kintoneは画面がシンプルだし、なんだか育てたくなる
アプリケーションをクラウド上で開発・運用できるいわゆるPaaSの分野は、最近急成長している分野で、数多くのサービスが国内でも展開されている。その中で、なぜあえてkintoneなのか? 実はkintoneに行き着く前、谷口氏はSalesforceやG Suite、FileMaker、ZohoなどいわゆるSaaS/PaaSに当たるクラウドサービスを幅広く試してきた。この中でkintoneを選んだのは、管理画面のシンプルさがあるという。
「これはCMS選びと共通しているのですが、高機能だけど管理画面が複雑なCMSとかだと普通の方だと結局使いこなせず、できることが少なくても、やっぱりWordPressになるんです。kintoneも同様で、高機能だけど複雑なSalesforceに比べて、kintoneは機能面では足りないし、画面もある意味野暮ったい(笑)。でも、シンプルで使いやすいし、なんだか将来を見越して、育てたくなる感じなんですよね」(谷口氏)。
これはkintone界隈で取材していてつねづね感じることだが、kintoneは決して多機能と評価されているわけではない。むしろできないことも多い。これはプロダクトマネージャーの伊佐政隆氏も指摘しているところだ。しかし、PaaSという分野ではこの「強すぎないプロダクト」が開発者たちの「育てたい感」を喚起しているようだ。
「サイボウズの社風自体も、ほのぼのしていいですよね。でも、競合の外資はお試しを申し込むと、次の日から電話がガンガンかかってきて、ちょっと引くんです(笑)」(谷口氏)
また、谷口氏のクライアントである中小企業は、サイボウズ Officeを使っている会社も多いため、kintoneの導入もあまり障壁はないという。クラウドに対する抵抗感も「グーグルは心配だけど、サイボウズであれば大丈夫」と答えるユーザーが多く、ブランドとして確立しているようだ。
kintoneで全部やろうとは考えてない Excelとも連携する
Web界隈の人である谷口氏の想定するkintoneの使い方は「半バックエンド」。kintoneはあくまで入力用のインターフェイス+データベースエンジンとして用い、複雑なことは別のアプリにやらせるという方法だ。
1つの方法はWordPressとの同期。WP-Cronを使ってバッチ的にkintoneからデータを取り込んだり、kintoneのWebhook機能を用いてWordPressにリアルタイムにデータを反映させるといった方法が考えられるという。現在は自社サイトで試して、そのノウハウをQiitaに載せているが、今後は案件でも使ってみたいという。
もう1つはExcelとの連携だ。たとえば、kintoneに入力したデータをカスタムビューを使って、CSV形式で出力。それをExcelで開いて、集計するという方法だ。今後はExcelファイルを開いた段階でkintoneからデータを収集できるようにしてみたいという。
「お客様が作ったExcelのタイムカードを見ると、月を入れると自動的にカレンダーができたり、残業時間もボタン一発で集計できたりして、とにかくすごいんですよ(笑)。これをkintoneでイチから作るのはけっこう大変です。だったら、kintoneからデータ出力したシートを作って、vlookupで取り込んでしまったほうが簡単。お客様も今までのExcelがそのまま使えるということで、けっこう喜んでくれます。だから必ずしも全部をkintoneでやろうとは考えてないですね」(谷口氏)
kintoneというと、ExcelやAccessからのリプレース案件が多いが、谷口氏の考え方はとても現実的。特にExcelは集計や印刷などの処理が得意で、利用者も多い。日本の中小企業はExcelで回っていると言っても過言ではないだろう。であれば、データソースはkintoneでも、集計処理はExcelに任せた方がよいというわけだ。
新しい形のWeb制作会社になるため、いっしょに連れて行くのはkintone
こうしたWebシステム開発の領域に谷口氏が活路を見いだすのは、Web制作現場が大きな変革期にさしかかってきているからだ。会社の顔、サービスの顔としてのWebサイトから、顧客や取引先からのデータの出入り口、コミュニケーションのハブとなる新しいWebシステムへ。このビジネスの変革に連れて行くのは、もはや従来のWeb制作ではないという。
「これまで、WebサイトはHTML/CSSを熟知した制作会社や、クリエイターに依頼をして制作するのが当たり前でした。しかし、現在では自分でWebサイトを作れる便利なツールも次々に登場しており、そろそろわれわれWeb制作会社も次のステージに行かなければならないと思っていました。Webサイトはあくまでおまけで、今後はサイトに載せるデータに価値を出していく必要があります」(谷口氏)。
決してSIをやるつもりはないし、Web制作会社の看板を下ろすつもりも今のところない。しかし、単にサイトを作るだけの仕事では生き残るのは難しいという認識の元、kintoneなどを用いて中小企業をサポートしていくというのが、谷口氏の考えていることだ。
「たとえば、現在開発を手がけているクライアントも、ご相談を受けてみるとデータはすべてばらばら。イベントごとのExcelファイルやWebサイトの実績などが情報としてあるだけで、データの連携ができませんでした。今はこれをkintoneにまとめているところ。あと、最近導入が増えているのはNPOですね。NPOだと安価に使えるのに加えて、kintoneはもともと開発コストがかからないので、少ない予算でも、なんとかWebサイトのコストを捻出できますね」(谷口氏)
エバンジェリストとして「Web界隈にkintoneを広める」という役割を担う谷口氏。SIerや受託開発出身者の多いkintoneパートナーの中では異色の存在だが、新しいWebビジネスを生み出す存在として、今後存在感を高めていくことになるだろう。
(提供:サイボウズ)
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