11月16日、エクストリーム ネットワークスは米国からCEOを招いた事業戦略発表会を開催した。ブロケードコミュニケーションシステムズ(以下、ブロケード)、アバイアのネットワーク部門と統合した新生エクストリームは、ソフトウェア中心のネットワークベンダーとして生まれかわった。
買収と統合を経て、業界3位のネットワーク機器ベンダーへ
戦略説明会に登壇した米Extreme Networksのエド・マイヤコードCEOは「ブロケード、アバイアとの統合を経て、われわれはまったく違う会社に生まれかわり、新しいビジネスにチャレンジできるようになった」と高らかに宣言。新社長として数多くのネットワーク機器ベンダーの管理職を歴任してきた大野欽司氏を迎え、グローバルで5番目に大きい市場である日本での市場機会を拡大していくと説明した。
マイヤコード氏は、現在を「アクセラレートの時代」と位置づける。2020年にまでモバイルデバイスは116億台に伸び、2021年のモバイルトラフィックは49エキサバイトに達する見込み。新しい製品のほとんどはIoT対応になり、それを管理するIT担当者の4割はジェネラリストになる必要が出てくるという。こうした中、ITがビジネスに貢献するためにはシンプルで、セキュアかつインテリジェントなコネクションが重要になる。こうしたコネクションを提供すべく、エクストリームはソフトウェア主導のネットワーク(Software-Driven Network)を掲げる。
新生エクストリームは、ブロケードやアバイアとの統合を経て、数多くの資産を保有している。この中にはブロケードが買収したファウンドリーネットワークス、アバイアが買収したノーテルネットワークス、エクストリームが買収したエンテライスやゼブラの無線LAN事業なども含まれる。この結果、従来13位だったエクストリームはシスコやHPEに次ぐ業界3位に上り詰め、ジュニパーやファーウェイを抜くことになったという(Dell'Oro調べ)。製品ポートフォリオも、クラウドやデータセンター、キャンパス、アクセスなどの分野をすべて包含。マイヤコード氏は、「ポイントソリューションを提供する他社と異なり、われわれエンドツーエンドでベストなソリューションを提供している。これが大きな差別化要素だ」とアピールする。
3社の資産は「全部活かす」が、ハードウェアにはこだわらない
1996年に設立されたエクストリーム ネットワークスはルーティング処理をASICとして実装したレイヤー3スイッチの始祖として、2000年代初頭に既存のソフトウェア型ルーターを一気に駆逐した。その後、無線LANやセキュリティ製品などポートフォリオ拡大を進めたが、シスコやジュニパーなど大手ベンダー、低価格を売りにするOEM・ODMメーカーとの競争が激化し、2010年代は活動が停滞していた。
こうした中、生まれた新生エクストリームはブロケード、アバイアなどの資産をどのように活かしていくのか? その答えは「取捨選択」ではなく「全部活かす」だ。
テクノロジービジョンについて説明した米Extreme Networks エンジニアリング プロダクト・マネジメント VPのナビル・ブカーリ氏は、「われわれはベストオブブリードのテクノロジーを買収し、1つの企業としてのエキスペリエンスをお客様に提供する。3社の統合での勝者はお客様やパートナーになる」と全体戦略について説明。その上で、「3社が持っている個々の技術に投資し続ける」(ブカーリ氏)と述べ、顧客の投資保護を確実に行なっていくと明言した。
その一方で、40/100GbEやNFV、IEEE802.11ax、5Gなど、さまざまな新技術を取り込みつつ、オートメーションや管理の効率化、アナリスティック、セキュリティ、可視化など新しい価値を顧客に提供していくとアピールした。「かつてネットワーク機器はスピード、ポート密度、消費電力などが重要だった。エクストリームが支持を得たのも、ひとえにスピードを実現できたからだ。でも、市場はすでに変わっている。市場はスピードを求めているのではなく、インテリジェントな製品を求めている」とマイヤコード氏は語る。
そしてこの戦略の鍵となるのが、開発投資の95%を占めるというソフトウェアへの注力だ。低価格な製品を大量供給できるODMメーカーとの競争について答えたブカーリ氏は、「ODMとは競合しない。なぜならわれわれ自身もODMに開発を委託し、最高のハードウェアを提供できているからだ。でも、お客様は単に安いハードウェアだけを求めているだけではない。われわれはソフトウェアで価値を提供する」と述べ、単一ハードウェアプラットフォームに複数のOSを載せてていく同社の方向性を示した。
10月28日付けで日本法人であるエクストリーム ネットワークスの執行役員社長に就任した大野欽司氏は、「今や若い人はエクストリームを知らないので、ブランドも含めて、一から立ち上げていきたい。大手に牛耳られているネットワーク機器の業界に一石を投じていきたい」と抱負を語った。日本での事業戦略や最新製品の紹介は別の機会に設けられるという。