羽田空港の発着数は2015年で約6万回。分刻みで離陸と着陸が実行されているわけだが、どのようにその効率が維持されているのか。
また2020年のオリンピックや観光受け入れ、地方との接続強化などの目的もあり、発着数年間9.9万回にまで増やすプランもでてきている。
そうなると、より効率的に、かつ安全に機能を維持していくのかが課題になり、今回は、その取り込みについての周知+実際の訓練や管制室での動きなどがツアーとして報道関係者に公開された。
そんなわけで、先端科学研究施設取材によく行くが、そういえば羽田空港を取材したのは、D滑走路建設中のときくらいという筆者が、フラフラッと散歩をしてきた。
ツアーの意図
安全とは、安心の前提条件としてあり、安全が確保されることで安心が生まれる。国土交通省全体のベースワークとも言うべきだろうか。国土交通省に関係する取材では、道路も河川も港湾も総じて、関係者は安全の先に安心があると語っていた。
空港で見てみると、発着もそうだし、巨大な物体に多くの人が乗り込み、また頭上を通過している。そのため、安全性を極めて大にする取り組みは常に行なわれているし、頻繁に見直しもされており、今回の「航空の安全・安心ツアー」は、その第一段階、つまり「安全」への取り組みを見て回るというものだ。
コースとしては、日本航空のフライトシミュレーター見学、全日本空輸の整備工場見学、管制シミュレーター見学、管制運用室・管制塔回廊見学となる。可能な限り撮影をオープンにする=安全に自信があるというわけだ(もちろん、セキュリティーの事情から一部撮影禁止のエリアもある)。
パイロット育成用のシミュレーター
実際にコックピットを再現し、さらに機体の傾きや振動なども再現するフライトシミュレーターからの見学となった。
シミュレーターはパイロットになる前に訓練として使用するものとうイメージが先行しがちだが、現役パイロットも定期的な訓練が義務付けられている。
またBASA(Bilateral Aciation Safety Agreement:航空の安全増進に関する協定)の項目のひとつにシミュレーターが含まれている。BASAは航空安全に関して、相手国が行なう検査や認証の相互チェック的なものだ。多重化することで、インポートとエクスポートの安全性を高める取り組みと認識しておくといいだろう。
さて、ロケットを打ち上げる映画を見たことはあるだろうか。その訓練風景では、まずトラブルが提示され、その解決に当たるというシーンがある。このフライトシミュレーターも同様だ。
機長と副機長が座るシートの後ろに専用端末があり、それを担当者が操作し、設定したトラブルを実行する。見学時には、One Engine Failure、つまり片側のエンジンが故障する展開と、視界不良時の着陸への対応を見ることができた。
おおまかな対応としては、One Engine Failureは、片方のエンジンが停止すると推力のバランスが崩れ、まっすぐ飛行できなくなる。そのため、ラダーペダルでまっすぐ飛行できるように調整しながら安全高度を目指す。
その後、自動操縦を利用しながらトラブルへの対処し、管制に緊急事態を宣言し、空港に戻る準備に入るといった流れだった。もちろんだが、トラブルの発生タイミングとその内容は機長と副機長に伝えられてないので、トラブル認識直後から迅速な対応能力を求められる。
次に視界不良。これはILS(Instrument Landing System、指向性誘導電波を利用した計測着陸装置のこと。地上施設から航空機を誘導できる)を使用したオートパロットによる進入を行ないつつ、手動でランディングギアとフラップの操作。チェックリストから着陸準備の最終確認を行ない、管制から着陸許可を受け取り、滑走路を視認後は手動操縦に切り替えて着陸といった対応だった。
2パターンとも、とくに慌てる様子もなく、淡々と対応していたのは、着実な知識と徹底した反復練習の結果だろう。ふと想定トラブルの設定について、気になったことがある。
エラーは複合的なものも起きうるし、同時発生もあれば、断続的に発生ということもあるわけだが、そういった設定は可能なのかと確認してみたところ「あり得ないような設定も可能で、それも訓練のひとつとして設定することがある」とのことだ。
ただ取材班がいるため、挙動の再現はオフになっていた。1990年にセガがリリースした体感ゲーム機「R-360」みたいに動くのかと気になったので、実際の挙動を体験してみたいし、操縦もしてみたいところだ。
なおR-360とは操作に合わせて筐体が座席ごと360度自在にグルグルと回るもの。最初のプレイでは、座席が逆さまになったり1回転するのにひどく恐怖したことを強く覚えている。ジェットコースターと同じで1度実行してしまえば、あとはイェフー!なのだが。