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VRおじさんの「週刊VRかわら版」 第14回

黎明期だからこそ、みんなで「VR視聴」が重要

同時配信やドームなど、みんなで楽しむVRソリューションが続々登場

2016年07月03日 17時32分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!


黎明期だからこそ、みんなで「VR視聴」が意外と重要だったりします。写真はザッカーバーグ氏がFacebookに投稿したものより引用

 どもども!! VRおじさんこと、PANORAの広田です。今週もVR業界はイベント目白押しでしたね。6月26日〜7月1日には、VR系の展示も多数出展していた「第2回先端コンテンツ技術展」を含む「コンテンツ東京2016」が東京ビックサイトにて開催されました。同じお台場では、日本科学未来館にて6月29日〜7月18日に「Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験」を実施。Gear VRやHTC Viveを使った3つのVRアートを展示しています。

 今回は、そんなVRがらみのイベントで役立ちそうな、みんなで楽しむVRソリューションについてピックアップしていきましょう。


百人単位で同時視聴

 VRヘッドマウントディスプレーは、かぶると視界をすっぽり覆って、ここではない別の世界にいる感覚を呼び起こしてくれるのが新鮮な体験として注目を集めています。一方で、一人で体験するがゆえ、同じコンテンツを他人と一緒に見られないという点も問題意識もあがってきています。

 もちろん業界も対策を考えていて、例えば、PlayStation VRでは、「ソーシャルスクリーン」という機能でユーザーが見ている画面を加工してテレビに出力してくれます。例えば「PLAYROOM VR」というミニゲーム集では、VRヘッドマウントディスプレーをかぶった1人と、その他テレビを見ている1〜4人で、別視点で同じゲームを楽しめるという仕組みです。

 ほかにもオンライン対戦であったり、ソーシャルアプリ上であったりと、アバターを介したコミュニケーションも視野に入っており、実際にOculus Riftなどに向けて「AltspaceVR」や「Cluster.」などのサービスがすでに始まっております。

 ただそうしたパーソナルな用途とは別に、同じVRコンテンツを同時に見せたいというニーズが、特にイベントや展示会で高まっており、ひとつには複数台のVRヘッドマウントディスプレーに対して同じコンテンツを同時配信するという解決方法が出ています。

 今週30日、フジテレビとグリーが共同でVRコンテンツを開発していくプロジェクト「F×G VR WORKS」の進捗をお披露目した記者発表会では、会場に集まった約100名あまりの参加者がGear VRを装着して、同じ360度映像を同時に見てもらうという試みが実施されました(関連記事)。この技術は、ネットカフェ向けのVR配信プラットフォーム「VR THEATER」を制作しているエジェと共同で開発しています。

 以前にも、カドカワのN高等学校入学式にて、Gear VRを利用して沖縄本校の様子を360度で生中継するという試みが行われました(PANORAの記事)。世界的には、冒頭の写真のように今年2月のMWCでサムスンの記者発表会で実施した2000台レベルの同時配信が有名です(関連記事)。この辺の技術は今後、より多くのソリューションが出てきて競争が激しくなりそうです。

F×G VR WORKSで、360度映像「永島優美アナのヴァーチャルお忍びデート」をみんなで見る記者・関係者の様子



みんなで見られるドーム型も

 さらに言えば、VRヘッドマウントディスプレーは1台あたり1人しか体験できないためイベントで台数を揃えるのが大変です。体験時間が5分としても、10〜18時のイベントなら1台あたり96人しか体験してもらえません。それに視力への影響などからPlayStation VRで12歳以上、Oculus RiftやHTC Viveでは13歳以上を対象年齢としており、家族連れでイベントに訪れたときに子供だけ体験できないという状況もあります。

 そんな「VRの面白さをさわりだけでも知ってほしい」というときに役立つのが、プラネタリウムのようなドームに映して見るという選択肢です。ここ数年、VRヘッドマウントディスプレーが流行し始めてから、イベントで使うポータブルドームのニーズも高まっており、今年のCESやE3などの展示会でも出展を見かけました。

 6月29日にはVR専門のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」で、第1期のDemo Dayが実施されました。その中でハシラスの1コーナーとして展示していたのが、直径6mという巨大なサイズのお手製エアドーム「3Qドーム」でした。

 開発者は、手作りプラネタリウムの製作者として知られるヒゲキタさん。通常のドームは180度の半球状態ですが、この3Qドームは210度という30度ぶんだけ水平以下の映像が見られます。

 プラネタリウムの単純に見上げる夜空だけを映していればいい状況とは異なり、VRコンテンツでは下方向も重要になります。例えば飛行機で飛んでいるシチュエーションでは、なるべく下方向も見たいはず。みんなで同じ360度映像を見つつ、そうした欲求も満たしてくれるのが3Qドームだったりするのです。

魚眼レンズをつけた1台のプロジェクターでドームの前方に映像を投影する

 ヘッドマウントディスプレーから少し離れますが、横浜にあるDMM VR Theaterも「みんなで見るVR」の一環といえるでしょう。同劇場は「ペッパーズゴースト」の仕組みを応用し、何もない空間にCGを出現させて、まさにその場にいるように見せるというVRな舞台装置を備えた特殊な存在です。2015年9月のオープニング公演では、ミュージシャンの故hideをCGで舞台に復活させて話題になりました。

 そのDMM VR Theaterにて6月30日〜7月31日まで、あの船橋市在住の梨の妖精こと「ふなっしー」が主演をつとめる舞台「レジェンドオブふなっしー」を実施してまして、その舞台初日を取材しました(PANORAの記事)。舞台にCGキャラが立って動き回るのは、既存の映画や演劇にはない新鮮な感覚。「体験しないとその価値がわからない」のはVRヘッドマウントディスプレーと同じなので、ぜひ現地で見てほしいです。

初日の舞台あいさつでは、同作品の声優を務めるふなっしーと小島瑠璃子さんが出演していた

 というわけで、VRヘッドマウントディスプレーという機材はおろか概念もまだ定着していない黎明期だからこそ、みんなで見るVRも非常に高まりそうですね。


著者近影。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのプレスカンファレンスで最前列を確保したVRおじさん。なんとキラキラした瞳で小島監督を見つめる様子が、ライブ中継で全世界に配信されていました! 「鳥肌立ちっぱなしだった!!! 小島監督が持っていった感はすごいw」と感動してました!

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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