このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

新製品「Workplace Hub」にかけるコニカミノルタ山名社長の思い

日本の製造業はハードのコモディディ化と正対しなくてはいけない

2017年04月10日 09時00分更新

文● 五味明子 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ーー具体的に、Workplace Hubはどんな現場で利用されると想定していらっしゃいますか。

  製造業の現場(工場)やヘルスケア、あとはバックオフィスが最初は中心になると思います。ただし、Workplaceは昔の複合機のように単品でモノを導入して終わり、という性質の製品ではありません。モノというよりもサービスの観点から開発した製品であり、IoTエッジとして現場の課題解決を行うためのソリューションです。

 業種をとくに限定するつもりはなく、どんなオフィスにもフィットするのではないでしょうか。複合機の姿をしていますが、基本的にはエッジデバイスであり、我々が提供するサービスを使ってもらうための“ハブ”として位置づけています。ただし、コニカミノルタが得意とする製造業やヘルスケアなどに特化した製品ラインナップ(Workplace Hub for Healthcareなど)を別に提供していくことは検討しています。

 我々はWorkplace Hubを“(オフィスの)内側を司るデバイス”として位置づけています。既存の複合機の使い方にとらわれない、さまざまなユースケースが考えられると期待しています。(ゼロックスなど)競合他社にも“IoTデバイス”と銘打ったこんな製品はありませんから。

世界中の企業のデジタライゼーションを支援していく

ーーWorkplace Hub開発のバックグラウンドについてもう少しお聞かせください。今回、この製品の発表を日本ではなく、ベルリンで行われたのはなぜでしょうか。ハノーバーで開催された「CeBit 2017」でもWorkplace Hubを参考出展したとうかがっていますが、グローバルファーストで開発した製品という位置付けでよろしいでしょうか。

 コニカミノルタの売上は8割が海外です。さらに欧州においては複合機のシェアトップを維持しています。今回の製品は日本だけでなく、世界中で起こっているデジタライゼーション、そしてワークスタイルの変化に対応するために開発したものであり、グローバルカンパニーとして、世界に向けてまず発表するというのは自然な流れだと思っています。

 Workplace Hubは3年前から英ロンドンのチームを拠点に開発を開始しました。ソフト開発はチェコの技術者チームが中心になって行っています。製品全体の開発を統括したのは欧州でビジネスイノベーションとR&Dを統括するバイズプレジデント兼ディレクターのデニス・カリーで、彼は2014年にコニカミノルタに入社したのですが、以前はNATOのCTO(最高技術責任者)としても活躍していた経歴をもちます。デニスが中心となって、私たちが作りたいと願っていたIoTデバイスを、非常に自然なかたちで実現してくれました。

NATOのCTOの経歴を持つコニカミノルタ バイズプレジデント兼ディレクターのデニス・

ーーNATOから人材をスカウトというのは、あまり従来のコニカミノルタのイメージとは一致しませんね。

 キーノートでも申し上げたとおり、デジタライゼーションは世界中のあらゆる企業が向き合うべき課題であり、コニカミノルタもまた同様です。我々もまた、デジタルカンパニーとして生まれ変わらなければならない。Workplace Hubは我々のここ数年のそうした変化への思いを集約した製品でもあります。

 デニスのような人材をスカウトしたのも、ロンドンやチェコを拠点にしたのも、また、中堅中小企業に強い企業の買収や事業譲受を積極的に進めてきたのも、我々自身がシステムプロバイダーにならなければならないという使命感からきています。

日本の製造業の強みはコアよりもエッジ

ーー顧客のデジタライゼーションを支援する以上、コニカミノルタ自身が変化する必要があるというのはとても理解できます。

 ハードウェアのコモデティ化という事態は、日本の製造業の人間としてずっと向き合わなければいけない課題だと思ってきました。コモデティ化が進めば進むほど、生産拠点は安いところへと流れます。そうなったとき、日本の製造業はどうなるのか。私は製造業の人間として、日本のモノづくりの力を強く信じています。

 その一方で、このままハード側だけの考えでモノを作っていっても衰退するのは明らかです。しかし、クラウドやAIといったソフトの世界でGoogleやAmazon、IBMなどに正面からぶつかっても勝てるわけがありません。

 ならば日本の製造業の会社としてどんな解決策を示すべきか。私は日本の企業はコアよりもエッジのほうに長けていると思っています。IoTデバイスをエッジとして配置し、世の中のコア(パブリッククラウドなど)とつながっていくことで、あたらしいサービスが誕生し、今までにないエコシステムが形成されることも期待できます。日本の企業には日本の企業なりの得意な分野があり、“エッジとなるIoT”はまさに日本が主導できる現場の課題解決ではないでしょうか。

* * *

 パッションドリブンな人-----山名社長の印象をひとことで言うならばそう表現できるかもしれない。今回、国内外のコニカミノルタの関係者や欧州のアナリストに話を聞く機会があったが、山名社長の強いリーダーシップはグローバルでも非常に高く評価されている。カリー氏のような異例のキャリアの人材を抜擢したのも、そうしたリーダーシップのあらわれだろう。

「Konica Minolta Spotlight Live」のキーノートで講演する山名社長

 そのベースになっているのは、時代の変化に対する強い危機感だろう。デジタルカンパニーとして変化にキャッチアップしなければ、自社も顧客も生き残れない。日本の製造業のトップとして、そしてグローバル企業のCEOとして、世界と日本を同時に見ながら、同社なりのデジタライゼーションへのアプローチを探ってきた。そのマイルストーンがWorkplace Hubという製品に結実したといえる。

 Workplace Hubは、もうカメラの会社ではなくなったコニカミノルタが、同社のスローガン「Giving Shape to Ideas」にある通り、顧客と共に新しい価値の創造を目指すことを内外に示した製品であり、同時に、日本の製造業としての“意地”を見せた製品でもある。

 変化への対応が遅さや生産性の低さを批判されがちな日本企業だが、コニカミノルタが投げたWorkplace Hubというボールを、今度は国内企業がどう受けとめるのか。Workplace Hubは3月にドイツ・ハノーバーで開催された「CeBit 2017」でも参考出展され、欧州のユーザ企業を中心に好評を博していたが、果たして日本市場ではどうなのか。4月にはあらためて同製品のローンチイベントも行われる。国内の中堅中小企業の反応に関しても、あらたて注視していきたい。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