今回のことば
「東芝メディカルシステムズの売却は、娘が嫁いだ父親の気分。新たな嫁ぎ先で成長すると信じている。陰ながら応援したい」(東芝次期社長に決定した綱川智副社長)
次期社長は医療事業を成功させた人物
東芝は、綱川智副社長が次期社長に就任する人事を発表した。6月下旬に開催予定の定時株主総会終了後の取締役会で正式決定する。
綱川次期社長は、東芝入社以来、その経歴はヘルスケア事業一筋。将来の事業の柱と期待されていながらも、経営再建の切り札として、キヤノンに売却された東芝メディカルシステムズの社長も歴任している。
「会社員生活のなかで最大のできごとが東芝メディカルシステムズの売却。評価していただいた企業にヘルスケア事業が移ったことで、日本の強い産業が、さらに世界に出て行くことができる。これは、医療産業にとってもよかったと信じている。東芝メディカルシステムズの売却を振り返ると、まさに娘が嫁いだ父親の気分。新たな嫁ぎ先で成長すると信じている。陰ながら応援したい」と、いまの心情を語る。
キヤノンへの売却金額は、6655億円。台湾の鴻海精密工業がシャープの株式を66%取得した費用が3888億円であったことことに比べると、その金額がどれぐらい大きいかがわかるだろう。東芝は、これによって、債務超過に陥る事態を免れることができた。
ヘルスケア事業を育て上げた手腕は社内外から大きく評価されている。次期社長の選定作業を進めてきた東芝 指名委員会の小林喜光委員長は、「東芝グループの舵取りを任せる人材として、グローバルに展開する医療事業を優良事業として成功させてきた体験」をあげてみせた。
柱事業の経験皆無については「餅は餅屋」
だが、裏を返せば、現・室町正志社長が推進してきた「新生東芝」の柱となる「エネルギー」、「社会インフラ」、「ストレージ」の3つの事業領域の経験はない。
その点について、綱川次期社長は、「エネルギー、社会インフラ、ストレージという3つの注力事業への集中を徹底していく」と語りながら、「いま大切だと感じているのは『餅は餅屋』という言葉。東芝では、自主自立化を進めており、それぞれの事業のオペレーションは各カンパニー社長が進めることになる。プロはプロに任せる。私は社長として、細かいことに口出しをさせず、各カンパニーの自社自立を支援して、大所高所からモノをみることにしたい。私に求められているのは、しがらみのない経営合理性に基づいた経営判断と、自由闊達な風土を作ることである」と語った。
また、売却された綱川次期社長が得意とする医療分野においても、東芝は新たな一手を打つ姿勢を見せる。
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