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Apple Geeks 第181回

WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(1)

2016年06月17日 18時00分更新

文● 海上忍(@u_shinobu)、編集●ハイサイ比嘉

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新ファイルシステム「APFS」(Apple File System)

 個人的に、WWDC 2016最大の事件は「Apple File System」。略称は先客(Apple Filling Protocol/Apple File Share)があるために「APFS」となるこのファイルシステム、モノがモノだけに基調講演では触れられなかった(筆者が存在を知ったのはウェブサイト上のドキュメント)。確かに、現在のHFS+が登場してから四半世紀以上が経過、枯れたアーキテクチャとして定着しているが、問題点がないわけではなかった。それを解決する次世代のファイルシステムとして、颯爽と……ではなくひっそりと姿を現したのだ。

 その特徴をかいつまんでいうと、「64bit i-nodeナンバーの導入」と「暗号化機能のネイティブサポート」、「クラッシュプロテクション」、「Sparseファイルのサポート」、そして「フラッシュ/SSDの最適化」だろうか。容量的には当面問題ないであろうHFS+だが、OS X改めmacOSのほかにiOS、watchOS、tvOSとApple製品のすべてのOSで採用予定とのこと、レガシーに見切りをつけるのが早いAppleらしさが見てとれる。

OS X改め「macOS」、コード名もカリフォルニア地名シリーズは終了し「Sierra」(スペイン語で「山脈」)となった

 そのうち最大の変化は、やはり暗号化機能のサポートだろう。OS X Lion以来ディスクボリューム全体の暗号化はサポートしてきたものの、ファイルシステムとしてはファイル単位での暗号化をサポートせず、一方ではiOSでファイル単位の暗号化を実現していた。APFSではこれを統合し、メタデータを含め暗号化することが可能になった。共通鍵暗号方式(AES-XTS/AES-CBC)により、鍵なし/鍵1つ/鍵複数の設定が可能なこともポイントだ。

 クラッシュプロテクションに関する記述はあっさりとしたものだが、Copy-On-Writeという言葉から推測すると、「Time Machine」にも採用されているスナップショット技術の一種のことだろう。Copy-On-Write方式では、ファイル本体はコピーせずボリューム上の位置情報のみを管理領域へ記録、ファイルに上書き/削除などの変化が生じたときには変更前のデータをスナップショット管理領域へ記録する。HDDでも利用可能だが、ディスクI/Oの発生頻度が高くなるためFlash/SSD向きとのこと、実質的にSSD搭載のMacでの利用に限定されそうだ。

APFSには、Time Machineと同じCopy-On-Write方式を利用したスナップショット機構が用意される(画面はEl Capitanのもの)

 いずれにせよ、APFSの正式リリースはmacOS Sierra公開からしばらく後、2017年のこと。フォーマットが必要になるため、OSの新規インストールまたは新機種購入のタイミングでの導入が多いと考えられることから、すぐには普及しないだろう。


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