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さくらの熱量チャレンジ第20回

PFN、ピクシブ、さくらが語るサービス運営の舞台裏

機械学習で線画を自動着色する「PaintsChainer」の楽しすぎる未来

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自動着色機能なんて一過性のブームだと思っていた

大谷:続いてPaintsChainerの自動着色機能を取り込んでいる「pixiv Sketch」のチームの3人です。さっそくpixiv Sketchについて教えてください。

清水:はい。われわれは「pixiv」というイラストSNSをやっていますが、より手軽に投稿できる場所として「pixiv Sketch」というサービスも展開しています。pixiv Sketch自体にお絵描き機能を持っているのですが、基本的にはどんなイラストでも投稿できます。そんな中、PaintsChainerで着色した作品が増えてきたのです。それでpixiv SketchにPaintsChainerの機能を追加したいと思い、API連携をさせてもらいサービスに取り込みました。

ピクシブ リードエンジニア プロダクトマネージャー 清水智雄氏

大谷:ピクシブとしては、PaintsChainerはどんなイメージだったんですか?

古賀:自分自身はpixiv Sketchのディレクターでありながら、pixiv Sketchを使ってイラスト描くユーザーでもあるので、最初にPaintsChainerを使ったときは「お絵かきの未来がきたー!!」って感じでした(笑)。

今でも自動着色をヘビーに利用していますし、新しい着色モデルが出るたびに、その動きに驚かされます。以前、米辻さんが「着色モデルの構築は、アーティストを育てている感じ」という表現をされていたのですが、非常にしっくりきたことを覚えています。

大谷:ピクシブさんって昔からイラスト描く人に目を向けたサービス作ってますよね。

古賀:うちの会社は、技術だけでなくプロダクトとしての完成度を重視しており、「結局、ユーザーがそれやってどこが楽しくて、使ってくれるのか?」という所まで、きちんと落としてプロダクトを作っています。その点、PaintsChainerは単純に技術だけじゃなくて、プロダクトとして非常に優れていると思います。

大谷:リードエンジニアの清水さんはどうですか?

清水:なにより、色塗りの次元を超えてます。絵を描いてくれている感じです。私は技術寄りの人間なので、「機械学習やディープラーニングを活用したら、イラストってここまで自動でできるんだー」という納得感はあったし、公開されてからのPaintsChainerのバズりぶりも知ってました。でも、そのときは一過性のブームだと思ったんです。

大谷:なるほど。自動着色のニーズがあまりないと感じたわけですね。

清水:イラスト描く人にとって、着色ってものすごく重要な部分。クリエイティビティを発露できる場面でもあるんです。ですから、多少試す人はいるかもしれないけど、自分の作品に使うユーザーなんて、そんなに多くないと思っていました。でも、PaintsChainerがリリースされて時間が経っても、多くのユーザーさんが使っているのを見て、「これはもしや新たな可能性なのでは?」と感じました。

大谷:というと?

清水:着色は確かに重要な要素なんですが、その分、めちゃくちゃ難しいんです。そして、一番時間もかかります。実際、pixiv Sketch LIVE(ライブ配信)でお絵かきを見ていても、線画より着色に多くの時間を費やしているし、着色で脱落するユーザーも多いと思います。自分の思っているとおりに塗れないとか、塗りきれなくて完成しないので、絵を描くこと自体をあきらめてしまうんです。

大谷:なんだか完成しないガンプラと同じですね。そうなると、クリエイティビティの発露以前の、楽しくない作業になってしまいますよね。

清水:そうなんです。でも、PaintsChainerが着色してくれることによって、とりあえずイラストが完成する。人に見せてもいい状態に持って行ける。ここにすごい可能性を感じたんです。

川田:もともとコンピューターって、専門性が必要なところを一気にジャンプさせてくれる役割があるじゃないですか。イラストの世界も同じですよね。紙ではなく、デジタルを使うのは、書き損じてもやり直しができるから。紙の上では描くのが難しいまっすぐな線だって、デジタルだったら簡単に描ける。Photoshopの絆創膏ツールだって、なかったらレタッチが相当大変ですよね。初めてPaintsChainer使ったときも、着色で必要なテクや知識をスキップさせてくれる技術なんだなと感じました。

ピクシブ エンジニアリングマネージャー 川田寛氏

大谷:イラスト描く人を理解しているピクシブさんらしい考え方ですね。うちの娘も確かに着色のところで挫折しているので、考え方がすばらしいです。

清水:なにより、気軽にお絵描きを楽しもうというpixiv Sketchのコンセプトにすごいマッチするので、なんとしてでもPaintsChainerの機能を取り込みたいと思いました。

教科書の端に描いた落書きが作品に

大谷:とはいえ、この2社はどうやってつながったんでしょうか?

古賀:同時期に、トップベースと現場ベースとやりとりがあったと記憶してます。現場としては、pixiv Sketchで投稿された中で、PaintsChainerで着色された作品が増えてきたという実態が先にありました。

清水:そこで現場も盛り上がって、米辻さんに会いに行きました。それが今年(2017年)の2月ですね。

大谷:具体的にはどう連携しているのですか?

