今後もSalesforce Village機能は拡張へ
さて、今後の方針はどう描くのか。
セールスフォースでは対象部門を順次拡げる考えだ。「現在は内勤営業がテレワークを行っているが、将来の外勤営業を育成する部署でもあるので、やがて皆キャリアアップしていく。外勤営業となると客先訪問も伴うため、東京に戻ることになってしまう。それとは別に、この場所で働き続けられるキャリアパスも作らなければいけないのが現状の課題。東京オフィスでも白浜町で働きたいという声は結構増えているので、今後はバックオフィス部門やテクニカルサポート部門の移転も考慮しつつ、来年度からは現地雇用も進めたい」(吉野氏)
また、パートナー企業として入居しているブイキューブも白浜町の機能を拡充するという。現状を語ってくれたのは、この地に2015年9月から移住している、営業本部 カスタマー・エクスペリエンスセンター第3チームを率いる篠崎太祐氏。
「ここでは本社の営業が顧客訪問した際の製品デモをリモートで引き受けている。そうして営業の負荷軽減に取り組んでいるのだが、今後は既存ユーザーのサポート機能もこの場所で強化する。これまで既存顧客のサポートは人員的にも大手顧客に限られていたのが正直なところで、接触できていなかったユーザーが急に解約ということもあった。サポート体制を強化することで予防する。少なくとも離脱の予兆を察知できるようにしたい」
現在、篠崎氏のほかに現地雇用4名が勤務しており、2016年度にはさらに2名増員する予定だ。
吉野氏は「白浜町の誘致への熱意は本当に強かった。その後も地元でのネットワーキングを手伝ってくれたり、誘致して終わりではないのがありがたかった」と語る。それに対して、和歌山県 企画部企画政策局 情報政策課の岩橋健一氏は「実のところ最初は県も“誘致する”ところまでの認識しかなかった。けれど“地方で生きる知恵を教えてあげるのが重要”と教わり、実際に取り組んでからも企業や移住者のサポートが重要だと実感できて――少しずつ支援体制を整えていったというのが本音だったりもする(笑)。セールスフォースというブランドで白浜町に注目が集まったのはありがたいので、この機会を活かし、地元企業とのビジネス協創も進められたら嬉しい」と応えた。
和歌山県としては「地方創生は最終的に“子供の教育”に行き着くと言われるが、和歌山県は京阪神も近く、若者の多くは大学進学とともに県外へ出てしまう。それでもいつか社会で学んだことを地元で活かしたいと思ってもらえるように、夢を持って働ける仕事を創ることで、Uターンのきっかけにしたい。白浜町がそのシンボリックな場所となるように取り組んでいきたい」と、そんな展望を描いている。

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