デスクトップ向けの
Bristol Ridgeは6月発表か?
ここからは今後の話になる。既報の通り、AMDは今年4月にBristol RidgeベースのAPUの存在を発表。まずHP ENVY x360に採用され、今年のCOMPUTEXで公式に発表するとしている。
この発表ではあくまでもモバイル向けの製品のみが言及されていたのだが、そもそもAMDの製品ロードマップ自身、今年はデスクトップ向けにもBristol Ridgeを投入すると明確にしており、COMPUTEXのタイミングで少なくともデスクトップ向けの発表が行なわれるのは間違いないと思われる。
というのは、マザーボードベンダーもこのタイミングでSocket AM4のマザーボードを発表するはずなので、そうなるとCPUの発表なしというのはありえないからだ。
そしてデスクトップ向けBristol Ridgeのラインナップも出てきている。製品名は怪しいのだが、9000番台は間違いないらしい。ラインナップとしては、4P+8CUのA10グレードが2製品、4P+6CUのA8グレード2製品、2P+4CUのA6グレード1製品、そしてGPUなしのAthlon X4向け3製品となっている。
動作周波数は低めで、ハイエンド(図ではA10-9850K?と記している)が定格3.6GHz/ブースト4GHzということで、おおむねKaveriのA10-7850Kと同等である。ただGPUの方は948MHz駆動となっており、トータルの性能では多少なりともA10-7890Kを上回ると見られている。その最大の理由はDDR4のサポートである。
これはBulldozerシリーズの一連のコア全体の話でもあるのだが、基本高スループットを目指したコアなので、とにかくメモリーアクセス帯域が足りないと性能が出ない。
Kaveriではそのためにいち早くDDR3-1866やDDR3-2133をサポートして性能の引き上げに勤しんだわけだが、GPUコアとメモリー帯域の取り合いになるというAPUの基本的な制約はいかんともしがたい。
この制約そのものはBristol Ridgeでも変わらないのだが、Socket AM4ではDDR3とDDR4の両対応になっており、すでにDDR4-2400モジュールは普通に入手可能という状況である。
実際、モバイル向けはあまりオーバークロックの要素もないので正規に入手できるDDR4-2400までのサポートで製品発表が行なわれそうだが、デスクトップ向けはより高速なDDR4-2666までサポートになる可能性もある。
DDR4-2666ともなると、DDR3-1866と比較して43%ほど帯域が引き上がるわけで、これはCPU側の性能底上げにも効果的だろう。もちろんGPU側にとっても、帯域増加は性能向上に抜群の効き目がある。
Bristol RidgeではCPUコアの構成が基本Carrizoと同じなので、2次キャッシュは2MBに縮小されており、これによって性能が落ちるシーンもあるだろうが、トータルとしてはGodavari世代よりも性能引き上げが可能になる見込みだ。
ちなみに、その先の話はまだ明確ではない。Zenに関しては、最初のサンプルがすでに出て評価開始中、という話もわずかに出てきてはいるし、実際時期的には出ていないとおかしい。
当初の動作周波数は3GHz前後らしいが、これは連載333回で書いた数字とほぼ一致しており、とりあえず妥当な範囲だと思われる。問題はこれをどこまで引き上げられるかである。
この周波数の引き上げには時間を要する、という話は連載338回で解説したとおりだ。FinFETの世代の場合、とにかくコアの最適化には膨大な時間を必要としており、これを短縮するためには膨大なコストと人手がかかる。
あくまでも現在出ているのは本当に初期サンプル(Broadcomの例で言えば、最初に出てきた2.5GHz駆動のダイ)でしかなく、これを最終版(3GHz駆動)まで持っていくのに半年かかっている。
今は95Wの消費電力で3GHz(定格のみ:ブーストなし)というスペックは「まぁそんなものだろう」というのが率直な感想で、これを出荷時期までに例えば95Wで定格3.5GHz/ブースト4GHzに持って行けるかどうかはここから半年ほどの作業にかかっていると思われる。
噂では10月にSummit RidgeベースのAMD FXがリリースという話になっているが、個人的にはやや楽観的過ぎるように思う。早くてクリスマスあたりではないかと思われる。
2017年にはこのZenコアにGPUを組み合わせた第8世代APUが出ることになるが、個人的にはこのGPUコアにはPolaris 11あたりが統合されるのではないかと思う。その頃には、GPUは次のVegaアーキテクチャーが投入される時期であり、「APUは1世代前のGPUコアが統合される」というAMDのルールに適っているからだ。
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