「日本企業も米国リージョンでPoCを開始してほしい」vForum 2017ラウンドテーブル
「VMware Cloud on AWS」への疑問にゲルシンガーCEOが回答
2017年11月06日 07時00分更新
10月31日、「vForum 2017」の基調講演後に開催された記者向けラウンドテーブルでは、米ヴイエムウェア CEOのパット・ゲルシンガー氏と、ヴイエムウェア日本法人 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏が取材に応じ、日本(東京リージョン)でも2018年第4四半期から提供を開始する「VMware Cloud on AWS」に対する質問に回答した。
ゲルシンガー氏は、VMware Cloud on AWSでは「パブリッククラウドとプライベートクラウドのナンバーワン企業どうしが手を組むことで、顧客にとってもゲームそのものを変えることができる基盤が整った」と述べ、マルチクラウド/ハイブリッドクラウド領域においてヴイエムウェアが「リーダー」であることを証明するものになると強調した。
「AWSとの組み合わせが重要な意味を持つ段階に入ってきている」
――VMware Cloud on AWSの手応えはどうか。
ゲルシンガー氏:ヴイエムウェアでは、およそ4年前からハイブリッドクラウドについて語ってきた。4年前の当時は、ほとんどの人がその発言を無視し、誰も注目しなかったが、現在では多くの人が高い関心を寄せるものになっている。たとえばマイクロソフトの「Azure Stack」の登場、グーグルとシスコの提携など、各クラウドベンダーもハイブリッドクラウドへの取り組みを強化し、その流れは加速しつつある。これはわれわれが言ってきたことが間違っていなかったことを示している。
そしてVMware Cloud on AWSは、ヴイエムウェアがマルチクラウドやハイブリッドクラウドの領域における「リーダー」であることを証明するものになる。VMware Cloud on AWSでは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのナンバーワン企業同士が手を組むことで、顧客にとってもゲームそのものを変えることができる基盤が整ったともいえる。現在は(各国リージョンにおける)サービス展開が始まったばかりであり、日本(東京リージョン)でのサービス開始は2018年第4四半期からとなる。
大きなワークロードを(VMware Cloud on AWSに)展開するまでにはもう少し時間がかかる。だが、それは決して遠い先の話ではない。来年の今ごろには、市場が本格的に理解を深め、いくつかの事例が出てくることになるだろう。
2年前には、エンタープライズ企業ではAWSはあまり利用されていなかったが、ここにきて、ある程度のエンタープライズ企業でAWSが利用されるようになってきた。(AWSと)ヴイエムウェアとの組み合わせが重要な意味を持つ段階に入ってきているといえる。
ベータテストでも11月中にはNSX、vSAN、vSphereなどの機能を追加
――現時点(ベータテスト段階)では、VMware Cloud on AWSにはNSXが利用できないなどの制限があるようだ。こうした制限はいつになればなくなるのか。
ゲルシンガー氏:現在、いくつかの企業がベータテストを開始している。これは9月から開始したものであり、11月中には本番稼働の機能が提供されるようになる。このサービスには、NSXやvSAN、vSphere、ライフサイクルマネジメントも統合される。四半期ごとに新たな機能を追加していく予定であり、それによって将来に向けたサービスの拡張を図っていく。
――日本市場におけるVMware Cloud on AWSの手応えはどうか。
ゲルシンガー氏:すでに、リコーおよび野村総合研究所が米国西海岸のアベイラビリティゾーン(リージョン)を利用してベータテストを開始している。今後はさらに多くの企業がPoCを開始することになるだろう。日本のアベイラビリティゾーンでサービスを開始する前に、海外のアベイラビリティゾーンを利用した導入も見込まれる。
