium DVX」とはどんな製品か、多くのベンダーが提供するハイパーコンバージドインフラに対してどのような優位性を持つのか、米国および日本の代表が語った。
「HCIが『必要なのに持てなかった』能力、機能を提供する製品」
米デイトリウムは2012年に設立された。同社CEOを務めるブライアン・バイルズ氏は、もともとストレージベンダーであるデータドメイン(Data Domain)社の共同設立者の1人だった。デイトリウムの設立にあたっては、データドメインのCTOチーム、さらにヴイエムウェアのプリンシパルエンジニアチームなどのエンジニア人材も参加したという。
「これまでとはまったく違うITインフラ製品、具体的にはプライマリ/セカンダリストレージ、さらにクラウドまで含めたインフラ製品を作ろうと、デイトリウムを立ち上げた」(バイルズ氏)
2016年に最初の製品をリリースし、北米市場を中心に販売を展開、現在は300社を超えるユーザー企業を持つ。日本市場でも2016年にノックス(NOX)が代理店契約を結び、国内販売を手がけている。
同社が開発/提供するのは、x86サーバーベースのストレージ(サーバーベースドストレージ)を組み込んだコンバージドインフラ(CI)だ。ストレージ市場では、従来型の高価なストレージ専用機がシェアを失い、その代わりにサーバーベースドストレージが大きくシェアを伸ばすことが予測されている。
サーバーベースドストレージ分野で現在注目されているのが、1ノードにサーバーとストレージの機能を組み込み、分散ストレージ技術を使って複数ノードで構成されるハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品だ。ただしバイルズ氏は、次のように語る。
「われわれの開発する製品では、HCIが『必要なのに持てなかった』能力、機能を提供したいと考えている」(バイルズ氏)
具体的には、「Oracle DB」や「SQL Server」などの配下でもプライマリ(Tier1)ストレージとして使える超低レイテンシ/スケーラブルなパフォーマンス、あらかじめ内蔵されており個々のシステム/データを確実に保護するバックアップ機能、簡単な操作で実行できるクラウドレプリケーション機能、という3つを兼ね備えるCI製品を提供する。そのためDatrium DVXは、HCIとは異なり、サーバーノードとストレージノードを個別に持つアーキテクチャとなっている(詳しくは後述)。
日本法人社長の河野氏は、最初にデイトリウムの技術を知ったときに「衝撃を受けた」と語り、Datrium DVXの製品特徴を「めっぽう速い」「ストレージ管理が容易」「構築も容易」という3点にまとめた。
「これからインフラ環境を構築しようというケースだけでなく、現状の環境に追加するかたちでも導入できるのが、他社製品とひと味違うポイント。たとえばオールフラッシュアレイを導入したがパフォーマンスがなかなか上がらない、HCIを導入したが拡張(スケールアウト)は不安があってできない、そうした顧客にも優れた製品だと考えている」(河野氏)
また販売代理店を務めるノックスの加瀬光晴氏は、実際のユーザー企業からは、高速さや導入/運用の容易さに加えて「コストメリットの高さ」も評価されていると語った。コモディティサーバーを使って構成できる点に加えて、重複除外率や処理性能のコストパフォーマンスが高いという声を聞くという。
ストレージにこだわったCI、高速性とデータ保護性を両立
続いて登壇した米デイトリウム プロダクト統括担当VPのレックス・ウォルターズ氏が、Datrium DVXの技術的な解説を行った。ウォルターズ氏は、「Datrium DVX」という製品名は“Distributed Virtual+X”の略であり、分散仮想化環境に、エンタープライズ環境で求められるデータ保護や重複排除などの機能(+X)を付加しているという意味だと説明する。
なお、DVXが現在サポートしている仮想化技術はVMware vSphereとLinux KVM、またコンテナ技術はDockerだ。
前述したとおり、Datrium DVXは、サーバーノードとストレージノードが独立した形で構成される。最小構成はサーバーノード×1台+ストレージノード×1台で、最大構成でサーバーノード×128台+ストレージノード×10台までスケールアウトする。ただし、プライマリストレージはサーバーノードに内蔵されるのが特徴だ。この点で、これまでの他社製CIともHCIとも異なるアーキテクチャとなっている。
