アクロニス・ジャパンは9月7日、「Acronis Backup 12」を発表した。
企業導入を想定した同社の主力製品。IT環境下にあるすべてのデータを簡単、高速にバックアップ、復元させるデータ保護ソリューションとして、傷害や災害からのシステムとデータの保護、その復旧、ランサムウェアやマルウェアの被害からの復旧に役立つとしている。
会見では、アクロニス・ジャパン 代表取締役の大岩憲三氏が冒頭で挨拶。全世界で、500万人以上のユーザー、50万社以上の企業、3万2000社以上のパートナー、5000ペタバイト以上のデータを保護しているなど数字に触れつつ、「会社の雌雄を決する製品と考えている」とコメントした。4年ぶりのバージョンアップであり、安定性とユーザービリティの高さで評価されてきたが、クラウド化を始めとした環境変化に対応していく狙いがあるそうだ。
クラウド対応の強化は、Acronis Backup 12の大きなポイントとなる。
大岩 「この数年、想定外の自然災害が増え、物理的な機材やデータの消失が目立ってきている。さらにランサムウェアなど新たな脅威も増加している。かつてはセキュリティーとバックアップは違うカテゴリーでとらえられていたが、バックアップはセキュリティーを補完するものと変わりつつある。ランサムウェアはローカルのほうが被害が甚大でクラウドの活用がカギになるほか、(データの保存先としても)クラウドの重要性が高まっている。かつてとは異なり、分散性のあるクラウド環境のほうが有利だという見方もある」
アクロニス・ジャパン セールスエンジニア マネージャの佐藤匡史氏は「企業の環境はほとんどが仮想化されている。そのうえで様々なワークロードを使うため、複雑性が加速している」と現状を分析。同時に「IoTを始めとして、企業で使用するデータも様々に広がっており、これは財産でもあるがリスクにもなりうる。これが我々が立ち向かわなければならない課題」とした。
加えてクラウドとオンプレミス環境の混在やモバイルデバイスの保護といった環境の変化もある。
佐藤 「簡単・高速・安心という目標は変わらないが、環境の変化の中で難しさや課題がある。例えば企業で個人が利用するデータの保管場所は散在している。一方で多くの企業は閉鎖的なITの中でデータセンターの中にあるものだけを管理している現状がある」
製品開発に当たっては5つの観点を重視した。第1にインストール・データ保護・復元などの「簡単な操作」。第2に物理・仮想・クラウド・Exchangeなどのアプリケーション、モバイル端末を「包括的」に管理できること、第3に堅牢な国内データセンターを使用すること、暗号化や属人的な要素を排除する操作性といった「安全性」、第4にデータ復元時に全体の復元を待たずにVMを利用できる独自機能などを通じた「高速性」、第5に世界中で使われているユーザーに裏付けられた「信頼性」だ。
Acronis Backup 12では、ウェブベースの管理コンソールによって、物理マシン/仮想マシン/クラウド上のバックアップ操作を一元管理できる。管理サーバーが必要なオンプレミス型に加え、管理サーバーの構築が必要ないクラウド型のソリューションも用意していおり、構内(オンプレミス)、遠隔地(リモートサイト)、クラウド環境、モバイルデバイスなど、様々な場所にあるデータを構内と変わらず、包括的にバックアップ・復元できる。もちろんクラウド型でもオンプレミスのデータを保護できる。
新機能としては、この「Webコンソール」に加え、「Microsoft Azure/Amazon EC2への対応」「Acronis Instant Restore」「VMレプリケーション」「Mac/iOS/Androidの保護」などが掲げられている。また復元機能の「Acronis Universal Restore」「仮想環境保護」といった機能も従来バージョンから強化している。
Microsoft Azure/Amazon EC2では単純なファイルバックアップではなく、イメージ全体のバックアップをとり、ベアメタル復元できる点が特徴。
Acronis Universal Restoreは、物理からクラウド、仮想環境からクラウドへの復元に対応できることに加え、移行機能も強化している。またvmFlashbackと呼ばれる、変更があったブロックを追跡して増分バックアップをとり、復元時には、稼働している部分との差分だけを高速に戻せる機能を持つ。クラウド環境で特に有効な機能だという。
Acronis Instant Restoreは、バックアップアーカイブから復元する際、仮想ハイパーバイザーの動作に必要なデータだけを展開して仮想マシンを立ち上げられる機能。こちらもRTO(リードタイムオペレーション)の大幅な削減に寄与するという。
VMレプリケーションについては、回線の細いWAN環境を想定。変更したブロックだけ高度に圧縮して転送できるため、災害からの復旧時などに有効だとした。
最後に対応端末としては、Windows PCに加えて、MacやAndroid/iOS搭載のスマホ、タブレットなど対応範囲を広げている。Macに関してはイメージバックアップとベアメタル復元にも対応する。iOSやAndroidではイメージバックアップが難しいため、データ単位でのバックアップが可能だ。
ライセンスは永続タイプとサブスクリプションタイプ(1/2/3年版)がある。いずれも3年版の価格は永続タイプと同額となる。
価格はPCおよびMacを対象にしたAcronis Backup Workstation Licenceが9600円(永続)または4200円(1年版)など。Windows/Linuxサーバー、Amazon EC2 インスタンス、Azure VM上のOSを対象とした同Server Licenseが11万7600円(永続)、5万8700円(1年版)など。VMWareやHyper-V上のホストを対象とした同Virtual Host Licenseが12万円(永続)、または5万9900円(1年版)。Windows Server Essentials(SBS)を対象とした同Windows Server Essentials Licenseが5万8800円(永続)、2万9300円(1年版)など。
オンライン版とライセンス版の発売開始は本日。パッケージおよびメディアパックの受注開始日は10月7日となる。ソフトバンク コマース&サービス、ダイワボウ情報システム、ネットワールドなどリセラー経由で販売する。