クロスクラウド戦略が見えたVMworld 2016レポート 第1回
AWSもAzureもIBM Cloudも統合運用可能に、ヴイエムウェア ゲルシンガーCEO基調講演
VMworld 2016で“クロスクラウドな”新アーキテクチャ発表
2016年08月31日 07時00分更新
AWS、Azure、IBM Cloudもパブリッククラウドと統合して管理
一方、現在テクノロジープレビュー中であるVMware Cross-Cloud Servicesの機能について、ヴイエムウェアのCTSO(最高技術戦略責任者)であるギド・アピンゼラー氏がデモストレーションを交えながら説明した。
SaaSとして提供されるCross-Cloud Servicesは、顧客のプライベートクラウド、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、IBM Cloudといったパブリッククラウドのどちらのワークロードに対しても、共通の運用環境を提供するサービス。ネットワーク/セキュリティに一貫性のあるポリシーを適用することができ、アプリケーションやデータを自動的に(クラウド間をまたいで)展開、管理、移行できるようになる。
これにより、企業内の業務部門や開発者が個別にクラウドサービスを導入しても、全体を統括するIT部門がデータ/アプリケーションを適切に保護し、コストも管理することができる。アピンゼラー氏は、この仕組みを通じて、ヴイエムウェアは企業の革新的なアプリケーションやサービスの実現を支援していくと説明した。
アピンゼラー氏は、このCross-Cloud Servicesの開発に当たって、多くの顧客に意見を求めたことを明かした。
「この1年間、100社以上の顧客と話し合ったところ、『(前出の)Cloud Foundationが備える機能では十分ではない』という声をもらった。顧客がAWSやGoogle(GCP)、Azureといったメガクラウド上で構築してきたアプリケーション群をサポートし、使えるようにする必要があった」(アピンゼラー氏)
一方で、事業部門や社内開発者がIT予算を持ち、直接クラウドサービスを導入する時代になっても、全体を統括するIT部門がセキュリティやコンプライアンス、コストに目を光らせることは重要であり、それゆえに“フリーダム”と“コントロール”の両方を提供するCross-Cloud Servicesが求められるのだと説明した。
ゲスト登壇したシティグループCTOのモッティ・フィンケルシュタイン氏は、「マルチクラウド環境を実現することで、それぞれに必要な可用性に適した環境を使っていくことができる。そのためには、(個々のシステムが分断した)サイロにならないような環境を作る必要がある」と述べ、Cross-Cloud Servicesで実現するクロスクラウドな環境のメリットを評価した。
なお、Cross-Cloud Servicesのベータ版、および正式版の提供開始時期や提供価格などについての言及はなかった。
マイケル・デル氏が登壇、「開発面でも両社で協力していく」
基調講演の最後にゲスト登壇したのは、米デル CEOの(マイケル・デル)CEOだった。昨年、デルがEMC買収を発表した際には、ヴイエムウェアとデルとの関係が注目を集めた。
デル氏は、ヴイエムウェアの広範なエコシステムについて触れ、「デルが打ち出したオープンエコシステムの成功のためには、VMwareが欠かせないものとなっている」と述べた。さらに、ヴイエムウェアが今回発表したCross-Cloud ArchitectureやCloud Foundationについて、高く評価していると語った。
「ヴイエムウェアと同様に、デルも、どうすればより多くの人がクラウドを簡単に使えるようになるのかを考えている。ここには大きな市場機会があり、開発面でも両社(デルとヴイエムウェア)が協力をしていくことになる。また、これらの製品(Cloud Foundationなど)は、エコシステムの大きなパワーがなければ活用できない。2018年に向けて、エコシステムはさらに強化されていく。イノベーションの水準も高くなるだろう。こうした取り組みは、人類の進化にすら影響を与えることになる」(デル氏)
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