まず、サーバーノード(DVX Compute Node)内のフラッシュストレージ(SSD)には、そのノード内で稼働しているワークロード(仮想マシン)のすべてのアクティブデータが保存(キャッシュ)される。100%ローカルSSD上にある非圧縮データを使い、ネットワーク経由でデータをやり取りするオーバーヘッドも発生しないため、低レイテンシ/高速なパフォーマンスが担保される。
一方、ストレージノード(DVX Data Node)は主にセカンダリストレージの役目を果たす。RAIDではなく分散ストレージ技術(イレージャーコーディング)を用いており、データは冗長性を持たせたかたちで複数のHDD/ストレージノードに分散保存される。サーバーノードや他のストレージノードとはEthernet経由で接続されるが、独自開発の高速なストレージプロトコルを用いている。また、ストレージノードに保存する時点でデータへの重複排除/圧縮処理を行うため、サーバーノードからの読み込み速度がさらに高速化される。
そして、サーバーノード/ストレージノード上にあるすべてのデータは、単一の名前空間で管理される。サーバーノードからは、ローカルのフラッシュに保存されているアクティブデータか、ストレージノード(あるいは他のサーバーノード)に保存されているコピーデータかを意識することなく、1つの大きなストレージプール(NFSストレージ)としてアクセスできる。サーバーノードとストレージノードの間のデータコピーなど裏側の処理は、DVXが自動的に行う。
なお、vModionなどで仮想マシンを他のサーバーノードにマイグレーションした場合には、それに追随してキャッシュデータも新しいサーバーノードへ高速にコピーされる。また、サーバーノードがダウン(障害発生)した場合は、別のサーバーノードでストレージノードにあるデータを読み出して仮想マシンを起動させる。この場合も、すべてのノードが単一の名前空間を参照しており「必要なデータがどこにあるか」がわかるため、新しいサーバーノードがデータを読み出しながら短時間で起動/復旧できる(同時にアクティブデータとしてキャッシュも行う)。
そのほか、スナップショット機能(最大3000個まで取得可能)、全データのエンドトゥエンド暗号化、DR/リモートバックアップ機能なども標準で備えている。
販売製品のラインアップとしては、サーバノードアプライアンスのDVX Compute Node、ストレージノードアプライアンスのDVX Data Node、さらにソフトウェアの「DVX Software」の3つがある。DVX Softwareをインストールすることで、SSDを搭載した他社製のx86サーバーをサーバーノードとして使うこともできるため、顧客がすでに導入済みのサーバー環境をCI化することも可能だ。
また、AWSクラウドに遠隔バックアップを行う「Cloud DVX」ソフトウェアも提供している。VMおよびvDiskレベルでの細かなリストアに対応しており、グローバル重複排除処理を行ったうえで転送するためクラウドの利用コストも抑えられるとしている。
参考価格(税抜)は、DVX Compute Nodeが186万7500円から、DVX Data Nodeのハードディスクモデルが1072万5000円から、同 SSDモデルが1950万円から、DVX Softwareが180万円。また、Cloud DVXが90万円となっている。
ウォルターズ氏は、従来のHCIではノード間のデータのやり取りでネットワークがボトルネックになる、十分なデータ保護機能が提供されていないといった課題があったことに触れ、高速なパフォーマンスと豊富なデータ保護機能を両立させたDatrium DVXの優位性をアピールした。
「最高性能としては1800万IOPS(128サーバーノード、4KBランダムリードの場合)を記録している。また、DVXは二重障害にも対応するよう設計されており、データの安全性を常に確保している。加えて、すべてのサーバーノードが独立して稼働するアーキテクチャなので、エラーシューティングやパフォーマンスチューニングもやりやすい。顧客のニーズに応じてサーバーのCPUリソース、メモリ容量、SAS SSDかNVMe SSDか、といった最適な選択肢を選べる」(ウォルターズ氏)
国内での販売戦略について、日本法人の河野氏は「率直に言えば、まだ一部のアーリーアダプター顧客にしか訴求できていない段階だ」と述べ、まずはDashboard DVXの認知を広めていくことから始めたいと語った。