貧乏がなんだ。いまどきインターネットを駆使すれば、現地に行かなくても大体のことはわかるし、飛行機の乾燥した空気で風邪をひくこともない。お金もかからないし健康にだっていい。ありがとうTwitterとインスタとYouTube!
でも現地に行くとスティービー・ワンダーなんかが普通に歩いていて、運が良ければ「Superstition」の演奏が見られたりするらしいけど。
NAMMショーの会場で「Superstition」を演奏したGrayson Erhard氏。演奏が終わるとそれを聴いていた本人がやってきてセッションになったという動画。アメリカってすごいなー |
そんな揺れ動く気持ちでお届けするNAMM2017プレビュー記事、正々堂々の第2回目です(1回目はこちら)。今回は、半年前に完成した現物を見せてもらって驚いた、この最古にして最新の楽器から。
浅草発の最新型オンド・マルトノ「ONDOMO」
Finally! ondomo debut at NAMM.Hall D Booth 2004. #NAMM #ondesmartenot pic.twitter.com/FmJ8EszUUN
— Ondomo (@Ondomo_Jp) 2017年1月19日
浅草電子楽器製作所「ASADEN」の量産型オンド・マルトノ「ONDOMO」が、ついにNAMMショーに登場! 日本にオンド・マルトノを作る変わり者がいるというので、浅草へ取材に出かけたのが5年前。あの尾茂なおゆきさんの、永年に渡る研究の成果がこれです。
最初期の電子楽器であるオンド・マルトノは、テルミンと同様、2つの高周波発振器の周波数の差から、可聴帯域のピッチを得る仕組み。テルミンと違って鍵盤を持ち、音程が明示されているため、演奏者は音程を取りやすい。半面、発振器のピッチも明示されたところに合っていなければならないので、チューニングが大変。テルミンを触ったことのある方ならご存知のとおり、電源をいれるたび、置き場所を変えるたびに音程が変わってしまうのは、オンド・マルトノも同じ。
その厄介なピッチ制御をデジタル化して安定させ、アナログと遜色のない音色と操作性を得たことが、尾茂さんの膨大な試行錯誤の成果であり、ONDOMOの到達点なわけです。そしてONDOMOの画期的な部分はもうひとつ、ミニ鍵盤を使ったスピーカー内蔵のモバイルタイプとして設計された点です。
足を外し、フタを閉じれば旅行カバンのようになり、片手で楽に持ち運べる構造。にも関わらず、リュバン(グリッサンド演奏のためのリング付きリボン)とトゥシュ(音量制御ボタン)、そして鍵盤を横方向に揺らすことでビブラートがかかるといった、オンド・マルトノの演奏に関わる基本部分はすべて継承。楽器のデザインとしても、実際の工作や完成度も極めて高いレベルにあります。
これも尾茂さんが、かつてF3のコンストラクターを運営し、自分自身でレーシングマシンのパーツを作って組み立てていた経験からでしょう。このONDOMOにもさまざまなところに凝った作り込みが見られ、100台生産するだけの部品を加工・調達して、日々浅草で組み立てられています。しかし100台できあがったらこのバージョンはおしまい。対面販売が基本ということなので、興味のある方はウェブからメールでコンタクトを。価格はオーダーメイドのギター程度。その手工芸品に近い仕上がりから言って、信じられないくらいの価格です。