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電子レンジの「再パッケージング」です:

バルミューダ格好良いレンジ

2017年09月07日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 バルミューダが格好良い電子レンジを発表しました。技術的な驚きはありませんが、シンプルで、美しく、使いやすいことにこだわりました。寺尾玄社長は、量販店で売られている電子レンジが「なぜかワインレッドしかなく」「ボタンが多すぎるし」「操作方法がわからず」「お洒落でない」と感じて、開発を急がせたそうです。

BALMUDA The Range
5万4500円(ステンレス)
4万3500円(ブラック・ホワイト)
9月6日予約開始 11月出荷予定
バルミューダ
https://www.balmuda.com/jp/range/

●機能
1. 自動あたため
 ごはん、おかず、お弁当
2. 手動あたため
 1000/800/600/500W
3. 飲み物
 コーヒー、ミルク、熱かん
4. 冷凍ごはん
 1杯(150g)、2杯(300g)
5. 解凍
 重量を50g単位で設定可
6. オーブン
 100~250℃(10℃単位)
 発酵(40℃)・予熱可
 ※深さ4cmの深角皿つき

 寺尾社長によれば、心がけたのは、銅製の片手鍋、鉄製のフライパンなど、きれいな調理道具に並んでも引けをとらないデザインです。

 機能が少なく、サイズも小さいのに価格が高いのは、部品に原価がかかるためだそうです。たとえば、扉部分の継ぎ目はきれいに曲線を描き、ぴたりと閉じるようになっています。つまみの塗装などにもこだわっています。一般的な電子レンジは、こうしたディテールがおざなりになっていることがあると、社長は話していました。

継ぎ目の美しさにこだわり

つまみの塗装にこだわり

 遊び心もあります。

 スイッチを切り替えたり、つまみをひねると、アコースティックギターのような音色が鳴ります。調理が終わったときには、じゃーん、という、ギターをかき鳴らす音が聞こえます。社長の息子さんは「おとうさんすごいの作ったね!」と大興奮していたそうです。

ギターが鳴る

 おしゃれですね。

●レンジの再パッケージング

 もともとバルミューダでは炊飯器「BALMUDA The Gohan」をつくるときに、冷凍ごはんと専用電子レンジをセットで販売しようかという企画をたてていたこともありました。しかし今回の製品には、当時研究した技術は入っていません。開発していた冷凍ごはん専用レンジはとても小さく、今回の製品に採用できる技術ではなかったそうです。

 バルミューダといえば、トースター「BALMUDA The Toaster」でメチャうまいトーストを焼いていた蒸気(スチーム)技術を想像するのですが、今回はスチームオーブン機能もつけていません。なぜかというと、寺尾社長によれば、

 「世に売られているオーブンレンジ、多くは自動調理モードがついている。しかし、アクアパッツァを本当につくるか。パエリアを作るか。フライパンと火を使った方がおいしく早くできる」

 ということでした。

バルミューダ寺尾玄社長

 では、どういう製品をめざしたのか。社長によれば、電子レンジの再発明ならぬ「再パッケージング」をめざしたそうです。

 「電子レンジの普及率は90%以上。そもそもすばらしい道具なのではないかとあらためて感じた。新しいことをするのではなく、電子レンジの『再パッケージング』というのが役目ではないかと思い、直感的にわかりやすくシンプルにまとめた」

 引き算のデザインかと思いましたが、社長は「引き算ではない」と言います。なにを頼りに開発したかというと、ポップさだそうです。

 現代は多様性の時代といわれますが、社長にいわせると、結局はおなじポップなものが様々な形をとっている。そこでもっとも中央にある“スーパーポップ”と呼ぶべき価値をつくることが大事だと考えているそうです。

 社長は、モノのポップさというものは、商材や時代により、「多機能」「おいしい」「簡単」など形を変えていくものだといいます。使いやすさ、うれしさを何から感じるか、今回はそれを形と音であらわしたということでした。

格好良い写真

●イノベーションほしいな

 なるほどと思いましたが、技術の新しさがないのは、少しさみしく感じました。

 今回は、デザインがすべての製品です。日本の家電のデザインは本当にクソなので、こうした製品が出てくるのはとてもうれしいです。つまみをひねるとギター音が鳴るなど、ポエジーを感じるディテールも好きですが、コンセプトはとても趣味的です。

 同社キッチンシリーズの中では電気ケトル「BALMUDA The Pot」に近いですが、電気ケトルはコーヒーのハンドドリップにこだわって開発しようというわかりやすいコンセプトがありました。

 バルミューダのよさは、1つの本質的な機能にかける力だと感じています。

 たとえばBALMUDA The Toasterの蒸気焼きトーストはシャープの「ヘルシオ」でも作れますが、あまりにも多すぎる機能の中に埋没しています。ヘルシオのよさはスチームオーブン料理の旨さにあると感じます。その中から、「トーストがメチャうまい」というよさをシンプルな形で出せたのがバルミューダの勝因だったと思います。小さな企業がニーズの本質をつかみ、賭けをして大勝ちをしたというのが、バルミューダのダイナミックさ、おもしろみだったと個人的には感じています。

 寺尾社長は、「会社として重要なのはイノベーションじゃなくて、お客さんの喜び。はたからのイメージはそう(イノベーティブな企業)かもしれないけど、お客さんが喜んでくれるなら、技術的な新しさがなくてもいい」と言いきるひとです。

 わかるのですが、イノベーションというのはつねに“ポップ”だったと思います。ソニーのウォークマンも、アップルのiPhoneも、時代をつくってきたポップなものは市場を新たに作りだす革新的なコンセプトをもっていたと思います。格好良い道具も好きですが、バルミューダには革新性あるポップな世界観をめざしてほしいと感じます。こじんまりとまとまって、こじゃれた店で売られる上品なブランドにはなってほしくないです。

 まあカレーが食べたいからといってカレーを作ってしまうような人たちなので、小さくまとまるわけはないかと今のところたいして心配はしてないんですけど。発表会の終わりに、期待しているコーヒーメーカーは出るのでしょうかと社長に聞いてみたところ、「出ます!」と力強く答えてくれました。「今年中に?」「いや、今年はちょっと」ということだったので、早くて来年かと思うのですが、ひとつ変なやつを期待しています。


●主な仕様
容量18L
サイズ幅450×奥行き362×高さ330mm
重量約12kg
消費電力1270W(レンジ)/1130W(オーブン)
手動出力100W/500W/600W/800W
温度調節40℃/100~250℃
モード 自動あたため/手動あたため/飲み物/冷凍ごはん/解凍/オーブン


■関連サイト



書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味のカジメン。今年パパに進化する予定です。Facebookでおたより募集中

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