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[短期集中連載]AIとディープラーニングが起こす"知能革命" 第2回

「もしドラ」仕掛け人・加藤貞顕×人工知能プログラマー清水亮 徹底対談

「創作する人工知能」を誕生させるために必要な条件

2017年02月07日 09時00分更新

文● イトー / Tamotsu Ito

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SF映画のように「人が恋するほどの人工知能」を作るために必要なモノ

加藤 ぼくはやっぱり、究極的には、コンピュータ自体がクリエイティブをするようになるかに興味があるんですよ。
 たとえば、清水さんも取材とかで散々聞かれてると思うんですけど、人工知能が意思のようなものを持つようになるのかどうか。『her/世界でひとつの彼女』って人工知能に恋するSF映画があるじゃないですか。あんな存在って、つくれるんでしょうか。

清水 「人工無能」をその定義に含めていいんだったら、そのうちできるんじゃない?って思ってますよ。最終的にですけどね。

加藤 「人工無能」を含めてっていうのは?

清水 つまり人工無能っていうのは、確信犯的に嘘をついてるわけですよ。

加藤 そうですね。要するに、ちょっといい感じのフレーズを入れておくと、人間が勝手にいい感じに受け取るっていうのが人工無能ですよね。かなり昔からある。

清水 そうです。「そういうものだ」って受け入れていいんだったら、結構いい線はいけると思っていて。

加藤 逆に純粋な計算だけだと、そのレベルを実現するのは難しい?

清水 計算だけだったら、それは無理だと思います。なぜかというと、作家や映画監督が描くキャラクターや人物像って、その人が抱える「コンプレックス」や「憧れ」が源泉になってることが少なくないんですよ。好きすぎてうまく描けなかったり、それがかえって作家の味になったりもする。
 たとえば作家には「羞恥心」っていう感情が重要なんだ、という議論があったりします。では、羞恥心はどうやったら育まれると思います?

加藤 身体性を持って、他者がいる中で生活しなきゃいけないかもなぁ……。

清水 そう。しかも、体が成長していく中でいろんな経験を積むっていうことを成し遂げて、初めて人というのは「羞恥心」を獲得できるわけですよ。

――それって、コンピューターにとってはめちゃくちゃ難しいことですよね。

清水 だから、映画「her」の例に戻ると、インチキをしないで人工知能にガチの恋愛をさせるには、それこそ「よくわかる人工知能」にご出演いただいた慶應義塾大学・満倉先生の言う「AIにホルモンの概念を持ち込む構想」のように、疑似体験的な経験がないと無理だということになる。
 とすれば、次の段階のAIに必要なことって、バイオテクノロジーとか体のほうのテクノロジーが必要になっちゃうんですよね。

加藤 なるほど。「よくわかる人工知能」の中で、Googleの研究成果で、映画の字幕を読ませるだけで、会話AIができてしまうエピソードがあるじゃないですか。

清水 あれは、どっちかというと人工無能に近いんですよね。

加藤 いい感じのやり取りをする、反射神経だけの存在ですよね。

清水 そう。逆説的には、一見するとわからないほどの、すごく巧妙に「無能」な人工知能は絶対つくれるということですね。

加藤 なるほどね。でも、それくらいで、みんなが話し相手として満足する可能性、相当ありますよね。

清水 ありますね。ただ、「人格」って言うものを作るのが難しいんですよ。たとえば、その字幕を学習させる研究では、「あなた、名前は?」って聞いたら「ジュリア」って勝手に答えちゃうんです。こっちが名前を設定できないっていう、いろんな問題がある。

加藤 え、設定できないんですか?

清水 だってなぜ「ジュリア」って答えたかというと、単に映画の字幕見て「What’s your name?」に対して、「Julia.」って答えたフレーズがどこかにあったからなんですよ、きっと。おまけに「誕生日は?」って聞いたら「1977年」って答えちゃうし。

加藤 そうか、完全にもう、まとめて覚えてるだけだから、1個だけその変数を変えたりできないんですね。

清水 できなくもないとは思うけど、大変でしょうね。もしくは映画の中の、完全に特定のキャラクターのやり取りだけを、たとえばスタートレックみたいに長大なシリーズ作品みたいなものを使えば、カーク船長を再現したりはできるかもしれない。

加藤 でもそのAI人格って、カーク船長にしかなれないんですよね。

清水 そう。しかも、学習のための膨大な教師データが必要で、その学習データセットを作るのが結構しんどい。そう考えると、誰かのLINEをプライバシーは守るからって前提で全部過去の履歴をもらってAIに学習させたら、多分その人みたいな受け答えをするLINEのBotは創り出せそうです。
 人間だってとてもモノマネがうまい人っているじゃないですか。そのことと、「憑依」する感覚って、すごく似てると思うんです。そう考えると、人間ができることは人工知能もできるから、将来、人工知能に人格を真似させることは必ずできる。精度は90%くらいかもしれませんが。
 ただ、まだ今のAIだと「ある作家風の文章」は出てくるんだけど、意味までは持たせられない。モノマネって、その人の人格のエッセンスはつかんでるけど、言葉は何かのときの模倣だったり、モノマネ芸人のコロッケのように自分が言わせたいことを言ってるだけだったりしますよね。

加藤 それはそうですね。

清水 そこの機微を悟って、オリジナルの人格と完全に同じことを言う、もしくは、これから言いそうなことを言わせるっていうのはまだ難しい。あくまでも過去の文体の模倣や文体なら真似られる。笑い話なんですけど、以前自分のブログ投稿を20年分読ませて、AIに記事を書かせてみたら、唐突にアフィリエイトが出てきたんです。これには爆笑しました。

加藤 うわ(笑)。それは自分がやってたことですよね?

清水 自分が唐突に入れてるアフィリエイトを、AIが真似て出してきたんですよね(笑)。

加藤 会話もそうですが、他のジャンルでも人間のようなクリエイティブがどのぐらいできるようになるんですかね?

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