なぜ無線LANルーターの導入が効果的なのか
近年の無線LANルーターの中には、製品単体でのアクセスブロックや脆弱性保護といったセキュリティー機能を備える製品が出てきた。セキュリティー企業と協力し、悪質サイトのデータベースや保護機能などを利用することで、ネットワークに接続しているすべてのデバイスのセキュリティー強度を一括して高められるのが大きな特徴だ。
たとえばASUSのルーター製品に搭載されている『AiProtection』は、『ウイルスバスター』シリーズなどを販売するトレンドマイクロのセキュリティー技術を採用。接続したデバイスの種類や数に関わらず、ルーターそのものが不正なアクセスをブロックしてくれるため、家庭内のネットワークを守りたい場合は非常に有効な選択肢といえる。ネットワーク端末を多く所有するファミリー家庭などではそれだけ効果的だし、スマート家電を保護したい場合、おそらく現状もっとも現実的な対策となるのも特筆すべきポイントだろう。
高機能ルーターは何をしてくれる?
『AiProtection』の代表的な機能は、パスワードや暗号化の強度を診断する『セキュリティーチェック』、不正サイトへのアクセスや不審な通信を遮断する『悪質サイトブロック』『脆弱性保護』、アプリの利用制限やアダルトサイトなどのフィルタリングを行なう『ペアレンタルコントロール』など。『セキュリティーチェック』は、ルーターの状態をセルフスキャンして脆弱箇所を特定し、設定を適切な状態に保つための機能となる。サイバー犯罪は、見破られやすいパスワードや不十分なワイヤレス設定、設定の脆弱性によって発生することから、それらを未然に防ぐための予防措置といえる。
悪質サイトブロックは、通信の際に必ずデータベースを参照することで、不正サイトなどへのアクセス自体をブロックする機能。参照するデータベースはトレンドマイクロの『Web Reputation Services (WRS)』で、これは『ウイルスバスター』シリーズで利用されているのと同一のものだ。実際、ランサムウェアのような不正プログラムへの感染経路の多くは『メールによる誘導』だが、この機能を使うことにより、銀行やショッピングサイトを装うメールに騙されても不正サイトへのアクセスを回避できる。「ウェブサイトのリニューアル」や「不正アクセスの検知」をうたった文面を使うなど、不正メールの手口は年々巧妙になっているため、備えておく方が賢明だ。
『脆弱性保護』は、OSやアプリケーションの脆弱性を狙ったパケットの通信を監視し、攻撃があった場合にアクセスを遮断する機能。PCなどでセキュリティー対策を取っていない場合、発見された脆弱性は即座に修正されるわけではないため、クラッカーの攻撃の対象となる場合がある。なお、この機能もトレンドマイクロの『Trend Micro Virtual Patch』のシグネチャ(仮想パッチ)を活用しており、脆弱性の情報は定期的に自動更新される。
『ペアレンタルコントロール』は、アダルトサイトなどの閲覧制限やインターネットへアクセスできる時間帯を設定する機能。スマホを持たせていない小学生の子どもに家でPCを使わせる場合などは特に効果的だが、裏返して言えば、効果があるのはネットワーク内のみ。外出先での不正アクセスは防御できないので、子どもがスマホを持っている場合、スマホ向けのセキュリティーソフトをインストールして2重に防御するのが望ましい。なお、アクセス可能時間の設定はデバイスごとに行えるため、ゲーム機やスマホを使ったゲームの遊び過ぎなどを抑制したい場合にも有効だろう。
ちなみに、これらのセキュリティー機能はルーターに組み込まれており、定期更新料などもなく永年無料で使える。使っているデータベースはセキュリティーソフトと同一で、常に最新の状態が保たれるため、お得感は高い。一方で、ネットワーク以外からの感染、たとえばUSBメモリーからのウイルスやマルウェア侵入などは防げないため、防御が完全ではないことは覚えておく必要がある。セキュリティーソフトとルーターのセキュリティー機能を併用するのがベストなのだが、ルーターを導入するだけでもセキュリティー環境は格段にアップするだろう。
また、すべての無線LANルーターがこうした高いセキュリティー機能を備えているわけではないことにも注意したい。ASUSの場合も、現行モデルでAiProtectionに対応しているのは『RT-AC68U』『RT-AC88U』『RT-AC3200』の3モデル。実売価格は『RT-AC68U』が1万8000円前後、『RT-AC88U』が3万円前後、『RT-AC3200』が4万2000円前後と、ルーターとしてはミドル~ハイクラスの価格だが、どれも性能が高い上、セキュリティー機能のランニングコストがかからないことを考えれば魅力的だ。なお、同社のルーター『RT-AC85U』にも、近日中にファームウェアアップデートで同機能が搭載される予定とのこと。こちらは実売1万4000円前後とさらに安価なので、有力な選択肢といえる。