かんぽ生命、東大医科研も登壇、「IBM Watson Summit 2016」基調講演(後編)
スバル「アイサイト」の進化も支える、IBM Watson活用事例
2016年06月09日 07時00分更新
5月25日の「IBM Watson Summit 2016」基調講演では、国内におけるWatsonのビジネス活用事例が多数紹介され、IBMのコグニティブソリューションがすでに“実用段階”にあることを強くアピールした。
ソフトバンクの業務システムにおけるWatson活用を紹介した前編に続き、本稿後編では、富士重工業(スバル)、かんぽ生命保険、東京大学医科学研究所において現在取り組まれているWatson活用が語られたパネルディスカッションの模様をお届けする。
スバル:「アイサイト」自動運転をより高度化し、魅力的な運転体験を
富士重工業(スバル)の自動車が搭載する「アイサイト」は、「自動ブレーキ」や「車線はみ出し抑止」などでドライバーの安全な運転をアシストする技術だ。27年前から開発に取り組み、6年ほど前から一般車で広く展開。現在では国内で販売されるすべてのスバル車がアイサイトを装備しているという。
長年の研究開発と改良を通じて、アイサイトの安全性能は大きく向上してきた。アイサイト搭載車/非搭載車(同一車種)のデータ2万件を比較したところ、アイサイト搭載により61%もの事故率削減につながるという実績が出ている。「それでもまだ4割残っている。そこでIBM Watsonの力を借り、さらなる事故削減を目指す取り組みを進めている」(武藤氏)。
同社では、世界中のさまざまな交通環境下における走行データを収集しており、すでに200万kmぶんの走行データを蓄積している。この膨大な走行データをWatsonを活用して解析し、自動運転のレベルアップを加速させていく計画だという。「将来的には、ディープラーニングの世界をわれわれの技術に取り込み、『予知』のレベルまで技術を高めていきたい」(武藤氏)。
武藤氏によると、スバルが考え、製品化していく自動車の未来は「実は『無人運転』とは対極にある」のだという。あくまでもドライバーが搭乗することを前提に、それをテクノロジーでサポートして「安心と愉しさ」を提供する、それがスバルの目指すところだ。「自動運転だけでなく、車がもっているさまざまな要素の中で人工知能をどう役立て、魅力的なものにしていくか。それも考え続けている」(武藤氏)。