清水:API経由ですね。自動着色する画像ファイルをPFNさんに送って、さくらの高火力コンピューティングで演算して、着色したものをPixiv Sketchで表示しています。Web版だけではなく、AndroidやiOS版のアプリからも利用できます。

ピクシブ、PFN、さくらの連携でクリエイティブ+機械学習の用途が広がる

川田:pixiv Sketchはお絵描きの敷居をいかに下げるかが大きなテーマなので、PaintsChainerのような技術はいち早く取り入れたいと思っていました。だから、すごくいい出会いでした。

大谷:ちなみに現状、ユーザーさんはどんな感じで使っているのですか? PCやタブレットで線画を作って、それに色を付けるようなイメージ?

清水:pixiv Sketchがメインにしている中高生とかは完全にスマートフォンですね。タブレットは少数です。

米辻:PaintsChainerユーザーの場合、紙に描いたものを撮影して、自動着色します。間にイラストアプリとかが入らない新しいフローだと思います。だから、教科書やノートの端に描いた落書きを着色しているパターンも多いですね(笑)。

清水:僕らのpixiv Sketchはそれくらいの気軽さで絵を描いて、投稿してもらいたいというコンセプト。最初は落書きですが、人に見てもらうと向上心が沸くじゃないですか。そういうのが沸くと、本格的に絵を描こうと思うし、そこのステップを用意できたというのがすごくよかったです。ユーザーさんのニーズにも合ってます。

米辻:PaintsChinerでおおまかな色を載せて、そこから細かいところを修正するという方もいます。その意味では、すでにイラスト初心者のショートカットツールというだけではないです。

清水:これ以上描かないイラストを「供養」する場合に、PaintsChainerを使う方も多いですね。せめて着色まで終わらせて、供養したいみたいなニーズがあるみたいです。

川田:PaintsChainerを見てると、今までのお絵描きツールってローカルPCでできることしかやってこなかったんだなとつくづく思います。GPUがしこたま積んであるサーバーにアクセスしてOKなんだったら、いろいろなことできるんだなあと思います……と、さくらさん的にいいコメントしておきました(笑)。

GPUの物量勝負だけじゃなく、総合力も必要になる

大谷:最近のアップデートや今後の可能性についてお話しいただきたいと思います。

米辻:PaintsChainer本体にはリアルタイムプレビューの機能が付きましたね。ヒントを与えるだけで、ダイナミックに着色が変わります。イメージしたものに近づけるために、トライ&エラーするのに便利です。期待値とずれないものができます。計算量は増えたのですが、一時期のバズりが落ち着いてきたので、やってみました。

古賀:リアルタイムプレビュー機能は、非常に素晴らしい機能です。pixiv Sketchにも早く入れたいのですが、確かに計算量がすごそうですね。とはいえ、GPUは「一度使うとやめられない」依存症になると聞きます(笑)。わかりやすい機能ではないですが、処理時間が速いということは、ユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与えるので。

ピクシブ ディレクター 古賀和樹氏

米辻:最近は弊社でもGPUを並列処理できる「ChainerMN」を展開していて、いろいろなお客様で使ってもらっています。確かに昔はGPUを1枚使って学習結果が出るまで1週間待っていられたんですけど、最近はあるならあるだけ頂戴という話になりますね(笑)。

先ほどのリアルタイムプレビューも、究極はマウスオーバーするたびに着色が変わるというやり方です。でも、ローカルである程度処理回すならともかく、ネットワーク経由でやるとさすがに死にます。ヒント1つ与えるのと、マウスムーブだとやりとりも二桁くらい違うので。

古賀:いやいや、一度やってみてもいいんじゃないですか?だって、現実世界では、絵の具も筆からたれるわけだし(笑)。

大谷:人ごとだと思ってますよね(笑)。

須藤:そこまで来るとGPUというより、総合力の世界ですね。PaintsChainerをきっかけにうちで検討を始めたのはインファレンスに最適化したインスタンスです。高火力のインスタンスって学習にかなり比重を置いているのですが、学習させないでひたすらモデルだけを回すインファレンス用途があってもよいのかなと。

米辻:あとGPUのオートスケーリングですかね。AWSやAzureでGPUのオートスケールを使うと、コスト的にちょっと厳しい。とはいえ、今のさくらさんだと1枚ずつセットアップしなければならないので、いい知見にはなりましたが、しんどいのも事実です。

大谷:最後は今後の展開についてお聞かせください。

米辻:プロの方にも使っていただけるよう処理精度や解像度を高めるという方向性はありますし、線画を自動生成するというのも案としてはあります。ただ、レイヤー機能を付けてほしいといった要望まで進めると、PhotoshopをWeb上で作るみたいな話になるので、悩みどころです。PaintsChainerはサービス指向ではありますけど、あくまでPFNのプレゼンスを上げる役割なので。

大谷:とはいえ、PFNを知らなくても、PaintsChinerは知っているみたいな人もいそうですけどね。ピクシブさんはどんな方向性でしょうか?

清水:とにかくお絵かきを簡単に楽しんでもらうのが軸なので、そこはずらさないように、PaintsChinerの進化について行きたいと思います。

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