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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第415回

7FFプロセスは今年後半、7FF+は2019年に量産 TSMC 半導体ロードマップ

2017年07月10日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 前回まで各社の製品ロードマップのアップデートをお届けしたが、ついでに先端プロセスに関してもいろいろ話題が出てきたので、これをファウンダリー別にまとめておこう。今回は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー (TSMC)の話題だ。

世界最大の半導体製造ファウンダリーであるTSMC

 そのTSMC、報道関係者向けにはほとんど情報を開示しないのだが、今年5月に米国でテクノロジー・シンポジウムを開催した。このシンポジウムにCadence社が協賛している関係で、同社のブログにその概要が掲載されている(その1)(その2)。この情報を基に概略を紹介していく。

10FFプロセスの大口顧客はApple
iPhone 8に搭載されるA11チップを全力で製造中

 まずロードマップ概観である。下の画像は昨年10月のものだが、ハイパフォーマンス向けを見ると28HP/28HPMを経て、ごく一部の製品を除くと20SoCをスキップして16FF+に移行。そして10FFを経て2017年中には7FFのRisk Production(リスクありの先行生産)にこぎつける、というものだった。

ARM Technical Conference 2016におけるTSMCのセッションより。それぞれの左端がRisk Production開始の時期(右端には意味はなし)だそうである

 このうち昨年の段階ですでに28HP/28HPM~16FF+は量産に入っており、10FFのRisk Productionも始まっていたのは事実である。あとは今年中に7FFのRisk Productionに入れるかどうか、というあたりが見所と思われていた。

 そこから半年たった今年5月におけるロードマップは、以下のようになる。

2017年のTSMCロードマップ
ハイパフォーマンス 10FF→7FF→7FF+
メインストリーム 16FFC→12FFC→7FFC
ローパワー/IoT 55ULP/28HPC+→28ULP→22ULP→12FFC/ULP

 ここでハイパフォーマンス向けとはハイエンドスマートフォン、HPC、Automotive、Gameと定義されており、CPUやGPU向けプロセスということになる。メインストリームは数が一番出るメインストリームスマートフォンや自動車関連向け、ローパワー/IoTはそのものズバリで、組み込み機器向けということになる。

 CPUやGPU向けは「公式には」現在の16FF+の次に10FFが来ることになっており、TSMCによればProduction Qualification(量産向けの品質確認)が完了。すでに量産そのものも開始されており、同社のGigaFab 12とGigaFab 15で今年後半に本格量産が開始される予定だ。

Fab 12a

Fab 15

 TSMCの計画では、今年中に10FFで製造するウェハーを40万枚出荷予定としている。その最大の顧客がAppleなのも間違いないと思われ、同社のiPhone 8に搭載されるという噂のA11チップの製造が全力で開始されているはずだ。

 ただAppleのA11を除くと、多くの顧客がこの10FFをスキップし、次の7nmに向かおうとしている。比較的早くからこれを表明したのがXilinxとAppliedMicro(現MACOM)であるが、GPUメーカーも同様の判断をしているらしい。

 TSMCの公式発表では、10FFは16FF+と比較して消費電力が40%削減され、性能が20%向上、エリアサイズを50%削減できるとしているが、GPUベンダーにとってはこの数字では十分ではない、としている。

 もっともこのあたりはターゲットの市場次第であって、例えばARMなどは同社のCPU IPとGPU IPのPOPを10FF向けに提供する予定なようだ。逆に言えばモバイル向けには10FFは悪くない(それ以外は悪い)というのがもっぱらの評判で、ちょうど同社の20SoCと同じような運命を辿りそうである。

 それもあってか、TSMC自身が10nmについては“Long-lived node”とは表現していない。要するに長期間使われるプロセスと考えてはいないということだ。同社は後述する12FFCが“Long-lived node”になるだろう、としている。

 したがって、16FF+を使ってモバイル向け以外の製品を作るユーザーは、次期製品のプロセスをどうするかについて悩むことになった。インテルが14+や14++、あるいはGlobalFoundriesが14LPP+をリリースする理由がそこである。

 インテルは10nmがやや後ろに押していることもあり、そこまでのつなぎとして14nm世代を改良した14+と、さらに14++もリリースすることを明らかにしている。GlobalFoundriesも同じで、同社は10nmはスキップするので、次は7nmになる。そこまで待てない顧客(主にAMD)向けに、14LPP+を提供する。

 ちなみにサムスンは10nmを無事に立ち上げて2016年中から量産を開始しており、すでに10nmで製造されたSoCが搭載されたスマートフォンが市場に出ている状態である。同社は10nmをやはりLong-lived nodeと位置づけており、14LPPの改良版などを手がける予定はない。

 ではTSMCは? というと、本来は16FF+の次に10FFが来るわけだが、立ち上がりが予想よりやや遅れた(とはいってもAppleのA11の製造には間に合ったようだが)うえ、多くの顧客が10FFを拒否している。その最右翼がNVIDIAであった。

 かくしてNVIDIAは、連載413回で説明した通り、16FF++とでも言うべき独自プロセス(NVIDIAの表現では12FFN)を自社製品に使うことをTSMCに認めさせるに至った。

 これはNVIDIAのような大口顧客だからこそ可能な技でもある。NVIDIAは昨今のAIブームのおかげで売上も好調であり、GPGPU向けに数量はともかくウェハー数としてはかなりの量をTSMCから購入している。

 とくにVoltaのGV100コアは、800mm2ものダイであり、歩留まりを考えると、今年必要とするウェハーだけで1万枚を超えるかもしれない。もしもGV100に続きGV104やそのローエンドのGV106などまで使うと、NVIDIA一社だけで10万枚くらいのウェハーを購入することになるだろう。

 これだけの枚数を購入してくれるのならば、それはカスタムプロセスを作っても採算が合うだろう。逆に言えば現時点でもまだTSMCは12FFNを自社のロードマップに載せておらず、これはあくまでNVIDIA向けの特注ということになる。

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