攻め込まれにくいビジネスモデルを築くソニー
津賀社長は、「どこかが価格競争を引き起こし、それに追従しきれないと、在庫が残り、拡売費が発生し、赤字になるという構造が生まれる。今年度は、黒字を確保できる見込みであるが、どこかが価格競争を本気で仕掛けてくれば、すぐに吹っ飛ぶような水準である」と語る。
そうしたなか、津賀社長が指摘するのが、ひと足早く、2014年度に、11年ぶりにテレビ事業を黒字化した、ソニーのビジネスモデルの強みだ。
津賀社長は、ライバルの動向を次のようにとらえる。
「ソニーは、機種展開を抑えながら、それぞれの商品が持つ魅力で勝負している。ひとつひとつが、商品力を磨いており、それが市場から評価されている。攻め込まれにくいビジネスをやっている」と前置きし、「これに対して、パナソニックは、ラインアップを揃えること、地域バリエーションを揃えるところに力を入れているため、なかには攻められやすい機種が存在する。そこを攻められると赤字が出る」と、自らの弱点を示す。
日本においても、4Kテレビ戦略においては、「ソニーは高付加価値路線、シャープは普及路線であるのに対して、パナソニックはその中間といえる立場にあり、もう少し立ち位置を明確にする必要がある」と品田事業部長も語る。
津賀社長は、「ソニーの攻められにくい手法は見習いたい。パナソニックも、ソニー型ともいえる手の打ち方をテレビ事業でやっていく必要がある」と語る。
だが、ソニーの手法を、そのまま模倣するつもりもない。
「ソニーとパナソニックは、海外におけるブランドイメージが異なる。パナソニックが、同じような戦略が取れるかどうかわからない」とし、「米国や中国といったコストオリエンテッドな市場は絞り込む一方、プレミアム感が出る市場でソニーと同じ戦略が取れれば、黒字化が確実にものになると考えている。パナソニックのテレビ事業のあり方を、より明確にしていく必要がある」と述べる。
ソニーの手法を見習うことで、黒字化の道筋をつける一方で、そこからの成長は、やはりパナソニック流が必要。BtoBソリューションにおけるディスプレービジネスなどは、まさにパナソニック流ともいえる部分だ。
2016年以降のテレビ事業の成長戦略において、パナソニック流のスパイスがどれだけ加わるかが、これから注目されよう。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