さくらの熱量チャレンジ 第10回
tsumugの牧田さん、さくらフェローの小笠原さんと熱量対談
話題のスマートロックtsumugの牧田さんが語るさくらとの共創
2016年11月29日 07時00分更新
賃貸管理業に特化したスマートロックの存在意義
オオタニ:スマートロックというと、最近スタートアップや大手も入り乱れて、けっこう製品出ていますよね。
小笠原:ただ、先日Twitterでも書いたんですが、スマートロックってまだ売れてないんですよね。「今さら参入?」なんて声もありますが、全然気にする必要ないです。やっとこれからみんなが使い始めるタイミングかなと思っています。
牧田:不動産会社でスマートロックを検討しているところも多いのですが、実際は実績や信頼度、取り付けの手間から考えて結局電子錠になっているところも多い。でもこれだとカードに置き換わっただけで物理鍵がなくならないんです。しかも、現在の鍵の管理業務って非常に煩雑で、大きな負担になっています。
オオタニ:では、tsumugの会社概要を教えてください。
牧田:tumugは今は賃貸管理業界に特化したスマートロックを作っています。ポイントしては、単体でLTE通信できるシリンダー形状のスマートロックというところ。
オオタニ:内鍵ではなく、外鍵に付けるのが特徴的です。
牧田:tsumugのスマートロックを使っていただいて、鍵をデータ化したり、スマートロック化するだけでも、煩雑な管理業務の一部は解消します。利用者の方だけではなく、管理会社も大きな負担軽減になりますし、今後増えてくる民泊の領域でも大きなメリットが出ます。
小笠原:コメント見ると、電子化怖いというのが出てますね。地震の時にどうなるとか。でも、電子化と物理ってみなさんどっちが怖いんでしょうね。合い鍵持っていた人が別れてもそのままコピー鍵持ってるとか(笑)。そっちの方がよっぽど怖いと思いますけどね。どっちも怖いなら、できるだけセキュアにできるモノの方がよいですよね。
オオタニ:小笠原さんは牧田さんとはどういうおつきあいなんですか?
小笠原:もともとは孫泰蔵さんがやっているMOVIDAという会社に牧田さんがいたときに知り合いになりました。以前は支援する側におられたんですけど、なぜかスタートアップを立ち上げて、茨の道の方に進んでってますね(笑)。私のABBAlabもちょうどスタートアップの投資ファンドをやらせてもらっていますし、さくらとしても通信モジュールを展開しているということで、いっしょにお仕事をやらせてもらっています。
ハードウェアスタートアップにとってもっともエキサイティングな今
オオタニ:そもそも牧田さんはなぜこういう事業を立ち上げるに至ったんですか?
牧田:話すと長くなるので短縮版で行きますけど、もともとハードウェアが大好き。建築学科だったので、ハードウェアというインターフェイスでなにができるかに興味があって、起業するときには絶対ハードウェアのスタートアップでやりたいと思ったんです。
MOVIDAで、スタートアップを支援する側にいたんですけど、最近はハードウェアのスタートアップをやるのに環境も整ってきた。ベンチャーによるハードウェア開発を支援してくれる企業も増えてきたし、さくらインターネットのようにインフラを支えてくれる企業も増えてきました。最高にエキサイティングな環境が今なんだと思い、起業しました。
オオタニ:では、特に不動産というところの縁があったわけではないんですね。
牧田:いいえ。建築学科だったこともあって、不動産会社で働いていたことがあったんです。働いていた時に、先ほど話していたような業務の煩雑さは感じていました。不動産に限らず、テクノロジーが入ってくると業界は大きく変わってしまう。それに抵抗感を持っている人がいるのも感じているので、S2iのような業界を知っている企業と協業して、テクノロジーで便利になる世界を作っていきたいと思っています。
小笠原:S2iは、アパマングループのシステムソフトというSI会社とさくらが作った会社で、ホームIoTやシェアリングエコノミーについて取り組んでます。
オオタニ:業界知識は重要ですよね。私事で恐縮なのですが、実はうちのかみさんが先日から働いているのが、まさに賃貸物件の管理会社なんです(笑)。電話を受けて、この物件空いてますか?みたいな問い合わせを受けているのですが、話を聞くと、まあレガシーというか、ITとほど遠い感じがしますね。ゴミの出し方のクレームが来たら、電話と現地対応だし、管理は物件ごとのExcelファイルだし、FAXは現役でバリバリ使っているし、すごい大変だなと。
小笠原:レガシーなのは好きでやってるならいいんですけど、仲介業者も管理会社も、実際仕事がしんどいと思うんですよ。1年のほとんどの案件が繁忙期の2~3月に集中しますが、それに対応できる人を雇っているはずではないので、ものすごいしんどいはず。tsumugのスマートロックを使えば、たぶん業務が省力化されて、内見できる物件も増えて、いいと思いますね。
オオタニ:これは賃貸物件に後付けするような形で導入するんでしょうか?
