このページの本文へ

「第2回 ICTビジネスモデル発見&発表会」レポート

粒揃いのアイデア連発!ICTビジネスモデルで競う全国大会

2016年02月22日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 「第2回 ICTビジネスモデル発見&発表会-Challenge Japan IoT Awarad 2015」の全国大会が2月16日~17日、開催された。

 ICT利活用で地域や世の中を変える「産業・技術・商品・サービス」の「アイデア・ビジネスプラン」を企業・大学から募集し、ピッチコンテストを実施。全国11カ所の地区大会を経て、優れた作品が全国大会へ進出し、グランプリ目指して火花を散らすイベントだ。

 主催は「ICTビジネス研究会 テレコムサービス協会」、共催は「全国ソフトウェア協同組合連合会」、後援は「内閣府」「総務省」「経済産業省」「中小企業庁」。投資するアイデア・ビジネスモデルを求めて、スポンサー企業9社も名を連ねた。

 全国大会は、「人人人」「子供大好き」「新しいプラットフォーム」「若い力」「食を考える」「美と健康」という6テーマにおいて、合計21チームが「アイデア・ビジネスプラン」を披露。

アイドルグループがエールを送る一幕も

 応援サポーターとして、アイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」も登場。各チームにエールを送るとともに、Pepperと早口言葉で勝負するなど、その華やかさと愛らしさで場を盛り上げた。

アップアップガールズ(仮)

各チームにエールを送ったり

Pepperと早口言葉で勝負したり

 一方、各ピッチはこちらにまで伝わってくるような緊張感だ。そんな中でも、寸劇を採り入れて笑いを誘うなど、各チームともプレゼンを創意工夫しており、見ていて飽きない発表となっていた。さらに、スポンサー企業が「これは!」と思えば、その場で支援表明の札を上げることも。否応なしに会場はヒートアップしていく。

 一通りのピッチが終わると、その場で選考。審査基準は「新規性」「実現性」「需要性」「目的性」「継続性」「拡張性」「地域貢献性」「プレゼン力」を5段階評価するのだが、思いの外、協議は難航。予定時間を若干超えて、「総務大臣賞」をはじめとする各受賞チームが発表された。

オリジナルなグルメマップが作れる「うまっぷ」

 女性起業家大賞を受賞したのは、自分のお気に入り・行きつけの飲食店をオリジナルなグルメマップとして登録・共有できる「うまっぷ」(富山高等専門学校)。

 「自分だけのオリジナルマップを作り、それを他人と共有できる点」「食へのこだわりが強い女子学生を対象としている点」「地域活性化に貢献する点」などを新規性とし、富山商工会議所青年部や地元商店街との連携・協力などを実現性としてアピール。

 各チームとも具体的な収益性などビジネスモデルも含めてプレゼンするのが、「ICTビジネスモデル発見&発表会」の醍醐味だ。実際に「うまっぷ」は富山県内の商店街での実用化も検討中という。

女性起業家大賞を受賞した富山高等専門学校

自分にぴったりなメイクを教えてくれる「RECTY」

 スポンサー大賞 by kazeniwaを受賞したのは、その日のあなたにぴったりのメイク推薦サービス「RECTY」(奈良先端科学技術大学院大学)。

 自分に似合うメイクを探すのは難しい」と思っている女性に、自分にあったメイクを推薦してくれるアプリだ。仕組みは、メイクアップアーティスが記事をデータベース化し、ユーザーのその日の予定・顔の特徴・好みに合わせたメイク方法をシステムが推薦するというもの。さらに、それだけでは補えない細かい悩みは、直接メイクアップアーティスに個別相談できる。

 メイク情報を提供するサイトや動画は多いものの、プロのメイクアップアーティストとユーザーをつなぐアプリは存在しない。その新規性を突きつつ、アプリは無償、個別相談は月額課金、そこからメイクアップアーティストに対話量に応じた報酬を支払うビジネスモデルを構築。さらに「男性向け」「日本のメイク文化の海外輸出」といった次の展望も描き、審査員をうならせていた。

「RECTY」の仕組み。ユーザーに合ったメイクレシピを推薦。推薦で補えない悩みをプロに相談

スポンサー大賞 by kazeniwaを受賞した奈良先端科学技術大学院大学

農業機械の運転を支援する「AgriBus-NAVI」

 ICTビジネス研究会大賞を受賞したのは、世界中の農業機械の運転をアシストする運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」(株式会社農業情報設計社)。

