5月17日、日本マイクロソフトは最新クラウド戦略を説明するプレスイベントを開催した。米マイクロソフト コーポレートバイスプレジデントの沼本健氏は、先般行なわれたBuild 2016を振り返りつつ、同社の包括的なクラウドサービスをアピールした。
包括的なサービスを提供するIntellgent Cloud
幅広いサービスポートフォリオとオンプレとの親和性を武器にエンタープライズでの導入実績を高めるMicrosoft Azure。沼本氏は企業のデジタルトランスフォーメンションに資するクラウドの選定においては、アプリケーション、インフラ、アドバンスドワークロードの3つのレイヤーが重要になると指摘する。
マイクロソフトが提唱している「Intelligent Cloud」では、Office 365やMicrosoft Dynamics、Enterprise Mobility Suiteなどのビジネス、モバイル、セキュリティなどのSaaS、Azure+Azure Stack+Operation Managementなどのクラウドインフラ、そしてアプリケーション開発やデータ分析、IoTといった先進的なアドバンスドワークロードを包括的に提供する。これにより、企業やスタートアップは差別化や俊敏性、コスト削減などを実現。沼本氏は、「裾野の広い技術のポートフォリオを三位一体で提供している」とアピールする。
包括的なMicrosoft Cloudは現在、Fortune 500の企業の85%以上が導入している。複数のサービスを利用しているユーザーが7割に達しており、昨年に比べて13ポイントも伸びているという。ガードナーのマジッククアドラントの19カテゴリでリーダーになっているほか、AWSやGoogleを大きく超える32のグローバルなリージョンを抱えており、ハイパースケールのクラウドプレイヤーとして大きな存在感を得ているという。
「Enterprise Mobility」や「Xamarin」をアピール
沼本氏が成長が一番速い製品の1つとして紹介したのが、モバイル+クラウド環境を前提にIDやアクセス管理、モバイルデバイスやアプリケーションの管理、データ保護、脅威管理などを提供するMicrosoft Enterprise Mobilityになる。4月には企業のシャドウITを検出し、可視化や脅威検出、データ保護、コンプライアンスなどを実現するMicrosoft Cloud App Securityも追加したという。
もう1つ紹介したのが、モバイルファーストを推進する「Xamarin(ザマリン)」だ。先般のBuild 2016で発表された「Xamarin for Visual Studio」は、Visual Studio上でモバイルネイティブなアプリケーションを開発できるツール。「カメラやGPSなどモバイルデバイスの機能を利用できる」とのことで、Windowsのみならず、iOS、Androidをサポート。さらにもともと有償の商用製品だったものが、Xamarinの買収を経てVisual Studioに無償追加されたということで、Build 2016の会場で発表されたときも大きな歓声が上がったという。現在はSlackやPinterestといったスタートアップのほか、国内では三井住友銀行に採用されているとのこと。
その他、沼本氏はアドバンスドワークロードに位置づけられるAzure IoTやビットアイル・エクイニクスで検証サービスを開始しているAzure Stackの事例も紹介。サービスを提供するのみにとどまらず、パートナーや顧客との共創を進め、ビジネスに寄与しているとアピールした。
日本でのクラウドの導入率はどの調査でも20%を超えることはなく、伸び率が鈍化しているというレポートもある。しかし、沼本氏は「われわれに踊り場感はない」と断言する。新規のサブスクリプション数、SQLデータベースの数、Active Directoryのユーザー数、Visual Studio Team Servicesの登録の開発者など、Microsoft Cloudではあらゆる指標が伸び続けているため、キャパシティの増設に追われているのが現状だという。さらに同社がパブリッククラウドのみにこだわっているわけではなく、オンプレミスとクラウドのメリットを享受できるハイブリッドの世界観を提供しているのも大きいようだ。