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いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第7回

Astell&Kernの次世代中核機種

ハイレゾ機を買うなら、この線を攻めたい「AK300」を聴く (3/3)

2016年07月03日 19時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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エントリーではAK70が登場したが、世代間の差はやはりある

 Astell&Kernのエントリーモデルとしては、先週AK70という新機種が登場し、7月15日の国内投入が予定されている。こちらはCS4398を採用するなど、同じAKシリーズでも第2世代機に近い仕様となっている。国内価格は7万円弱。

AK 70は左端の機種。中央のAK240、右がAK380とAK380 AMPの組み合わせ

 発表会でAK70の音も軽く聞いてみたが、第3世代とは少し傾向が違った。情報量の豊富さや抜けのいい中高域を特徴としたAK300シリーズに対して、AK70はもう少し輪郭のしっかりした骨太のサウンドだ。好みの問題はもちろんあるが「分離の良さ」や「レンジの広さ」など、一般的な意味でのクオリティーではやはりAK300シリーズが有利な印象だ。

 AK380と比較した場合でも価格差を考えると、AK300は十分に納得できる。いや数十万の差がある機種と考えると、その差はかなり小さく、驚くほどだ。音の透明感だったり、解像感が高く、シャープで引き締まった低域だったりと、AK380シリーズのテイストをしっかりと継承している。AK320との比較はできなかったが、その差はさらに縮まるのではないか。

 もう一つ気になるところとしては、ウォークマン ZX2がある。価格差も1万円程度だ。ここではあえて優劣をつけることはしない(筆者の中では決まっている)が、まず音の傾向にかなり差があるという印象だ。

 NW-ZX2は全体的に骨太というか、しっかりした音で、低域は量感があり、かつベースやリズム帯などを硬くしっかりと出す。アタックも強く出る。楽曲が前へ元気に出てくる感じだ。一方AK300は、残響や音場、音の位置など、空間を克明に描写するタイプ。特に中音・高音域の解像感というか、描写力が高く、音のニュアンスをより細かな筆で書きこんでいる印象だ。音の切れ込み感、S/N感、セパレーションなど、現代的なハイレゾ音源の魅力を存分に実感できる製品に仕上がっている。

 ポータブル機としてみると、再生フォーマットや音質だけでなく、軽さや持ちやすさやバッテリー駆動時間などトータルの性能を見る必要があり、デザインなどの好みもあるだろう。そのあたりから総合的に判断したい。ちなみにAK300は幅がZX2より10mm近くあるが、薄く30g程度軽い。ただし縦長のZX2は手のひらへのおさまりがいい面もある。

AK320のほぼ半額だが、驚くほど差がない?

 AKシリーズには、入門機的な位置づけの「AK 70」という機種がある。量販店での実売価格が4万円台前半まで下がっていたAK Jrの領域を置き換える製品だ。なかなかお買い得な機種で、バランス駆動にも対応しており、本体のUSB出力からUSB DACにデジタル信号を出せるという特徴もある(ファームウェアアップデートで他の機種でも利用可能になる見込み)。

 AKシリーズの特徴である、ヘッドフォンのバランス駆動、専用オプションを通じた拡張性、AK Connect(DLNA経由のネットワーク再生)といったものにも対応する。

 一方、AK300の発売と前後する形で、第2世代機の「AK100II」「AK120II」の出荷も終了しており、今後は流通在庫のみとなるようだ。AK 70がAK Jrなら、AK300はこれらの機種の領域を引き継ぐことになる。上述したようにAK300は、上位機の機能をほぼ遜色なく搭載しつつ、搭載メモリーや内蔵DACの数など最小限のスペックダウンで、半額近い低価格化を実現した。

 AK 70もまた、機能と価格を考えるとかなり魅力的な選択肢ではあるが、少し本体は軽く、ディスプレーも小型になるため、若干コストを抑えた機種と感じられなくもない。その点、AK300デザインや質感含めて、非常に高水準であり、所有欲という面でも抜群。音質も最先端であり、AKシリーズらしさを知るならぜひAK300から始めてみてはどうかと勧められる。

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