日本法人の社長であるジョン(ロバートソン氏)には、多くの日本の企業が利用できるように商談を強化してほしいと要求している。日本のアベイラビリティゾーンでサービスを開始する際には、米国のアベイラビリティゾーンで提供しているサービスをすべて提供する。また、それまでの間にさまざまなサービス改善要求が出るだろうが、それらも反映したものになる。
ロバートソン氏:日本での手応えは非常に強いものを感じている。2016年10月にVMware Cloud on AWSを発表してから、毎日のように「いつから日本で正式なサービスが開始されるのか」という問い合わせが相次いでいた。AWSが強いところと、VMwareが強いところは、ぶつかりあう部分が少ない。この組み合わせに多くの顧客がエキサイトしている。
日本の企業2社、リコーと野村総合研究所がベータテストに参加したことで、日本でのサービス開始を待たずに、米国のアベイラビリティゾーンを使ってPoCを始め、準備してもらうという提案もやりやすくなった。日本の企業はPoCにかける時間が長いという特徴もある。今からPoCに取り組んでもらうよう、提案を加速したい。今からテストを開始してもらえば、日本市場での正式公開のタイミングで商用利用ができるようになると考えている。
――AWSを利用しているクラウドネイティブ指向のユーザーが、VMwareを選択する理由はあるのか。
ゲルシンガー氏:AWSを利用しているユーザーは、VMware Cloud on AWSによってオンプレミスに移行できるメリットも享受できる。実際に、EC2からVMware Cloudに戻した顧客もいる。それは「フレキシビリティ」というメリットがあることに気がついたからだ。
AWSユーザーがより高度化してくると、ポリシーによって動かす、つまり「どのワークロードを、どの環境で使うのが最適か」を考えるようになる。たとえば、個々のポリシーにのっとれば、規制が存在するためにオンプレミスでやりたいというワークロードも存在するし、曜日によっては一番安いところで走らせればいい、あるいはパフォーマンスを重視したいという使い方を考え、それに最適な環境で使いたいといった要求も出てくる。自分たちが設定したポリシーをしっかりと実行してもらいたいというのが顧客の要求であり、われわれは自由度を提供することが重要になってくる。VMware Cloud on AWSはそうした役割も果たすことになる。
――AWSとのパートナーシップは何がきっかけになったのか。
ゲルシンガー氏:パートナーシップを組む際に、どんなビジネス関係が構築できるかといったことや、競合他社の動向を見るということも大切だ。しかし、それ以上に大切なのは「顧客がそのパートナーシップにどれだけ期待しているのか」、そして「どんなことを期待しているのか」という点である。われわれが数百社の顧客の声を聞いた結果、最も期待されているのがAWSとのパートナーシップだった。顧客が求めていることを実現すればいいビジネスにつながる。これは黄金のルールだろう。
IoT世界におけるエッジやクラウドコアの登場で強みを発揮
――今後、ヴイエムウェアの強みはどう生かされるのか。
ゲルシンガー氏:たとえば、今は深層学習などの活用においてもクラウド中心に議論されている。さらに今後は、IoTがエッジコンピューティング化し、ローカルなインテリジェンスが求められ、これらをネットワーク化して、全体的に機能するといった時代がやってくる。その時代には、パブリッククラウドとプライベートクラウドの統合が必要となり、エッジコンピューティングやクウラドコアのコンピューティングも登場してくるだろう。
(IoTでは)デバイス、エッジ、ゲートウェイ、コアという4層構成の世界が存在し、そこから新たな時代のコンピューティング環境が構成される。だが、ここで大切なのは、必ずソフトウェアが必要になるということである。だからこそ、ヴイエムウェアという企業はこれから10年先も生き残ると考えている。全体を管理したり、セキュリティを強化したり、あらゆるものを接続したりする場面で、ソフトウェアは必ず求められる。これは車載(車載コンピューティング)分野でも同様だ。安全で、安定した環境でクルマを動かすには、ソフトウェアは重要な存在になる。
そして、ネットワークの世界でもソフトウェアが重要になる。NSXは、これからvSphereと同じぐらいに重要なものになっていくだろう。われわれはそうした分野に向けても手を打っている。そして、ますますヴイエムウェアの存在が重要になると考えている。