前回の記事では、中国の電脳街がECの普及とクリエイティブな製品を推進する政府方針により消滅していく話を書いたが、クリエイティブな製品の推進については、「Kickstarter」のようなクラウドファウンディングが注目されている。
中国独自のクラウドファウンディングサイトがいくつも登場
クラウドファウンディングは中国語で「衆籌」(ジョンチョウと発音する)といい、本家Kickstarterにおいては中国企業ほか香港やシンガポールの華人が新しいデジタルガジェットを提案している(そのためかKickstarterは9月1日に香港とシンガポールに進出した)が、中国でもKickstarterそっくりなコンセプトのサイトがいくつも登場した。
後述するが、今はクラウドファウンディングサイトがさらに盛り上がっており、無数の募集案件が確認できるクラウドファウンディングサイトがある一方で、サイト内で募集案件が数件しか登録されていないという過疎化したサイトも少なくない。
そのような状況で今も登録件数が多い元気な中国版クラウドファウンディングサイトは、オンラインショッピングサイトの「京東」(JD)の「京東衆籌」や、淘宝網(Taobao)の「淘宝衆籌」や、家電量販店の「蘇寧電器」(Suning)が運営する「蘇寧衆籌」といった、母体にブランド力があり利用者が非常に多いサイトばかりだ(デジタルガジェットに興味があれば、各サイトで「科技」を選んで絞る)。
最近では長く中華デジタルガジェットをチェックしている筆者でも、電脳街はもとより、オンラインショッピングサイトの京東・淘宝網・蘇寧易購で面白いデジタルガジェットを見つけることが難しくなっている。
しかし、クラウドファウンディング系サイトではなかなかどうして面白いデジタルガジェットがある。小さな企業のスタートアップだけでなく、大企業が中国市場で受け入れられるかをチェックする場でもあり、企業の大小を問わずクラウドファウンディングサイトで提案している。
中国は新しい製造のステージに進むべく、政府はクリエイティブ製品へのサポートを行ない、その中でクラウドファウンディングサイトでクリエイティブな製品を作ろうという流れが強まっている。
この勢いが一気にできれば、「金を稼ぐためにモノを作る」という常識ばかりを持つ人ばかりだったのに加え、「欲しくなるようなモノを作る」という考えを持つ人がもうひとつの主流となり、中国=ニセモノ量産国というのが的外れな概念になるかもしれない。
クラウドファウンディング詐欺も散見される
とはいえ、話題になると情報弱者の消費者や、政府のサポートがあると補助金を狙ったクラウドファウンディング詐欺案件がついてまわるのが中国の常。
デジタルガジェット方面ではあまりニュースにならないが、クラウドファウンディングで募った投資案件で多額の資金を集めた後、提案者が消えてしまうニュースはかなりある。
いずれにしろ、本家よりも中国的なリスクがつく。設定以上の賛同人数と金額が募れた成功案件は、京東や淘宝網や蘇寧易購などで販売されるようなので、興味があれば商品が出たのを待って買うのが確実だ。
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