小笠原:賃貸物件だと、どのみちシリンダー交換しますよね。ああいったタイミングでtsumugのスマートロックに交換できるといいなと思います。
鍵穴をふさぐtsumugのスマートロック、さくらの通信モジュールでさらにセキュアに
オオタニ:実際のtsumugのスマートロックのユースケースも見ていきましょうか。
牧田:はい。今日観てくださる方はどちらかというと鍵を使う側の方だと思うのですが、鍵がデータになることで、いろんなユースケースがあります。1つは先ほどから話に出ている内見。内見って今1日のうちの半分くらいの時間は拘束されてしまいますが、鍵の貸し借りが容易であれば、空いた時間に内見するといったことも可能になります。あと、たとえばホームパーティとか複数の人が出入りする環境でも、3時間だけ使える鍵みたいなのを作って、出入りしてもらうことができます。
オオタニ:家の出入りで時間とったら、パーティの主催者も面倒ですしね。
牧田:はい。一番ユースケースとしてイメージしてもらいやすいのは、AirBnBのような民泊のような領域。ホストの人はゲストの人への鍵の受け渡しで困ってるので、そういったときにも「何時から何時まで鍵を使えるようにしておく」というメッセージだけで済みます。もちろん、ログも見られるので退室の時間もチェックできるし、ポストの中に鍵を入れておかなければならないみたいな危険もなくなります。
オオタニ:鍵がインスタントで作れることで、いろいろなソリューションが実現できると。そして、tsumugのスマートロックを作るに当たっては、セキュリティホールを極力減らす構成にしているわけですね。
牧田:まず物理鍵は鍵穴がまさにセキュリティホール。既存のスマートロックは鍵穴自体もあるし、BluetoothやWi-Fiなどを経由して、インターネットに出るので原理的には危険です。2.4GHz帯は非常に混雑しているので、うまく通信できないということもあります。これに対してtsumugのスマートロックはそもそもシリンダーごと交換するので鍵穴はなくなりますし、さくらのモジュールでLTE通信し、閉域網につなぐという方法を使っています。
オオタニ:鍵のデータが閉域網経由なので、そもそも先ずはインターネットに出て行かない。こういうセキュリティがさくらのIoT Platform採用で大きいポイントだったんですね。コスト面も大きい感じがしますね。
小笠原:そうですね。ソラコムさんですら1日10円、月額300円はかかるわけで、月額500円のサービスではなかなか載っけられない。でも、通信料はサービス料金に含んで欲しいですよね。そのあたりはさくらがなんとか解決できるんじゃないかと思っています。
牧田:tsumugのスマートロックは個人ではなく、管理会社に販売しているので、B2Bビジネスとしてのコストメリットを考えています。まずは管理会社にコストメリットを感じてもらって、一般入居者に拡がるといいなと思っています。
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