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シンガポールに「エクスペディア・イノベーション・ラボ」を開設

オンライン旅行会社「エクスペディア」は旅行者行動と心理をデータ化

2017年04月13日 15時00分更新

文● 佐藤ポン 編集●南田ゴウ/ASCII編集部

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 世界最大のオンライン旅行会社「エクスペディア(Expedia)」が、アジア初となる研究施設「エクスペディア・イノベーション・ラボ」をシンガポールに開設した。オープン初日の2017年4月7日にはアジア各国のメディアを招待してプレスカンファレンスを開催。記者会見では研究のデモンストレーションや研究施設を開設した理由、さらに同社が蓄積したデータから導き出された現在の旅行事情などを紹介した。

エクスペディア グループCEOのDara Khosrowshahi氏(中央)、エクスペディア アジアCEOのJonty Neal氏(右から3人目)、シニアバイスプレジデントのArthur Chapin氏(画像左)、バイスプレジデントのMieke de Schepper氏(左から4人目)、バイスプレジデントのJames Marshall氏(左から3人目)、エクスペディア ジャパン代表の石井恵三氏(画像右)

オフィスの窓からはシンガポールの美しい景色が見られる

屋上にプールがあることで有名な「マリーナ・ベイ・サンズ」もビルの隙間から見られた

エクスペディアCEOのDara Khosrowshahi氏

 エクスペディア グループCEOのDara Khosrowshahi氏(以下ダラ氏)は「我々はユーザーが旅行で体験した情報を、すべてデータ化し続けている」と語る。

 エクスペディアは世界500社以上の航空会社と3万都市以上のホテルを取り扱っており、ツアーの組み合わせはなんと100億通り以上。実際に同社のサイトで適当な旅行先を検索すると、瞬時にいくつものプランを提案してくれる。

 ダラ氏は、これらのツアーは単純な検索結果として表示させているのではなく「科学的根拠に基づき、顧客に合わせた内容を提示している」と解説する。この言葉を裏付けるように、同社はこれまで技術開発に12億ドル、マーケティングに43億ドルも投資している。今回開設した「エクスペディア・イノベーション・ラボ」も、この投資のひとつだ。

エクスペディアは35ヵ国語に対応し、240ヵ国で閲覧されている超巨大な旅行サイトだ

エクスペディアのサイトで「シンガポール、1週間、ホテル有り」で検索してみた。このようにずらっと検索結果が表示される

ユーザーの行動心理を“丸裸にする”施設
「エクスペディア・イノベーション・ラボ」

Arthur Chapin氏がエクスペディア・イノベーション・ラボを解説

 エクスペディアアジア本社(シンガポール)に開設した「エクスペディア・イノベーション・ラボ」は、2つの部屋からなる施設だ。ひとつはPCが置いてある小部屋で、被験者がPCを使って同社のサイトで旅行のプランを検索するための部屋。もう一方の部屋はモニタリングルームだ。エクスペディアのスタッフが被験者の行動を見ながら、指示を出したりデータの測定を行なう。

被験者がPCを操作する部屋。自宅のPCと同じ感覚で使えるように、落ち着いた雰囲気になっていた

被験者の顔に取り付けるセンサー

 デモンストレーションでは、まず被験者にはデータ測定装置が装着された。「筋電図記録技術(EMG)」と呼ばれる装置は5つのセンサーから構成されている。2つのセンサーを目の上、3つのセンサーを頬に付けると人間の「楽しい・つまらない」といった感情がリアルタイムでわかるそうだ。これに視線追従のセンサーを組み合わせると、サイトのどこを見たときに、どのような感情を抱いたかを測定できるとのこと。

モニタリングルームでは、被験者が見ているPC画面を確認できる。

 実験が始まると、まず試験官は被験者に「犬の画像を検索してください」と語りかけた。被験者は言われた通りに検索すると、ディスプレーにたくさんの犬の写真が表示される。するとその瞬間、モニタリングルームの画面には「楽しい感情」を示すグラフが大きく動いた。同時に被験者の視線を示す位置が正確に表示され、いま被験者がどの画像を見ているかが手に取るようにわかる。

被験者は犬好きなのだろうか。犬の写真を見た瞬間、楽しい感情を示す緑色のグラフが動いた。コレではウソがつけない!

 見学していた各国の取材陣が精度の高さに驚いているなか、余興が終わっていよいよ本番スタート。試験官は「エクスペディアのサイトを開いてください」と指示を出した。被験者がサイトを開くと、先程の犬と同じように、画面のどこを見ているかがピンポイントに表示される。被験者が一文字ずつしっかり読んでいる文章と、ザザッと読み飛ばしている文章。何度も見てしまう写真とほとんど見ていない写真などが、おもしろいようにわかる。

 実験の最中、被験者があるホテルの項目に目が止まった。写真と説明文をじっくり何度も読んでいたので、どうやらこのホテルに興味が沸いたに違いない。このとき印象的だったのは試験官の対応だ。実験中の試験官は常時モニタリング画面を注視しており、感情の変化を示すグラフが動くたびに「いまどう思ったの?」と問いかけていた。被験者のクチから「建物が美しい」や「料金が高い」「料理が美味しそう」など、さまざまな感想をしっかり聞き取ることで、データの確度を上げている。

興味がないときはグラフが動かない

あるホテルを見た瞬間、緑のグラフが大幅に動いた。試験官はすかさず「どこが気に入ったのか?」と聞いていた

 当然、試験中のモニターとすべてのやり取りは記録されており、後で解析班がじっくり見られるシステムになっている。「AとBの写真はどちらがよいか?」や「文章はこの位置で読みやすいのか?」「検索結果の表示方法は?」など、すべて科学的根拠に基いてサイトが構築される。エクスペディアのサイトに訪れたすべての客が、快適に感じられるように日々改善を行なっているそうだ。

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