このページの本文へ

私たちの働き方カタログ 第3回

「やらされている感」のない企業風土を醸成するギークス

働き方は自分たちで決める!事業部オリジナル制度が生まれるカルチャー

2017年09月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第3回では、渋谷のIT企業ギークスが推進する事業部オリジナル制度と、それらを醸成する企業カルチャーの醸成についてギークスの小幡千尋氏に聞く。

ギークス 執行役員 IT人材事業本部長 小幡千尋氏

新規事業のタネにもなるユニークな事業部オリジナル制度

 フリーランスエンジニアのジョブマッチングやゲーム開発などを数多くの事業を手がけるギークスには、事業部ごとにオリジナルの制度が運用されている。

 たとえば、フリーランスと企業をマッチングするIT人材事業本部では、毎週水曜日のノー残業デイとして「ハッピーウェンズデイ」があるが、スマホ向けのゲームを開発するゲーム事業本部ではリリースのイベントが比較的少ない第3金曜日に全社員が16時に退社する「GʼFriday」が制度として用意されている。「メンバーや成果をねぎらう」「コミュニケーションの促進」「新規事業のタネ」など目的はさまざまだが、事業部ごとに内容がカスタマイズされているのがポイントだ。

 こうした制度の多くは、事業部の声から生まれたもの。IT人材事業本部で運用されている、アシストしてくれた他部門のMVPを表彰する「他部門MVP」や、新規プロジェクト発案制度「R&M(アールアンドエム)」なども、メンバーの発案だという。文化や行動様式の異なるチームに対して無理に同じ制度を当てはめるのではなく、事業部にあった制度を自ら作り出せるのがギークスのユニークな部分と言えるだろう。ギークス 執行役員 IT人材事業本部⻑の小幡千尋氏は、「弊社にはさまざまな事業があり、それぞれ世界観やゴールも異なります。それを達成するために最適な仕組みを考えてほしいと代表からも言われていました」という。

 そして、これらギークスの社内制度は新規事業のタネにもなっている。同社は、フリーランス向けの福利厚生プログラムとして「フリノベ」というサービスを展開しているが、このサービスのベースになっているのは同社の社内制度「R&M」から生まれたものだ。「R&M」とは、メンバー発案のアイデアが事業本部長直下の新規プロジェクトとなり、アイデアを形にしていく制度。フリノベプロジェクトのメンバーとして制度を運用してきたギークスの萩原愛梨氏は、「フリーランスのエンジニアとやりとりしていると、孤独感を感じる方が多いことがわかりました。だったら、ギークスがコミュニティを作り、フリーランスに対しての価値をサービスとして提供すればいい。このアイデアを実際にフリーランスが価値を感じるサービスにまで作り上げられたのは、R&Mの中でプロジェクトを進行できたからです」と語る。

ギークス 萩原愛梨氏

自ら作って運用している制度だから「やらされてる感がない」

 こうしたカルチャーはどのように醸成されたのか。もともと同社の主力事業であるIT人材事業本部は創業事業として歴史があり、安定的に成長を続けていた。そのため過去の成功法にならった手法を継承していく部分が多かった。昨年、小幡氏が部長として着任した当時は、年々上がっていく目標数値を、ノウハウと努力、工夫によって達成する組織だった。しかし、さらなる拡大が期待されている中、今までの方法だけではどうしても限界があり、成長のための変化の必要性を感じていたという。「面接した社員から『小幡さん、お願いします』と言われたんです。でも、変えるのは私じゃなくて、社員のみんな。だから、行動しやすく、意見しやすい環境を作ろうと考えました」と語る。こうした課題感から組織改革を始めたという。

 小幡氏が目指したのは課題に感じている部分を社員で自ら解決する「マーケティング思考を持った営業組織」だ。「うちのスローガンとして、『いいぞ、もっとやれ!』というのがあります。この精神をもって、未来志向で事業やサービス、組織を作っていこうとメンバーには言っています」(小幡氏)。そのため、属人化していた仕事をマニュアル化することで「仕組み」を整えつつ、アイデアを吸い上げる「仕掛け」を作り上げた。

 もちろん短期間で組織を変えるのは難しかった。事業部の共有会や月次の結果発表会、MVPの表彰など、さまざまな機会を設け、会社や事業部の方向性についてメンバーと意識あわせをしてきた。また、経営者と従業員をつなぐツールとして「スマイルスコア」(ホットエージー)を導入し、メンバーのコメントに小幡氏や部⻑がすべて答えるという涙ぐましい努力を毎日続けてきた。

 スマイルスコアに関しては、当初メンバーも懐疑的だったという。しかし、マネジメントが毎日コメントに回答し、リアルに声がけしてきた結果として、メンバーとマネジメントの信頼関係が醸成された。小幡氏は、「毎日書くのは本当に大変なんですけど、私もその子にどうやって話かければいいのか、なにに対して落ち込むのかわかってくるんです。だから、結果的には楽になります。今では恋愛相談とかも来ますよ(笑)」と語る。

 こうした努力により、主体的に問題を解決するカルチャーが生まれた。萩原氏も、「当事者意識を持って、会社や仕事を変えていくという文化が根付いていると思います 自ら発案したことを実行までできるので、改善したいとか、運用をうまく回したいとか、自分でやるようになります。だから、やらされている感がない。それが制度が形骸化しない理由だと思うんです」とメンバーとしての意見を語る。

 誰かがアイデアを出し、それがうまくいくと、ほかのメンバーも声を上げるという好循環につながった。「メンバーにはリーダシップをもって仕事をしてほしいと言い続けています。環境を作るのは、あくまで自分たちであると思ってほしいですね」と小幡氏は語る。

会社概要

2007年、ITフリーランスと企業をマッチングするIT人材事業で創業。その後、大手ゲームメーカーと協業戦略をとるゲーム事業、VRやMRなどの最新技術を活用した動画事業、ゴルフに特化したメディアやフリマアプリを運営するなど、多角的に事業展開しています。

■関連サイト


カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