 トラクター、田植機、コンバインと農作業を効率化する農業機械だが、高品質な作物を育てるためには、真っ直ぐ・等間隔な運転が要求されるため、一部ではGPSガイダンスシステムが利用されている。しかし、従来のGPSガイダンスシステムは大掛かりで高価格(通常50~60万円。オプションをつけると数百万単位に)。そのため、国内にトラクタが200万台ある中、普及台数は5000台程度という。

 「AgriBus-NAVI」は、同等のシステムをAndroidアプリとして提供することで、1/3~1/20の低価格に抑えられるもの。2015年2月から無償版としてリリースしており、総ダウンロード(DL)数が2万1000件。海外からのDLが9割で、すでに世界トップシェアを獲得しているという。

 今後は、IoTや自動操舵などのオプションも提供し、世界中の農業機械を自動化・情報化する次世代農業プラットフォームとして展開。2年後までに1.3億ユーザー、500万台の農業機械へ導入を目指すという。

運転している農機のA点・B点を指定すると、2点を結んだ直線上を自動で真っ直ぐ、等間隔に走らせることが可能

市販GPSガイダンスシステムより大幅な低価格化

世界中の農業機械を自動化・情報化する次世代農業プラットフォームとして展開

ICTビジネス研究会大賞を受賞した株式会社農業情報設計社

給与担保の決済サービス「Payming」

 テレコムサービス協会 会長賞を受賞したのは、働いた分の給与を担保に買い物できる世界初の決済サービス「Payming」(ドレミングアジア株式会社)。

 世界に多く存在する銀行口座を持てない、金融サービスを受けられない人へ決済手段を提供するもの。企業に導入するHR(人事・勤怠・給与)システムを軸に、毎日の給与計算をシステム上で行い、働いた分の給与(=決済可能額)を従業員の携帯端末へ通知する。その携帯端末からの認証によってお見で買い物し、買い物した分の支払いは企業の口座から行われる仕組みだ。

 同社は、20年以上の実績を持つ勤怠・給与管理システム開発会社からスピンオフした企業で、Paymingの仕組みは国際特許も出願中。世界にはいまだ70%以上の人たちが銀行口座を持っておらず、金融サービスを受けられない移民・難民も増えている。そうした貧困層も金融サービスを享受できるようにする決済サービスとして、世界中にマーケットが存在するとアピール。審査員からは「グローバル社会の仕組みを変えるかもしれない、日本発のイノベーション」と評価していた。

テレコムサービス協会 会長賞を受賞したドレミングアジア株式会社

スマホとビーコンで修学旅行支援「しゅうがくりょーこん」

 キャンパス大賞 総務大臣賞を受賞したのは、スマホとビーコンを使った修学旅行支援システム「しゅうがくりょーこん」(ピュアの極み乙女)。

 自由行動時の生徒の位置が把握できて、点呼も一発で行える「先生アプリ」と、生徒同士ではぐれを防止し、広告・クーポン配信でお得にお土産がゲットできる「生徒アプリ」の2種類で、修学旅行の悩みを解決する。

 ビジネスモデルは、旅行代理店と「しゅうがくりょーこん」のレンタル契約。旅行代理店は他店との差別化が図れる。JTB沖縄が「採用するかどうかの最終決定は学校だが、旅行代理店としては採用したい」とコメントするなど展望も明るく、3年目の黒字化を計画。その間は、販売管理費を徹底的に抑えるため、沖縄県名護市を拠点にインキュベーション施設や特区を利用する事業計画を描いている。

 総務大臣賞ということで、表彰式には高市早苗総務大臣が登場。賞状を直接受け取ったチームメンバーは涙を浮かべるシーンも。

キャンパス大賞 総務大臣賞を受賞したピュアの極み乙女。高市総務大臣が賞状を授与

 高市総務大臣は「ICTが社会や経済活動の基盤となり、現在はあらゆるものがインターネットにつながるIoT・ビッグデータ時代を迎えました。今後はIoTの地域への普及やビジネスモデルの構築が重要になる。総務省でも、昨年9月から情報通信審議会でIoT・ビッグデータ時代の新たな情報通信政策のあり方について検討を開始。10月には産学官連携によるIoT推進コンソーシアムも発足し、みんなで頑張っているところであります。今回のイベントも副題に『Challenge Japan IoT Awarad 2015』とあるように、IoTで日本を元気にする素晴らしい取り組みだと感じています。これからも続けて発展していくように、全国で素晴らしいアイデアを持つ人が世界へ羽ばたくきっかけになるように、今後も応援しています」と語っていた。

「IoTの地域への普及やビジネスモデルの構築が重要」と語る高市総務大臣

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