なぜ高性能なルーターが必要なのか
動画を楽しんでいるときに一番困るのが、読み込み待ちで再生がストップしてしまうこと。絶体絶命のピンチをどう切り抜けるか、といった手に汗握るシーンなのに、主人公が行動を起こした瞬間、読み込みで画面が止まってしまう……なんてことはありがちだ。一気に現実に引き戻されてしまい、視聴のモチベーションが下がってしまった経験のある人も多いだろう。
こういった読み込み待ちで動画再生が途切れてしまう原因はいくつかあるが、代表的なものが“インターネットの回線速度の低下”だ。とくに夜間は利用者が増えて回線が込み合うだけに、契約しているプロバイダーによっては速度低下が激しく、光回線なのに実速度が数Mbpsまで落ち込むといったことも珍しくない。こればかりはプロバイダー側の問題なので、ユーザーとしてできることは、プロバイダー変更の手続きぐらいとなる。
もうひとつの代表的な原因としてあげられるのが、ローカルエリアネットワーク、つまりLAN速度の低下だ。普段何気なく使っているNASや、HDDレコーダーに録画した番組をPCやスマホで視聴する、といった用途では膨大な通信が発生し、速度が低下しやすくなる。とくに無線LANは、一般的に接続数が増えるほど速度が落ちるので、PCやスマホ、タブレットなど複数の機器を使っているなら注意が必要だ。
こういった速度低下が起こりにくい無線LANルーターが欲しければ、なるべく高速な製品を選ぶというのが基本だろう。最大433Mbpsのモデルよりも867Mbpsモデル、867Mbpsよりも1300Mbps以上のモデルのほうが速度低下が抑えられ、より快適になりやすい。また、ルーター内部の処理速度も重要だ。いくら無線LANの速度が規格上高速でも、データ処理速度が遅ければさばき切れなくなり、遅延や速度低下が起こってしまう。デュアルコアCPUや大容量のメモリーを搭載しているといったように、スペックが高いものを選ぶと、処理速度が速い場合が多い。もし実効スループットが表記されているのであれば、この値が高いものを選ぶといい。
実際の通信速度は環境しだいとはいえ、ルーターの違いによる効果は気になるところ。ということで、実際に試してみよう。ルーターは、通信速度が最大1300MbpsでデュアルコアCPUを採用したASUSの『RT-AC68U』を用意。5GHzと2.4GHzのデュアルバンドに対応し、デバイスの位置を特定して電波を送信するビームフォーミング機能『AiRadar』、トレンドマイクロのセキュリティー技術『AiProtection』などを採用した高機能モデルだ。一般的なビームフォーミングはデバイス側が対応する必要があるが、AiRadarは接続デバイスの対応/非対応を問わず使えるため、あらゆる機器との通信が安定するのも特徴となっている。
比較対象としては、最大867Mbpsの高機能モデル(以下『A』と呼ぶ)、最大1300Mbpsのシングルコア高速モデル(以下『B』)の2製品を用意した。インターネット接続速度の計測には定番の『OOKLA SPEEDTEST』を使用し、ダウンロード速度で比較している。検証用のノートPCは、最大887Mbpsの接続に対応した『ASUS ZenBook 3 UX390UA』だ。