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紅茶王子、コンビニスイーツ“辛口”レビュー その2

セブンのゴディバと直球勝負! ウィスキーとのマリアージュに耐えるか?

2017年12月30日 17時00分更新

文● 天野透/ASCII

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ストレートなカカオの勝負はさすがにきびしい

 一方のダークチョコガナッシュはというと、味や香りが重層的だったミルクチョコレートプラリネとはうって変わって、カカオの香りをストレートにぶつけてくる感じだ。こちらもコンビニで手に入る一般的なチョコと比べると、口当たりは明らかにやわらかい。ミルクチョコプラリネと比べるとワイルドで、甘さでごまかすようなことをせず、チョコレート本来の味と香りと向き合う趣がある。

 それだけにカカオをはじめとした素材の素地が試される。この点はどうかというと、使われているチョコは悪いものではないだろう。しかし、マジメに風味と向き合うにはちょっと力不足を感じた。カカオの香りは直線的で、立体的な深さは今ひとつ。ゴディバのボンボンならば、鼻腔をくすぐる香りはもっと上品に持続するし、カカオのコクがずっと複雑だ。

 ウィスキーとのマリアージュはどうだろう。こちらもカフェグレーンと合わせてみたところ、ちょっとチョコレートの刺々しさが強調された。カカオの香りがもっと深いチョコレートならば味わいはずっと豊かになりそうだが、残念ながらそのレベルには達していない。若干チョコレートのほろ苦い余韻が口に残るが、カフェグレーンのふわりとした上品さには勝てない。どうやらメロウなボトルとの相性はもう一歩。

 ほかのウィスキーに合わせるとしたら、少しスパイシーでパンチの効いたタリスカーやアードベッグといったアイラモルト、国内だと余市といったところだろうか。あるいは樽のチャコール感が利いたものなら、より奥行きの深い味わいを愉しめるかもしれない。ただし、いずれも酒齢は12年くらいまでの若めのボトルが良さそうだ。熟成が進んだ複雑なボトルだと、その深さにチョコが飲まれてしまうだろう。

 実際に味わってみた感想としては、コクが浅く単調で、ゴディバのレベルには達していなかった。袋売りされているような普通のチョコよりはずっと良いとは思うが、ゴディバのバッジを付けられると「うーん……」となってしまう。ゴディバ度35%くらいだろうか。同じ価格で勝負するならば、ボンボン1粒売りにするともうちょっと質を上げられるかもしれない。でもコンビニで350円もするボンボンショコラを1粒だけ買ったりするかという疑問もわく。

酒棚の中から、ニッカ自慢のカフェグレーンとのマリアージュを試みた。このチョイスはミルクチョコプラリネには成功、ダークチョコガナッシュにはもうひとつ。

“コンビニスイーツ”というフィールドでどれだけ羽根を広げるかが評価の分かれ目

 今回のレビューで、やっぱりフランス菓子は香りの文化に由来するものだなと強く感じた。チョコレートに関しては、カカオをはじめとした素材の香りをどれだけ活かしきるかで、その評価は大きく変わる。良い素材を使い、丁寧な仕事で仕上げれば、素材はキチンと応えてくれるのだ。その点で今回のタブレットはどうだったかというと、いかにゴディバと言えど、一流のショコラティエが使うクーベルチュールを求めることは厳しい。

 そんな中でミルクチョコプラリネは「できる範囲で精一杯頑張って工夫してみた」という感じが出ていたと思う。個々の素材に限界があったとしても、複数の要素をかけ合わせれば良いものはできあがる。それもまた、お菓子の面白さだ。ミルクチョコプラリネはそんなアイデアとバランス感覚が優れていた。

 一方のダークチョコガナッシュは、あくまでカカオの素材で勝負しようとしていたように感じた。その志や良し。だが、素材で勝負するには、厳しいコスト要求や膨大な店舗数をまかなうための量産体制、子どもからお年寄りまでの多様な客層の嗜好など、“コンビニスイーツ”というフィールドはあまりに不利だ。

 ましてや世界のゴディバブランドを背負うのであれば、必然的に評価基準は上がる。コンビニスイーツを言い訳にしないくらい徹底するのであれば話は別だが、ノウハウも溜まっていないコラボレーション第一弾で首都圏という大消費地向けの今回の企画に、ストレートなダークチョコは少々荷が重かったのではないだろうか。

 ローソン編も合わせると、合計4品のコンビニゴディバを実際に食べてみた。個々のお菓子にはそれぞれ思うところがあるが、それはあくまで“ゴディバ”としての評価。従来のコンビニスイーツと比べると、間違いなく総じてハイレベルだった。スイーツ好きとして、このコンビニの挑戦は大変に喜ばしい。現状ではゴディバとローソン/セブンイレブンのコラボレーションだが、これに留まらず、2018年も様々な挑戦が“コンビニならではの視点で”繰り広げられることを期待したい。

 もうひとつ今回のゴディバ ザ タブレットの販売エリアについて、どうしても触れたい。特別企画だろうから「数量限定」は仕方ないし、生産地の都合もあるだろう。しかしビッグネームとの大型コラボレーションが「関東限定」という点についてはかなり不満だ。“世界ブランドをコンビニで買える”という手軽さが大きな魅力のひとつなのに、こんなところで地域格差が付いてしまうのはいかがなものか。全国のスイーツファンに代わって、苦言をひとつ呈したい。



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