SD-WAN製品を徹底検証した結果とは?
NTTコミュニケーションズも、主要なSD-WAN製品のテストベッドを用意し、ユーザー企業とともにさまざまなユースケースで試用しているという。テストベッドで試用したSD-WAN製品はヴィプテラ、ヌアージュ、シルバーピーク、シスコ、ヴァーサなどで、それぞれコントローラーも導入している。
確かにONUGで公開している主要10要件に関しては、これら全製品が基準をクリアしている。しかし、「実際に運用してみると、報告が荒い」(山下氏)とのことで、本当に現場で使えるのか、ユーザーと話をしながら、クラウド接続やNFVとの連携、既存システムのマイグレーションなどのユースケースを想定したという。
想定したのは、拠点作業での設定が不要となる「ゼロタッチオペレーション」、用途ごとにネットワークをスライシングする「セグメンテーション」、インターネット回線を含めて複数の回線を効果的に利用する「ハイブリッドWAN」、特定のクラウドアプリケーションのみインターネットにオフロードする「インターネットブレークアウト」の4つ。
これらの用途で必須の機能要件を洗い出し、SD-WAN製品を動かしてみたところ、すべての面で合格したところはなかった。具体的な結果の公開は難しいとのことだが、「L3はできるけど、L2はNG」「マルチテナントがダメ」「そもそも機能がない」などのほか、ローカルキャリアの実態を理解せずに機能を実装した製品も多く、ユーザーが期待する要件を満たす製品は1つも存在しなかった。とはいえ、山下氏もすべてを切り捨てているわけではなく、ハイブリッドWANなど実績の高い用途は、実用度も高いと語る。「現時点で、完璧な製品はない。すべてが秀でているものはないという前提で、最適な製品を選ぶべき」と山下氏はまとめた。
通信事業者自体の変革を強いるSDxへの道
最後に語ったのは今後の動向。山下氏はここでも2016年のInterop/Shownetの動向を振り返る。
今年のShownetはBGP Flowspecによって特定のトラフィックのみを別の仮想ネットワークにリダイレクトし、NFVを活用してファイアウォールやWAN高速化のデプロイ、DDoSのクリーンナップなどを行なえる環境を構築した。「20年間の運用実績を持つ枯れたプロトコル(BGP)を用いて、安定的に遠いところをつなぐ。そして、目標のトラフィックだけを誘い込んで、細かい制御をSDN/NFVでやるということ」(山下氏)。
こうしたトラフィック制御を実現するため、NTTコミュニケーションズはオーケストレーターの自社開発にこだわり、サービスに活用していく計画だ。一方で、SDNの実現においては、レガシーシステムとの接続も必要で、社内システムも大きく変革する必要があるという。「SDx化で変えなければならないのは、サービスではなく、社内そのもの」と山下氏は指摘する。
興味深かったのは、NTTコミュニケーションズのような通信事業者が、なぜSD-WANとともにマネージドサービスに取り組むかというテーマ。これについて山下氏は、「もともとSD-WANって本来、お客様がネットワークの運用管理を行なうから便利だよねということで、普及したはず。でも、実際は運用管理までは難しいから、SD-WANサービスにマネージドサービスをくっつけてほしいというお客様が増えている」と語る。
しかし、SD-WAN登場前と比べ、ユーザーの条件は厳しくなったという。「お客様は自身で運用管理できることが知ってしまった。自分でできることをわかった上で、通信事業者に運用管理をやってくれと言っているので、高いレベルが要求されている」(山下氏)。SD-WANという選択肢が生まれたおかげで、ユーザーは自身で運用管理ができるという切り札を通信事業者に提示できるようになった。これを受けた通信事業者は、既存の運用管理に比べて高いレベルのアウトソーシングサービスを提案する必要が出てきたというわけだ。山下氏は、「まずわれわれは可視化をがんばっている。今後はクラウド品質の見える化なども進めていく」とマネージドサービスの方向性について語った。