セイコーエプソンが発表した2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績は、売上高は前年比0.6%増の1兆924億円、営業利益は28.4%減の940億円、税引前利益は30.9%減の915億円、当期純利益は59.3%減の457億円となった。
また、2016年度の業績見通しは、売上高が前年比5.7%減の1兆300億円、営業利益は25.6%減の700億円、税引前利益は24.6%減の690億円、当期純利益は18.0%増の540億円とした。
2014年度連結業績では、過去最高の利益を達成したセイコーエプソンだが、SE15後期 新中期経営計画の最終年度となる2015年度、そして、新たな長期ビジョン「Epson 25」と、そのアクションプランとなる中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画」のスタートとなる2016年度は、いずれも減益という内容でスタートすることになる。
数字上では厳しい内容に見えるが、セイコーエプソンの碓井稔社長は、将来の成長に向けた投資が着実に進展していることを強調。さらに、2014年度実績の事業利益が1012億円、2015年度の事業利益が849億円と、163億円のマイナスであることについても、「177億円の為替影響を除けば、事業利益は前年比増益の1026億円になる。しかも、ここには、将来の成長に向けた戦略的投資、費用投下を実施した分を含めている」と、戦略的投資を行いながらも、実質的な成長を遂げていることを示してみせる。
「2015年度は、世界経済の懸念が深まるとともに、先進国では競合他社の価格プロモーション強化による競争環境の変化が見られ、事業環境は厳しさを増した。とくに下期に厳しさが増してきた。だが、将来成長に向けた基盤づくりを念頭におき、既存領域のビジネス転換と、新規領域の開拓をやり遂げるための様々な施策に取り組んだ。それを成果に結びつけた」とコメント。
「そのひとつが、将来成長を担う製品の開発を進展させたことである。プロジェクターでは、レーザー光源の開発を終え、いままでエプソンが手薄だった、高光束プロジェクター領域の販売強化に向けて、2016年度に新製品を投入する予定だ。
また、ロボティクスでは、アームを折りたたむことができるコンパクトな6軸ロボットを投入。プリンティング分野では、ラインヘッドを搭載したインクジェットプリンターの開発を進め、新たな中期経営計画の期間内に、早期に投入できる準備も進んだ。環境と機密保持に貢献するオフィス向けの製紙機のPaperLabといった新たな製品も開発した」と、その進捗と成果に自信をみせた。
また、2015年度は、設備投資が前年に比べて239億円増の694億円としたこと、販売促進費や広告宣伝費は前年比63億円増の549億円になったこと、研究開発費は53億円増の531億円としたことにも言及。「フィリピンやインドネシア工場の生産能力増強により、プロジェクターやプリンターの増産に向けた体制づくり、オフィス領域におけるブランド認知の向上や、大容量インクタンクモデルの浸透など、今後の成長をけん引する体制づくりに取り組んだ」と振り返った。
2015年度のセグメント別業績は、プリンティングソリューションズ事業の売上高は前年比0.8%増の7363億円、営業利益は6.0%減の1047億円。そのうち、インクジェットプリンターをはじめとするプリンター事業の売上高が1.5%増の5189億円、商業用や産業用インクジェットプリンターなどのプロフェッショナルプリンティング事業が1.3%増の2016億円となった。
液晶プロジェクターやスマートアイウェイなどが含まれるビジュアルコミュニケーション事業の売上高は前年比3.9%増の1840億円、営業利益は19.7%減の155億円。
ウェアラブル・産業プロダクツ事業の売上高は1.8%減の1704億円、営業利益は5.0%減の98億円。そのうち、ウォッチや健康・スポーツ分野向けデバイスなどのウェアラブル機器事業の売上高が6.4%増の607億円、産業ロボットなどのロボティクスソリューションズ事業が1.3%減の154億円、水晶デバイスや車載向けCMOSデバイスなどのマイクロデバイス事業が5.6%減の1018億円となった。
その他事業の売上高は前年比1.1%増の14億円、営業損失は5億円の赤字となった。
なお、プリンターの販売台数は、2015年度実績で1420万台に達しており、2016年度は前年比6%増を目指し、年間1500万台規模にまで拡大させる考えだ。
一方、2016年度のセグメント別の業績見通しは、プリンティングソリューションズ事業の売上高は、前年比5.6%減の6950億円、営業利益は11.2%減の930億円。そのうちプリンター事業の売上高が5.8%減の4890億円、プロフェッショナルプリンティング事業が6.8%減の1880億円を見込む。
ビジュアルコミュニケーション事業の売上高は前年比6.0%減の1730億円、営業利益は3.8%減の150億円。
ウェアラブル・産業プロダクツ事業の売上高は4.4%減の1630億円、営業利益は12.0%増の110億円。そのうち、ウェアラブル機器事業の売上高が7.8%減の560億円、ロボティクスソリューションズ事業が16.8%増の180億円、マイクロデバイス事業が5.7%減の960億円とした。
その他事業の売上高は前年比28.8%減の10億円、営業損失は10億円の赤字としている。