マイクロソフトテクノロジーを中核としたシステムインテグレーション(SI)を提供するアバナード。顧客の「デジタル化」推進を支援するために、まず自社でのデジタル化を推し進めてきたという。同社のデジタル化を率いる“デジタルリード”のアシーシ・クマール氏に聞いた。
まずは自社のデジタル化を断行、新たな企業ビジョンとスキル人材を整える
――まずはクマールさんの役職、「デジタルリード(Digital Lead)」について教えてください。「デジタル化の牽引役」だと思うのですが、具体的にはどんな責務を負っているのでしょうか。
クマール氏:わたしはグローバルな事業成長を促すCGOの職責と同時に、デジタルリードの職責も担っている。このデジタルリードは、社内におけるデジタル化の戦略、そして顧客に提供するデジタル化ソリューションについて責任を負う。CGOよりもデジタルリードのほうが、より日々のビジネスに直結していると言えるだろう。
社内のデジタル化と社外のデジタル化は大きく関連している。われわれは「顧客の“デジタル変革(Digital Transformation)”をサポートするためには、まずは社内におけるデジタル変革の実現が必須である」と考えている。
――そこで、まずは社内のデジタル変革からスタートしたわけですね。具体的に、どのような変革を進めたのでしょうか。
クマール氏:まずは、アバナードとして掲げる企業としてのビジョンを変更した。新しいビジョンは「リーディングデジタルイノベーター」、つまりデジタルイノベーションを先導する存在になる、というものだ。これまでのアバナードは“システムインテグレーター”だったが、現在は新たなビジョンの下、“デジタルイノベーター”という位置づけでビジネスを展開している。
“イノベーター”への変革は、将来的な市場の変化に先手を打つものだ。現在はまだSIのビジネスも順調だが、今後の成長可能性はデジタル変革の領域にあると考えている。従来のSIビジネスでは顧客の仕様書に応じてシステムを構築すればよかったが、デジタル変革の領域では、顧客は新たなアイデアや可能性を提案してくれるパートナーを求めている。
そこで、アバナードでは「顧客のデジタル変革における先導役」たらんとしている。たとえばIoTやクラウド型機械学習といった新しいテクノロジーを駆使して、売上向上や効率改善につながる「新たなシナリオ」がどのように描けるのかを、顧客に提示していこうとしている。
――まずは企業としてのビジョンを刷新したと。それから、ほかにどんな変革を行いましたか。
クマール氏:過去18カ月(1年半)の間に、新しいタイプの人材を採用してきた。「デジタルストラテジスト」「データサイエンティスト」「エクスペリエンスデザイナー」――こうした、これまでのアバナードにはいなかったタイプの人材だ。デジタル戦略やデータ戦略、顧客企業が提供するサービスのカスタマーエクスペリエンスを包括的に検討するスキルを備えた人材だ。
さらにCTIO(Chief Technology Innovation Officer)の下、「i-Day(イノベーションデイ)」というプログラムも展開している。これは、アバナードの多彩な専門家チームが顧客先に出向き、顧客と共に新たなソリューションのアイデアを検討し、アジャイルなかたちでPoCを実施して、そのビジネスアイデアの事業価値を検証するというものだ。
たとえばある食料品スーパーの顧客では、店内で収集した来店客の行動データをどう活用するか、アバナードのチームと顧客とがデータハッカソンを行った。その結果、来店客がどの棚の前に立ち止まり、どんな商品を手に取ったか、購入したかどうか、といったデータから何が読み取れるかを考え、現在の店舗オペレーションの改善につなげるためのアイデアが生まれた。
そしてアバナード社内のITも、大部分をクラウド化するという変革を行った。デジタルワークプレイスのプラットフォームとして「Office 365」を採用し、29カ国にいる社員間のコラボレーションも可能にした。「Skype for Business」の利用も活発で、オフィスにいる社員も顧客先にいる社員も、円滑なコミュニケーションを図ることができる。
このように、まずは自社をデジタル変革するため、アバナードでは「新しいタイプのスキル」「新しい働き方」「新しいツール」を整えたというわけだ。