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ブランドじゃなくていい、中国の5000円Bluetoothヘッドフォンが快適

2017年03月11日 12時00分更新

文● 四本淑三

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オンイヤー型に匹敵する軽さに驚き

 M04Sのヘッドフォンとしての形式は、イヤーパッドが耳を覆うオーバーイヤー型です。この価格帯のヘッドフォンは、ハウジングが小さく携帯性を重視したオンイヤー型が主流なので、ここも差別化のポイント。メリットはいくつかあります。

 まずオンイヤー型より大口径のドライバーユニットが使えるので、音質的にはローエンドに余裕があります。M04Sは密閉型ハウジングに40mmドライバーを内蔵していますが、オンイヤー型のドライバーはおおむね30mm程度です。

 オーバーイヤー型は装着快適性の点でも有利です。オンイヤー型は装着安定性と遮音性を確保するために、イヤーパッドを耳に抑え付ける「側圧」が高くなりがち。これは長時間の使用では耳が痛くなることもあります。

 ただし、オーバーイヤー型にもデメリットはあります。それはヘッドフォンが大きく重くなりがちなこと。Bluetooth対応機種であれば、300g近くあるのが当たり前です。それに対してオンイヤー型は軽い。たとえば同価格帯のBluetooth対応機種の例では、JBLの「T450BT」が155gしかありません。

 しかしM04Sは、オーバーイヤー型でありながら、オンイヤー型並みに軽いのが特徴です。わずか180gしかありません。

  その代わりM04Sは、ハウジングを回転させるスイベル機構は持ちますが、それ以上の折りたたみ機構を持ちません。携帯時の大きさは諦めましょう。

軽量で快適、音は低域寄り

 音のクオリティーも悪くありません。まずBluetoothに付き物の再生音の遅延はごくわずかで、動画視聴時にも画面と音声のズレは感じられません。

 イヤーパッドは低反発ウレタンと柔らかい合成皮革を使ったもので、オーバーイヤー型としては軽いこともあって、装着快適性は優秀。

 ただし、ハウジングを透過して中音域の成分が外に漏れやすい。密閉型として相応の遮音性も確保されていますが、公衆環境ではボリュームに気を使う必要がありそうです。

 再生音の特性は、はっきりと低域寄りですが、この価格帯の日本のメーカーの製品のようなやり過ぎ感はありません。TVドラマや映画の視聴にも向いたシアターシステム的な特性で、音楽も聴く、動画も観るというユーザーにはオールマイティーに使えるはず。

 うるさいことを言えば、高域はトップに一枚ベールがかかったようで、ワイドレンジでフラットに聴かせるタイプを期待すると裏切られます。たとえばYouTubeの動画にありがちな、カメラの内蔵マイクに向かってクロースで録られた人の声などは、中低域の成分が強すぎ、聴きづらく感じることも。競合機種に比べて再生音に余裕があるとは言え、そこがちょっと惜しい。

 Bluetoothの部分で特にアクティブな補正もしていないようで、有線接続でも音は大きく変わりません。ただ、高域の特性とチャンネルセパレーションが若干改善されて音場が広く感じられるので、電池切れ以外の状況でも、有線で使う意味はあります。

ブランドで選ぶ時代は終わった

 Bluetoothのイヤフォン・ヘッドフォンは、いままでのようなあれば便利なものから、なければ困るものになってきた。そうした実用品に求められるのは、我慢せずに使える性能と安さです。その点で、大手メーカーのラインナップは、まだまだ薄い。その隙を縫って出てきたのが、OEMで力をつけてきた中国のファクトリーブランドというわけでしょう。

 従来ならブランド力の弱さと販路が壁になったはずですが、Amazonのような通販サイトではスペックが高く安価であればひとまず目に止まり、性能が確保されていれば評価の対象になる。そして、安いけどイケてるというキャッチーな評判は、ネットで一瞬の内に広がるわけです。

 M04Sの魅力は、動画視聴を前提にしたBluetooth周りのスペックと、低域に重点を置いたわかりやすいチューニング、そして軽いオーバーイヤー型の快適性です。それで5000円台という価格ですから、クチコミで人気が出るのも当然かもしれません。

 大手メーカーの反撃や、さらなるコンペチターの登場にも期待しています。

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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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