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さくらの熱量チャレンジ 第5回

ディープラーニングの旗手が語る第4次産業革命

ABEJAが描くIoTとビッグデータ、AIが結びついた世界

2016年10月06日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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ノイズ耐性にもこだわった非構造化データの分析

大谷:もう1つリテールでABEJAさんがどのように機械学習を使っているのか、教えてください。今の機械学習って、なんだか「魔法」として取り扱われているので、中のからくりがわからない状態で議論が進んでいる感じがするんです。

ABEJA岡田:おっしゃるとおりですね(笑)。たぶんABEJA Platform for Retailを見てもらうのがわかりやすいと思いますが、われわれはABEJA Platformということで、産業別にソリューションを構築しています。基本的にはインプットするデータはなんでもいいので、暗号化した後にデータはクラウドで解析します。

次に人間でしかわからないような非構造化データを解析できる形に変換します。たとえば、映像データであれば、来客はこんな導線で動いていましたという形です。これはディープラーニングのを活用した人物検出を使って、人を検出し、その連続性を見つけることで実現しています。その他、1日通してや時間あたりの来客数のカウント、来店者が男性か、女性か、年齢の分類をさせていいただきます。

大谷:こういう動画などでもディープラーニングで解析できるんですね。

ABEJA岡田:いや、動画処理って、実はディープラーニングが得意な分野ではないです。動画って前の画像と次の画像の違いを1つずつ見なければならないので。同一人物が動いているだけなのか、別の人なのかを連続した画像を取得しないと、来客者の数が間違ってカウントされてしまいます。だから、同一人物が連続して動いているみたいなところが必要なんですが、われわれは時系列でディープラーニングをかけることに成功しています。あと、ノイズもきちんと除去できます。理想的な環境でどれだけ成果が出ても、ノイズで精度が下がったら意味がありません。だから、実環境で起こるノイズの除去にはこだわっています。

大谷:なるほど。ここまでで非構造データからコンピューターが解析できるデータに落とされたわけですね。

ABEJA岡田:はい。こうして数値になったデータを、われわれのデータマネジメントの仕組みに落とすと、1店舗の売り上げや来店者数、滞在時間などが出てきます。これが数ヶ月溜まり、ディープラーニングのリカレントニューラルネットワーク(RNN)を使うと、「明日はこうなります」というのが未来予測できます。つまり、予測と実測をリアルタイムに見て、比較することが可能になります。しかも、結果をリアルタイムに再学習させることで、モデルが自動的にアップデートされるので、予測や最適化の精度がどんどん上がっていきます。

大谷:小売店舗のマネージャーは、のどから手が出るほど欲しい機能ですね。

ABEJA岡田:われわれはこの比較にアンカーを入れているので、予測と実績が大きく食い違ったときに自動的に検知してくれます。予想した来場者が来なかったら、この検知をトリガに、メールマガジンを配信するとか、Facebookに投稿する、アプリでプッシュ通知するといったマーケティングオートメーション(MA)も実現可能です。

さらに来店者数に応じて、ロジスティックを制御して、商品の到着を遅らせるとか、廃棄を減らすといったサプライチェーン全体の最適化も可能になると考えています。マーケティングであればMAツールやCRM、ロジスティックであればERPとの連携が可能ですし、あるいはロボットに店内の混雑状況をリアルタイムで通知して、「3階は今混んでいますよ」といった店内の混雑を緩和させるアナウンスも実現できます。

幅広い産業でディープラーニングのメリットを得られるABEJA Platform

大谷:なるほど。ABEJAさんがいろいろなところで取り上げられる理由がわかった気がします。MA的な使い方を想定したのですが、さまざまなツールと連携できるのですね。

ABEJA岡田:ABEJA Dashboardという簡易BIツールでデータは可視化されるので、予測と実測の差をグラフで確認できたり、来店者の回遊傾向などをヒートマップの画像で見ることができます。簡単に分析できるというところでは、ご好評頂いています。

今まで、小売の現場って、そもそも来店者数をカウントしていなかったので、100人来店して2人買ったのか、10人来店して2人買ったのかわからなかったんです。たとえば、100人来店して、2人しか買わなかったら、接客に何かしらの課題があると分析できます。逆に1日に10人しか来店がないんだったら、店への集客に問題があるので、広告や販促施策に課題が見いだせるという話になります。意思決定をこうしたデータに基づき定量的に行なえるのが、ABEJA Platform for Retailのベネフィットです。

大谷:これって企業側がロジックを持っていて、それを機械にやらせているのか、あるいは機械じゃないとできないロジックなのか、どちらなんでしょうか?

ABEJA岡田:基本的にはどっちもあります。今までExcelで取得データを確認していたことを、ABEJA Dashboardでビジュアル化する。1日かかっていたレポーティングを機械が数秒で行なえるという意味では、驚異的な効率化です。あとはそもそも人では絶対に見切れないような大量データから特徴量を抽出するというディープラーニングの得意分野を活かした解析を行なっています。一方、店舗には、コンピューターができない接客やコミュニケーション、企画などに集中してもらって、企業価値を上げていくというかたちですね。

大谷:実際、小売・流通事業者さんでの導入も増えていますよね。

ABEJA岡田:たとえば、JUN様ではABEJAの導入で、まさに「買上率」という新しい指標を確立されましたね。接客によって、買い上げ率が何%上がったかを成果指標で使われています。とはいえ、われわれの製品は単に導入しただけでは成果は出ません。お客様がどう使いこなすかがすごく重要なので、とにかくPoCを回してみます。これにより、経営や店舗運営がどう変わるかを見て、使い方を定着させていくというパターンが多いですね。いったん定量的な指標になると、より生産性の高い店舗運営のために必要なツールと御認識頂けます。

 後編に続く。

(提供:さくらインターネット)

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