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逃げるは恥だが一膳炊きたい

アナログ技術の金字塔、パナソニックの一膳炊き鍋が最高だった

2017年01月12日 12時00分更新

文● 四本淑三

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興奮と感動の炊きあがり

 とりあえずお米を炊いてみました。米を研ぐ。含水時間を30分ほど置く。0.5合なら「ガシャッ」と大きな音のするスイッチを押し下げ炊飯終了まで約17分。そこから15分ほど蒸らした後に茶碗によそう。

0.5合のお米に、ほぼ同量の水

フタをしてスイッチをガシャッ

炊けました

ちょうど一膳

 もちろん始めのうちは、何度か失敗しました。あまりになにもないので、最初はスイッチを切るのも手動なのだろうと、中の様子を見ながら自分で切っていたわけです。ところが放っておいたら、丁度いいところで勝手に切れる。温度スイッチは付いています。ああ、良かった。

 そして結果的に、最新のIH炊飯器に勝るとも劣らない程度に美味しく炊けている。スペック上の炊飯容量は「1合~1.5合」ですが、0.5合でも全然大丈夫。なにより良いのは、適度におこげがあること。大きな炊飯器でご飯を炊くと、均等にほぐさないとおこげが回ってこなかったりする。でも、これなら一膳に漏れなくおこげが全量付いてくる。おこげの香ばしさを独り占めできるお一人様、最高です。

大切なおこげ部分です

 こうして美味しく炊けるのは、電源を入れてから温度スイッチが働くまでの加熱カーブが、よほどいい感じのチューニングなのでしょう。こんな単純な構造で立派なものです。これぞ家電設計の真髄、アナログ技術の金字塔。ああ、このご飯が好きなときに一膳だけ食べられるのか。これがあるなら死ぬまで生きよう。そんな希望さえわくほどです。大げさでもなんでもなく。

 その代わり人間のやることは増えます。米を研ぐ。水に浸して最低30分は待つ。「ガシャッ」とスイッチが切れたら、蒸らし時間をカウントする。それは最低限、やらなければなりません。おまけに保温機能がないので、炊き上がりの時間から逆算して炊き始め、炊き上がったら直ちに食べなければならない。

 でも、炊きたてが食べたいんだから、それでいいんです。それになんだか楽しい。水とお米の量が一定なら、加熱カーブとスイッチが切れるタイミングは同じなわけですから、ご飯の食味は、水の水温と含浸時間、炊飯時の水の量、むらし時間が決定します。そこしか調整のしようがないので、計測とフィードバックが大好きな中高年の趣味としても最適です。

 この炊飯器の魅力は、それだけではありません。シンプルな電気鍋に過ぎないという構造から、炊飯以外にもさまざまな調理に応用が効きます。「ミニクッカー」というマスコットネームは、まさにこの小型調理器としての側面を強調したものなわけです。しかも机の上で。

 次回はこのデスクトップクッキングの実例を挙げていきたいと思います。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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