塩尻市・富士見町・王滝村が連携
県内全域へ、長野3市町村が切り開いた「地域テレワーク」
2016年03月18日 06時00分更新
「生産性」「ワークライフバランス」が向上
成果報告書では、テレワーク実施前後の考え方の変化についても報告されている。驚くことに、テレワークによる仕事の生産性は「高い」「やや高い」とした回答が、実施前の17%から実施中の78%へと大幅に増えている。地方でのテレワークは「集中できる」「喧騒から離れて落ち着く」という声が多いようだ。
実施前の期待効果としては「通勤時間/疲労の減少」が最多だったが、実施後はそれよりも「業務効率の向上」や「ワークライフバランス」をメリットとする回答が目立って増えた。
特に「ワークライフバランス」に対する満足度は41%から94%に倍増するという結果に。ただ、実証期間の短さからか、具体的な「ライフ」に落とし込むまでには至らず、就業時間外の過ごし方に「変化があった」とした人は半分ほどに留まった。「今後は、もっとライフについても考えられるようなワークショップを検討していく」としている。
一方、課題面では、実証前の事前調査では「長時間労働になるのでは?」「健康管理が難しいのでは?」という不安が多かったのだが、実施する中でそれらは解消。その代わりに「円滑なコミュニケーションが難しい」「情報セキュリティ確保に不安がある」という回答が急増した。
コミュニケーションについては、「本社の様子がわからない」など多少の問題が発生したため、途中からテレビ会議を常時接続する運用に切り替えている。その結果、「緊迫したコミュニケーションの必要性の少ない一般社員には非常に効果があった」という。一方で「ツールはあるが仕組みが不足している」という声も多かったようなので、予め運用方法はしっかり考える必要がありそうだ。
県内全域へ普及拡大
これらは結果の一例だが、こうして効果と課題がともに浮き彫りになったのは大きな成果といえる。が、成果としてはそれだけではない。この取り組みを機に、2月18日に「信州ふるさとテレワーク推進協議会(仮称)」が発足している(プレスリリース)。今回の実証事業構成員である自治体、企業、大学を中心に、長野県および県内22市町村が参加し、オブザーバーとしてさらに24市町村も名を連ね、今回の取り組みを「長野県全体のテレワーク」として推進するという。
3市町村の取り組みが、長野県全域への普及を切り開いたのだ。
2016年度は協議会が主体となり、今回の成果を他市町村に広める。2017年度以降は都市部から広く人材と仕事を呼び込み、2019年度には300人のテレワーカー誘致をめざすとしている。

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