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AWSの2TBメモリインスタンスでの「S/4 HANA」本番稼働も可能に

「SAP HANA SPS12」発表、中堅企業向けHANAも新たに提供

2016年06月01日 06時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 SAPジャパンは5月31日、SAP HANAプラットフォームの最新版「SAP HANA SPS12(サポート・パッケージ・スタック12)」を発表した。エンタープライズレベルの信頼性と、データセンタークラスの規模に対応する多様な機能が追加されている。中堅企業向けの新たなエディションも投入されている。

SAPジャパン VP プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏

SAPジャパン プラットフォーム事業本部エバンジェリストの松舘学氏

 SAP HANAは、年に2回のSPSリリース(バージョンアップ)を行うことで、着実な機能強化を図ってきた。SAPジャパン プラットフォーム事業本部エバンジェリストの松舘学氏は、「最近のSPSリリースでは、奇数バージョンで新機能を搭載し、偶数バージョンはその機能の安定化を図っている。今回もそれを踏襲したもの」だと説明する。

 具体的には、今回のSPS12ではミッションクリティカルシステムへのHANA適用を可能にするため、昨年12月リリースのSPS11で実施した「ITのシンプル化」「インサイトの獲得」「イノベーションの実現」のための新規機能を安定させ、さらに拡張している。長期保守にも対応するほか、エンタープライズレベルの信頼性と、データセンタークラスの規模に対応した新機能が追加されている。また同時に、中堅企業/中規模システム向けのHANAとして新エディションも提供を開始する。

「SAP HANA SPS12」の機能強化ポイント概要

「AWS X1インスタンス」への対応、OSS/Hadoopとの連携強化など

 「ITのシンプル化」に関しては、パフォーマンス管理ツールの1つとして新たに「Capture & Replay」ツールを提供する。このツールでは、本番稼働中のシステムで実際のワークロード(SQLクエリ)をキャプチャし、別のシステム(移行先のターゲットシステムなど)でそのワークロードをリプレイできる。リプレイ時のログは「Workload Analyzer」ツールにより、不具合が生じていないかどうかを解析できる。これにより、HANAやアプリケーションのバージョンアップを実施する際に、本番環境を停止させることなく、動作検証が実施できる。

 なお上記の新規パフォーマンス管理ツール群はオンプレミス向けに一般提供を開始するほか、クラウド向けにもベータプログラムとして提供する。これにより、オンプレミスからクラウドへの移行検証にも利用が可能。

 「パフォーマンス管理ツールは、アプリ変更時の所要時間とコスト削減のために、ワークロード分析のシミュレーションを可能とするもので、将来的には、SQLの最適化提案機能なども提供することになる」(松舘氏)

パフォーマンス管理ツールの強化

 また、クラウド環境への対応拡張として、メモリ容量2TBを備えるAmazon Web Services(AWS)の新しい「X1インスタンス」をサポートした。これにより、S/4 HANAの本番環境など、HANAを利用する大規模な基幹系/情報系システムの本番稼働もAWS上で可能になる。また「Microsoft Azure」では448GBまでのインスタンスで本番環境稼働をサポート、新たにサポートしたVMware vSphere 6.0環境では、128vCPUおよび4TBまでのインスタンスでの利用が可能となっている。

クラウド環境への対応を拡張。メモリ2TBを備えるAWSのX1インスタンスをサポートしている

 「インサイトの獲得」については、オープンソースプロダクト/Hadoopとの連携を強化している。Hadoop HDFSアダプタを拡張して「Apache Spark」上にあるデータの取り扱いを強化したほか、HANAの管理ツールと、インメモリ分散基盤である「Apache Spark」の管理ツール「Ambari」との統合をさらに進めた。またストリーム分析機能において、オープンソース分散メッセージ基盤であるApach Kafkaとの統合も可能にしている。

 「Hadoopに関しても、昨年秋の機能強化に続いて連携を強化しており、ビッグデータおよびストリーミングデータ連携を拡張した。Hadoopとの統合、メモリ効率利用によるTCO削減といったメリットを提供できる。HANAは特徴的なデータ構造を持っていることから『オープンソースのエンジニアにはわかりにくい』という声も上がっていたが、SparkやHadoopとの連携強化を通じてそれ解決できる。SAP HANA SPS12では、オープンソースのエンジニアも活用できる環境を広げていく」(松舘氏)

オープンソースプロダクト/Hadoopとの連携強化

 「イノベーションの実現」では、グラフデータ処理機能の一般提供を開始した。GUIによる操作ができるほか、これまで“ブラックボックス”だったテキストマイニングのインデックスが可視化され、データサイエンティストが後からルール変更できる仕組みになっている。加えて、地理空間データを使用したアプリケーションの開発環境、データ作成やエンタープライズモデリングを効率的に管理するモデリング環境も提供する。

「最大3年間の現行版長期利用」と「半年ごとの最新版利用」が選択可能に

 ミッションクリティカルシステムへの適用を考え、今回から、既存のSAP HANAソフトウェア環境を最大3年間継続利用することもできるようになった。長期保守を必要としない顧客は、従来どおり年2回リリースの最新版を導入していくこともできる。

 SAPジャパン VP プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏は、「グローバル1万社のHANA導入実績に基づき、顧客の要望を聞いて、新たな保守プログラムを用意した。長期保守は、特に日本の顧客からのニーズが大きく、SAPが日本市場にフォーカスしていることの表れである」とコメントした。

 また、中堅企業/中規模システム向けの「SAP HANA Edge Edition」も新たに用意された。これは、SAP HANAに分析ソフトウェアの「SAP Predictive Analttics」をパッケージしたエディションで、32GBのインメモリデータベースと、128GBのダイナミックティアリングをサポートしている。パートナーからの間接チャネル販売での提供となる。

 「HANAと言えば大企業向けのイメージが強いが、このエディションにより、中堅企業でも簡単にビジネスを分析し、将来を予測できるようになる」(松舘氏)

中堅企業向けのHANA、「SAP HANA Edge Edition」

 なお、Edge Editionの販売価格については明らかにされていないが、鈴木氏は価格的にも、パッケージ内容的にも、中堅企業向けに適したものになると述べ、拡販のために販売パートナーとの取り組みを強めていく方針だと述べた。

 「現在、SAPの売上高の50%以上は『ERP以外』のビジネスになっており、そのSAPの革新はHANAが担ってきた。グローバルでは1万社以上が採用し、国内の導入企業も飛躍的に伸びている。インメモリデータベースのサービスだけでなく、プラットフォームサービス、アプリケーションサービス、またデータ統合サービスをひとつの統合プラットフォームで提供するのが特徴。今後も継続的にイノベーションを提供していくのと同時に、SAPの各種アプリケーションでもHANAの技術がさらに活用されていくことになる」(鈴木氏)

鈴木氏は、HANAはSAPのイノベーションを牽引する中核的なテクノロジーになっていると説明した

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